ミリーの大冒険

第92話 Tracing A Dream

「師匠、そのオデンとか言う奴をヤッつけちゃえば良いの？」

「オーディンね？(う～ん……天界の最高神はトールに任せたんだけど、オーディンがそんな事になってたとは)そう簡単な話しじゃ無いのよねぇ」

　チラとルシフェラを見るペンティアム

　ルシフェラはサッと眼を反らす

「やっつけるって……天界の最高神（オーディン）ですよ？」

　シヴが慌てる

　確かにミカエラの噂を聞き付け、頼って逃げて来たが、昇神したばかりの彼女に何とか出来る相手では無い

　逆に言えば、プライドの高い天上神が、わざわざ地上へやって来る事も無いだろうと思った

「そこの生首と、どっちが強いの？」

「え？生首？」

　シヴは言われて初めて、暖炉の前で寛ぐヨルムンガンデの首に気付いた

　余りにも魔力が小さくて気にしていなかった

「ヒッ！？」

「人の顔見るなり、失礼な奴なのじゃ」

「いやだって！ええ？ヨルムンガンデ様！？

　そのお姿は、一体……」

「どうもこうも、そこの脳筋抜刀女（ミカエラ）に首チョンパされたのじゃ」

「首チョンパって、ええーーーー」

　明らかにドン引きするシヴと違い、アズラエルとアリエルは熱い眼差しでミカエラを見ていた

　(カッコいい！)(お姉様……素敵)

「そこな二人、憧れるのは勝手じゃが、格が違い過ぎるのじゃ、身の程を知るが良かろう」

「なっ、そんなんじゃ無いし！？」

「ミカエルだって、お姉様と一緒に居るではありませんか？」

「お姉様？何言ってんの？」

　ピンと来ていないミカエラ

「そう言うところですよ」

　ミカエルがお約束の突っ込みをする

「アズラエル、アリエル、貴女達には百万年早いですよ？百万年修行して出直してらっしゃい？」

「なあんですって？言ったわね、この駄天使！」

「「「あ……」」」

　ズドガアアーーーーン！！

　ミカエルの魔力の籠った怒りの鉄拳がアリエルを吹き飛ばした

　ゲシッ！

　倒れたアリエルの頭を踏みつけて、ミカエルが凄む

「テメーの血は何色だぁ？言ってみろやコラ」

「ミ、ミカエルあなた……？」

「聞いた事に答えろやあ！！」

　ドガッ！ドガッ！ドガッ！

　容赦無く顔面に蹴りを入れるミカエルを、誰も止められない

「ああ～あ、怒らせちゃった、知らないわよ？」

「ちょっと、止めて下さい！？」

　シヴがミカエラに頼むが

「ミカエルにはNGワードが有ってね、ああなると、私にも止められないわ」

「幾ら何でも、ヤり過ぎです！死んじゃいますわ？」

「良く見てよ、ミカの奴、蹴りながら治癒魔法使ってるから平気よ？その分、ずっと痛いんだけどね？」

　確かに、折れた歯や血肉が飛び散っているが、すぐさま回復している

　綺麗な顔に戻る度に蹴り上げられて、アリエルは息をつく暇も無い

　十八回ほど蹴られたところで、アリエルの意識が絶えて白眼を剥いた

「チッ！舐めんじゃ無えぞ、糞アマ！」

　キッ！とアズラエルにガンを飛ばすと、ミカエラの元に戻って来る

　フン！と鼻息を鳴らすと、ソファーの背もたれに腰を乗せ、腕組みをしてシヴ達を睨み付ける

「守護天使の性格は、召還主に影響されると言うからの、このヤンキー聖女（ミカエラ）にして、このヤンキーセラフ（ミカエル）在りなのじゃ」

　シヴもアズラエルも完全にビビっている

　心底、この屋敷の取り扱い説明書が欲しいと願った

「ミカエラ様が、ヨルムンガンデ様を倒したのですか？本当に？」

「マジよ、でも、首跳ねたのに死なないなんて、狡いと思わない？」

「何を言うか、アレは貴様の弱った振りに油断してしまったからなのじゃ！狡いのは貴様じゃ」

「そんな卑怯な真似した覚えは無いわね！

　勝手に勘違いしたアンタが悪い！！」

「口の減らぬガキめ……まあ良い、お主と居ると退屈はせぬからの」

　ヨルムンガンデはシヴに向き合うと宣言する

「こ奴の強さは本物じゃ、例え天上神だろうが負ける要素は無い！」