夢の中で

「フィオラ、こっちで一緒にお昼ご飯食べよう。」


声がするほうを振り返ると、金髪に碧眼の優しそうな女の人が呼んでいた。横には赤茶色の髪にハチミツ色の瞳をしたこれまた優しそうな男の人が、馬車から荷物を下ろしていた。


「お父さん、お母さん!」


私は二人のほうに走っていき、お母さんに抱きついた。


「お母さん、これあげる!」


私は手に持っていた花の冠をお母さんに渡した。


「さっき教えてあげたのに、もう一人で作れるようになったのね。ありがとう。上手にできたね。」


笑ってくれたお母さんの顔が嬉しくて、またぎゅっと抱きついた。すると荷物を運び下ろしたお父さんがやってきた。


「お父さんにもあげる!」とお父さんにも花の冠を渡した。


「フィオラが作ってくれたのか。上手に出来てるな。ありがとう。」


こちらも嬉しそうに笑ってくれたので、嬉しくてお父さんにも抱きついた。


すると横で見ていたメイドのノーヤさんが「フィオラさんは本当にお父さんとお母さんが好きですね。」といったので、私は言った。


「うん、お父さんもお母さんも大好き!」


すると二人は私をぎゅっと抱きしめた。




雪が降る日だった。棺桶の中にはお父さんとお母さんが入っていて、周りにはたくさんのお花が敷き詰められていた。


私は泣き叫んでいた。周りいた人たちは、まだ若いのに残念ね、娘さんもまだ小さいのに、など話していた。


両親と最後に話したのは5日前。お父さんが「風引いたかも。」と言っていたので、ノーヤさんと一緒にシチューを作ったのだ。お父さんは美味しそうに食べてくれた。次の日起きるとお父さんとお母さんがいなかったのでノーヤさんに聞いてみると、「お父さんとお母さんは体調が優れないのでベットで休んでおられます。」と言っていた。


5日後両親は亡くなった。


横にいたノーヤさんが泣き続ける私をぎゅっと抱きしめてくれた。




1ヶ月後、私は空腹でベットから動けなくなっていた。一週間前、両親が亡くなってから何も口にしない私のためにノーヤさんが近くの街へ買い出しに行く途中、モンスターに襲われて亡くなったのだ。私の家族はもう誰もいない。だんだんと意識が朦朧としてくる。このまま死んじゃったらお父さんやお母さん、ノーヤさんに会えるかな、また一緒にピクニック行きたいな...。


そうして意識が途切れた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る