第7話 神の幼体
「神?」
永遠と祐樹が不思議そうな顔をしている。
「あぁ、気にしないで良いですよ。森プロデューサーはゲームのし過ぎで時々そう言うこと言うのよ。
私をアイドルにしようと口説いていた時でさえ『君の声には魔力が宿っている』って言っていたし、おおかたタコなんだかイソギンチャクなんだかの幼生がゲームアイテムっぽいから持ってきただけでしょ。
良くあることよ」
と、満里奈はあっけらかんとして言い放った。
「タコ……」
永遠は海辺で生活してきたがこんなタコの幼生をいままで見たことは無い。それは祐樹も同じくである。
「イソギンチャクの方が可能性高いかな」と祐樹。
「スマホで写真撮って検索してみたらすぐにわかるんじゃないかな?」
そう言って満里奈は写真を撮って検索してみたが、なかなか一致する物がない。
「う~ん。新種のクラゲかもしれない……」
「神だと言っているだろう」
森プロデューサーは呆れた顔で満里奈を見た。
「この生き物、この後どうなさるんですか?」
永遠の問いに森は答えた。
「新島永遠君。君に預けよう。クティーラ様の父君の意向だ」
永遠は気になる点が三つあった。
「どうして私の名前を知っているんですか?」
森は両手を上げて大げさに答えた。
「我らが神は何でも知っているのですよ」
満里奈が呆れた顔で答えた。
「永遠ちゃん。鞄に名札がついてるからだよ」
森はいっそう盛り上がったように言う。
「我らの神は信者一人一人をちゃんと見ていて下さるんだよ。そして君に白羽の矢が立ったのだ。君は今日からクティーラの引率者になるのだ。君も満里奈くんと一緒で珍しく魔力を持っているからね」
もう二つはどうして私? クティーラの父親って誰? である。
今の発言でふざけているだけで特に深い意味は無いのだろうと思った。
魔力なんてもの自分は持っていないと永遠は考えた。
満里奈の言うと売りこのプロデューサーはゲームのし過ぎなのだ。
「でも育てるにしても食べ物も分らないですし」
「神は人々の信仰と畏怖の念を頂くのです!!」
森は真剣だ。
満里奈が横から割って入る。
「たぶんそのくらいのサイズの海洋生物ならプランクトンとかじゃない?」
それに祐樹が答える。
「それなら毎日海水を取り換えてあげれば何とかなるんじゃないかな?」
「そっか、それなら私にもできるかも」
永遠は前向きにその生物を育てようと考えていた。
そのクティーラと呼ばれる生き物は何か永遠の心をひきつけるものがあった。
「私、この子を育てます」
「それは良かった。これは私の名刺です。何かあったら連絡してください」
「ありがとうございます。」
*** ***
「ごちそうさまでしたー」
「ありがとうございましたー」
食事を終え、永遠と満里奈とそのスタッフが店を出た。
祐樹もそれを見送りに顔を出す。
「私は明日の昼過ぎには東京に帰っちゃうからこれでお別れだね」
満里奈が永遠と祐樹に告げた。
「なんだかせっかく仲良くなったのに名残惜しいわね」
ほんのちょっとの時間だったが永遠は満里奈と打ち解けられたような気がしていた。
満里奈は元気に答えた。
「CM完成したら見てほしいから、TVチェックしてね。ラジオでもお知らせすると思うから必ず聞いてね」
と永遠に言うと、今度は祐樹に近づき耳打ちをした。
「ハッキリ自分の主張伝えないとだめだぞ♪ じゃぁねー」
そして満里奈は大きく手を振りスタッフたちと宿へ向かった。
永遠と祐樹は二人になり、すこし気まずい空気が流れた。
祐樹は声を絞りだすようにして発言した。
「送るよ」
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