第14話 新曲
七時過ぎ。
河合満里奈の新曲の放映が始まった。
日本中の人々が満里奈の新曲に期待した。
すると視聴者の一部の人たちに変化が起こった。
*** ***
ある主婦は台所で夕食の支度をしていた。
可愛い愛娘は5歳でかわいい盛りだ。
リビングで音楽番組を見ながらお利口にして静かに食事ができるのを待っている。
「ママ―!」
「あら如何したのユキちゃん。」
娘の顔をみる。
「い、いやぁぁあああああああ!!!!!!」
しかし、そこに居たのは娘ではなかった。
*** ***
音楽祭の放送をテレビで視聴していたある家では丁度飼い犬にえさを与える時間になっていた。
「さぁ、フランソワちゃんご飯よ~♪ ゲコッ。あら何かしら今の声。」
この家の主人は喉に違和感を覚えた。
「なんだか首回りがゾワゾワする……うぅっ」
主人は体が前にのめりこんだ。
しだいに皮膚はタダレ、ぬらぬらとしたぬめりを帯びた光沢をもつようになった。
頭髪はずるりと抜け落ち異形の形へと変貌した。
キャンキャンキャン!!
小型犬はおびえて吠えるのを止めない。
主人は飼い犬に手を伸ばし、抱き上げた。
キャンキャン!!
そして、ひと飲み。
キャン、キャ……。
飼い主はペロリと舌なめずりをするとテレビを見た。
満里奈の歌声だけが響きわたっていた。
*** ***
川沿いにある公園では若い夫婦が子供たちを連れて仲良く帰路についていた。
父親は3歳程度の子供と手をつなぎ歩いている。
母親は産まれたばかりの赤ん坊を抱っこ紐で胸に抱いていた。
そこに一人の男――いや、怪物が物陰からゆったり歩いて出てきた。
髪は無く、目は青白く濁り、皮膚はぬらぬらと魚の様にぬめって垂れている。
何とか肌の色が象牙色で人間なんだとわかる容姿である。
どうして男だとわかるのかと言うと、下を掃いておらず局部が丸見えである。
辛うじてシャツを肌蹴た状態ではおっているというぐわいである。
「ひぃつ!!」
妻が引きつり声をあげた。
次の瞬間、怪物は左手で女性の髪に掴みかかり、右手で赤ん坊を抱っこ紐から引き抜きポイっと川に投げ捨てた。
「な、何をするんだ!!!」
夫が怪物に掴みかかると、怪物は夫の顔を殴りつけた。首が一ゴキっという鈍い音と共に捻りあがった。そして夫は地面に吸い付けら叩きつけられるように倒れた。
怪物は妻の方へ視線を送ると、地面に押さえつけた。
妻は首の骨が折れ目玉が見開かれた夫と目が合うと「いやぁああああああ!!!」と叫び声をあげた。
「ゲロゲロゲロ」と笑い声をあげる怪物。
気が狂いそうになるが「ママ―!!」と言う長男の声に我を取り戻す。
怪物は妻のショーツを下げた。
その時妻は怪物が何をしようとしているのかを察した。
「逃げなさい!! 早く!! 人を呼んできて!!」
子どもは大泣きに成りながらも道路まで走っていった。
恐怖から全力で逃げだしたのだ。
長男が無事公園の外まで走りぬけた姿を見て、妻が子供の安全を確保できたことに安堵した次の瞬間――。
ドンッ!!!!
車にはねられ息子はアスファルトに叩きつけられてしまった。
声一つ上げない。
車の運転手は何かぶつけたと気が付いた様子だったがよく見ると、そいつらはケラケラ笑って大爆笑している。
怪物とおなじ顔をした連中だった。
そして何事もなかったように発進し、横たわる長男を引いて何処かへ去っていった。
そして妻に跨った怪物は目的を果たすため腰を打ち付けた。
妻の悲痛な声と甲高いケラケラした笑い声が公園に繰り返し木霊した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます