第4話 自殺の名スポットであんた何してんねん
ゲーム内通貨のことをサイというらしい。全プレイヤーはアカウント登録時点で1万サイをもらえるらしい。増やし方は、シナリオクリア報酬だったり、拾ったり奪ったり騙し取ったり、ゲームの中に存在する株などので増やせるらしい。大体が怖い案件なのだけども。
早速俺は山梨県に行くため、新幹線と思しき乗り物に乗り込む。ちなみにお値段は1000サイ。高いか安いかは分からないが、1サイで1円くらいの価値だそうなので、現実と比べると会社は倒産レベルの価格て提供してくれていることになる。感謝感謝。
「駅は……てか、東京からダイレクトで山梨まで行けないよな……どれのればいいんだろ。俺ちゃん田舎もんだからわかんない」
「ご安心ください。当新幹線は探索者様の数だけ列車を提供させていただいております。探索者様が望むのであれば通常運転の新幹線に切り替えますが、基本ダイレクトで移動できますよ!」
「すっごいぬるっと入ってくるじゃん。誰よあんた。俺あんたなんか知らないんだから」
「私は新幹線の運転兼点検兼サービスを提供しています。シンカと申します!」
なんだか、このゲームのネーミングセンスの安直さに安心感を覚えてきたのは気のせいだろうか。
「運行ダイヤを作成しようとしたゲーム制作陣がそこまで手が回らないとのことで、今はまだ通常の新幹線で移動しようとするとバグが発生する仕様なのですが、いかがされますか?」
「もちろんあなたに任せます。直行しましょ」
「あいあいさー!使用状嘔吐機能は実装されていませんが、列車酔いにご注意ください」
列車酔いだと?と、言及しようとしたが時すでに遅し。新幹線のリクライニングがロックを振り切って後ろにぶっ倒れるくらいの急発進に首を折った。これは確実に追った。医者の俺が言うんだから間違いない。
~五分後~
着きましたよ。と、激しく肩を揺さぶられて起きる。もちろん目の前の元気っ娘めがけて汚い嘔吐物をぶちまけてはいグロテスク~……なんてことはなく。逆に彼女に振り回されて俺の気が狂いそうになっている。多分脳へのダメージがえげつないくらい入っていると思う。
「はい!勢いあまって青木ヶ原樹海までぶっ飛ばしちゃいました!それでは、楽しい楽しい探索ライフをこれからもお楽しみください!あ、それと私の列車に乗ってくださった感謝を込めて、とっておき情報です」
めまいでバタンキュー状態の俺を外へと放り出して、ゆっくりと近づいてくるシンカちゃん。もうこれ、彼女ボスだろ。なんで片手で軽々と放り出せるんだよ。いくら俺がちょっと小さめな女性アバターでもさ、どんな力してたら俺が放物運動するんだよ。そんな彼女。ニコニコしながら俺の耳元に口を近づけてくる。え、なに?こんなひどい扱いしててじつは気がありました的な?
「この列車、探索ターン内では1ターンのみの消費でどこまでも行けるので、ぜひ活用してくださいね」
あかん。俺の頭に余計にはてなマークをのっけてきやがった。探索ターンだと?今がそれではないのか。もういいや、ちょっとここらでゆっくりしていこ……か、な?
目に写っているものはきっと気のせいだろうと全力で現実から目を逸らす努力をする。
「あきらかに、刺さってるよな」
せっかくだし、このあたりをまず技能で見てみよう。もしかしたら、あれのこともよく分かるかもしれない。
目星:18/95 成功
まあ、成功確率95%は、滅多に失敗しないだろうけど回す分にはやはりどきどきするな。特にこんな自殺者いっぱいの場所でなんだからなおさら……
『おぞましいほどに森林が奥まで広がっており、あたりによく目を凝らして見てみると、ところどころに所持者不明の人工物が落ちていることに気が付きます。しそして、目の前の地面から生え出ている足は、おそらくギルドの方が言っていた行方不明になっている人の一人だと断言してよいと、あなたは推測します』
すごい、推測という名のばかヒント。あれは、てことはひっこぬいてええやつか。
「ゲーム内だし、救ってくれることに感謝こそすれ、セクハラで訴えられることはないだろう」
STRは6しかないが、いけるまで、俺は!ひっこぬくのをやめない!!
ここでダンジョンダイスワールドTIP
物をひっこぬいたり、つかんだり、抱えたりとかのやつは、基本ステータスを×5した値で判定するよ!だから、この場合STR(力の強さ)が用いられて、成功確率は30%ということだね!
「1回目!」
STR×5 41/30
『なにやら土の中からむー!!と声がする』
「まだまだ!2回目!!」
STR×5 05/30『決定的成功!』
またしてもここでTIP
判定時に、時折値が5以下、もしくは96以上になることがあるよ。5以下の時は決定的成功。クリティカルがあてがわれて、すごく探索者にいい感じのことが起きるよ!逆に96以上だと致命的失敗。ファンブルがあてがわれて、探索者にとっておぞましいことが起きるよ!
『探索者天那美祁による瞬間的に集約された常人以上の力は、土に埋まったそれを引き抜くのには十分すぎる力を発していた。ゆえに、かるがると引っこ抜き、反動で引っこ抜いた対象が自身にまたがってくる』
「え―――――」
どさり、という音と共に、俺の身体は倒される。「きゃぁ!」という声もまた、俺に降りかかってくる。
「ぐへぇ」
情けない声が自身から発せられる。反射的に瞑ってしまった目を開けて、上に乗ったであろうそれを見ると――――
「ここは、天国か?」
上を見上げると、赤い髪の毛のすっごく可愛らしい女の子が俺のお腹よりも上あたりにまたがっていた。スカートが風になびいて……おっふ。だがまあ、今の俺の方が断然美人で可愛らしいんですけ(ry
「へ――――」
途端真っ赤になっていくお顔。透き通る金色の目が、きれいですn―――
「変態人外化け物美人お化けぇぇぇえええ!!!!」
「へぶぅぅう”うあ”ぁ”あ”!!!」
この場合、俺は殴られる道理ないだろうに……そんな俺の心の呟きは、意識と共に言葉になることなく沈んでいく。
まさか、セクハラとか、感謝でもなく、お化けにされるとは……
その後、何度か殴り蹴られるような感触が鈍く頭にしみわたっていき、俺の視界はそのまま真っ黒になった。
クソ神サイコロゲーを芸術スキルで逃げ切りたい男の話 べいくどもちょちょ @zanbatou1000
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