第2話 殺し屋

あの日から3年が経ち、俺は7歳になった。

その頃になればナイフ使いも人並み以上になり、もう街で襲われても1人で追い払えるようにはなった。


それからまた3年が経ち、俺は10歳になった。

この世界のことを何も知らない俺は、この貧民街から出たいと男に言い出すようになった。


「今日は街で100デスキは奪ってくるよ」

「おう、気をつけろ」


あれから、俺のことを街で知らない人間は居なくなった。

いや、街で俺に勝てる人間は、あの男以外居なくなった。

街の奴らは俺のことを「赤眼のナイフ」と呼んだ。


正確には、出刃包丁なのだが。


金品を強奪して、食糧に変えて、家に持って帰る。

それが俺の日課だった。


今日もいつものように、そう、いつものように。


帰ってくると、その家には嗅ぎ慣れた悪臭が漂う。

今日は贅沢をしようと酒を買ってきた。


「、、、は?」


そこには冷たくなったあの男の死体があった。

蝿もたかっている。


「おいおいおい、ちょっと嘘だろ?なあ?」


「なんで!なんでだよ!俺より強いはずのお前が、どうして、、、」


急すぎる。しかし殺された理由は幾つか考えられる。

この男はそれくらい色々な方向に恨みを買っているから。


(にしてもだろ、、、)


男は既にを引退していたのだ。

とうの3年前に、それからは一切殺しをしていないらしい。


「今朝はあんなに元気そうに話してたじゃねえか」


(結局、結局、俺は最後までお前に、、、)


「失礼、その男を排除しろと命令があったものだから」

「!?」


突如物陰から人の声が聞こえ、俺は脊髄反射で包丁を投げた。


「おっと、危ない。依頼者からは赤眼の子供も捕まえろと言われているし、、、ふむ。少し眠ってくれない?」


女が物陰から出てくる。女なら余裕だ、体格差で勝てる。

それに、こいつが殺したのか。まあ何にせよあの男が正攻法で負ける訳ない。


「まあまあ、私は争いはしたくないよ。貧民街で育った君はって知ってる?」

「ああ、しかし、それを知ってても知らなくてもお前の運命は変わらないけどな。この包丁でお前を刺し殺すだけだ」


俺は壁に突き刺さった包丁を奴に注意を払いながら抜いた。

一方で、奴は俺に攻撃をする気はないようだ。


「じゃあ今度は俺が質問だ。貧民街で俺は何を学んだか知ってるか?」

「君が学んだこと?人の殺し方くらい?」

「ああ、そうさ!」


俺は女に対して、奴から教えてもらい、独自で磨いた包丁捌きを披露する。しかし、女はすべてそれを受け流し、確実なる一撃を俺に加える。


「なかなかやるじゃねえか、流石あの男を殺しただけあるな」

「何、君も少年の割にはなかなかだと思うよ。だけど、そのクソみたいな武器はなに?」


クソみたい、だと?

俺があの男から貰った初めての武器が、道具が、クソみたいだと?


「なん、だと?」


俺は自分でも分からないくらいの速さで包丁を女に対して振り回す。

しかし、当然のように女はすべて捌く。


「まあさ、剣の才能はあるみたいだし、剣術でも習えばいいと思うよ」

「、、、、、、」


ひたすら俺は無言で包丁を振り回し続ける。


、誰かが言ってたな。そろそろ効き始めるころだと思うけど」


知とは力なり?もうそろそろ効き始める?一体何のことだ?



突如、眠気が生じ、俺は包丁を自分の腕に突き刺して覚醒させようとしたが、そうする暇もなく、深い眠りに落ちていった。


任務完了ミッション・コンプリート!さて、報奨金を貰うとしよう!」

































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