第15話 声明
「夫と子供が化け物になってしまったんです!!」
「キャー殺人よ! 誰か助けて!!」
「強盗がでたぞ!! 警察を呼ぶんだ!!」
国中がパニックに陥っていた。
*** テレビ局 ***
「キャー!! 化け物!!!」
誰かの悲鳴が鳴り響いた。
満里奈が歌い終わった頃、出演者やスタッフ、観客たちのうち何人かが怪物に変っていた。
調整室では怒号が走る。
「何だあの化け物は!! 放送を中断しろ、うわぁつ!!!」
パイプ椅子で番組プロデューサーは殴打され倒されてしまった。
ゲロゲロ言う怪物に変身した者がスタッフの中に沢山いたのだ。
人間のままだった者は一纏めにされて縛り付けられてしまった。
「一体何がおこっているの?!!」
満里奈は状況が読めずに狼狽えている。
「満里奈君落ち着きたまえ」
「森プロデューサー!!?」
森がスタジオ脇からステージへ上がってきた。
「君は良く働いてくれた。魔力もちでルルイエ語をマスターできる努力家な人間などそういないでしょう」
「ルルイエ? なんですかそれ?」
「崇高なる我らの神が居られる場所です。さぁ、カメラをこっちに向けなさい。」
森はカメラマンを手招きしレンズを向けさせた。
「我らが神の娘は、父なる神を生み出そうとしている。信仰と畏怖の念を捧げるのだ。さすれば親愛なる神は星辰がそろう日を待たずともこの世に再び戻るだろう」
めりっ、メリメリっ、っと森の服が裂けだした。
森の体は膨れ上がり巨大になり、皮膚はうろこに覆われ、水かきが指の間に備わっている。そして顔面は魚を思い起こさせ、それでいて人間にも似ている。
他の怪物とは格が違う。
「ひぃっ……!!」
満里奈は気絶してしまった。
「さぁ、諸君。神を信仰し、夜の町へ駆け出し恐怖を振る舞い畏怖を集めるのです!」
*** 東京タワー ***
「――と言う訳なんだ。永遠、一緒に逃げよう。警察に保護してもらおう」
そう祐樹が言うと永遠は苦虫をかみしめたように顔をしかめた。
「そう……。人間にとりついたのね。急がないと」
フッ――。
突然、電気が消えた。
「一体何事だ???」
祐樹がガラスの向こうを見ると東京タワーから一望できる街一面、真っ暗である。
いや、ところどころ火が上がっているのが見える。
火災が起きているのだ。
「はじまりましたね」
永遠が瓶詰になっているクティーラに話しかける。
瓶の中ゆらゆらゆれるそれは輝くとともに膨張しだした。
「な、なんだ???」
祐樹はクティーラの変異に驚きを隠しきれない。
「糧を得ているのよ」
永遠が答えた。
「糧? 餌って事か??? 一体何を……」
「信仰と畏怖よ」
「何言ってるんだよ?」
今、怪物たちが暴れるので国中が混乱に満ちている。
政界も警察も消防も自衛隊も情報が交錯しすぐさま機能はしない。
事の事態に対面した人間たは恐怖と不安に駆られた。
ましてやこの暗闇の中である。
そしてそれはクティーラの糧となる。
強風で展望台のガラス面がミシミシっと嫌な音をした。
その突如、大きな破裂音と共に展望室のガラスが割れた。
突風が遅いかかり、祐樹は目が明けられない。
「お早い、ご到着ですね」
永遠の声が聞こえる。
目を開けるとそこには展望台の窓があった場所の外側に黄色いレインコートの少女が居た。
それも宙に浮いた状態で。
「ど、どうなっているんだよ??!」
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