第91話 Blue
明け方に一段と冷え込むと、ミカエラ邸のドアを乱暴に叩く音が響く
何事かと応対すると、早馬を飛ばした門衛の騎士達がフル装備で寒空に震えながら立っていた
「どうしたんだい?雁首揃えて」
「はっ!その後、異常は有りませんでしょうか?」
どうやら、彼等なりに心配して、駆け付けてくれたらしい
「……無えよ、何だよアタシの事心配してくれたのかい?」
「はっ、いえ大事無ければ、我々は持ち場に戻ります!」
騎士はミカエラに敬礼して、騎乗する
「律儀だねぇ、糞寒いのにご苦労さん」
簡単に労いの言葉を掛けて追い返そうとしたミカエラだが、鎧の肩に降り積もった雪を見て、ふと思い立つ
「ああ、ちょっと待ちな、テメー等」
「?」
ミカエラは一旦、室内に引っ込むと、米酒の瓶を渡す
「朝は冷えるからな、熱燗にして皆で呑むと良い、但し!呑み過ぎて、居眠りするんじゃ無えぞ?」
思いもよらぬ鬼上司からの差し入れに、居合わせた騎士達から歓声が上がる
「煩えよ、ご近所さんはまだ寝てるんだ、静かに帰れ?」
「はっ!ありがたく頂戴します!」
早く行けとばかりに、手をヒラヒラさせて室内へ戻るミカエラの後ろ姿に、見えなくなるまで敬礼を続ける騎士達だった
ふと東の空を見ると、微かに群青色に染まりつつある
夜明けが近い
陽が昇れば雪も止むかも知れない
騎士達は自分達の立場に感謝しつつ、西門へと戻って行った
室内に戻ると、アガリアが戻っている
「あれ、グーシアは?」
「寝かし付けて来ました、今はデュオが見てくれて居ます、それよりお客様に、何か暖まる物をご用意致しますね」
他人が居るせいか、ルシフェラの手前か、完全にメイドモード口調で厨房に引っ込むアガリア
「ああっ、お気遣い無く!」
「何言ってんだよ、すぐに帰れる訳でも無けりゃ、行く宛も無えんだろ?」
「わたし、お腹空いた!」
育ち盛りの、ラムエラは即座に空腹を主張すると、アガリアを追いかけて厨房へ走る
「えっ、私も行くよ?待って、ラムエラ」
バラキエラも慌てて後を追って行った
「……えーと、今のは?」
シヴが恐る恐る尋ねる
「ああ、第三婦人のアガリア
見ての通り、
「正直に申しますと、驚きました
教えて欲しいのですが、ミカエラ様は何故、悪魔や堕天使と仲良くされているのでしょうか?」
「え?だって良い娘じゃん?
ルーシーだって、嘘はつかないし悪さする訳でも無いし、便利だし」
「ちょっと?便利って酷くない?」
「それに、アーシュはアタシと魂を半分ずつ分け合った仲だしね♡」
「はい!?」
シヴにはミカエラの言葉が理解出来ない
「アーシュが闇に囚われて暴れたのを、自らの魂を犠牲にして助けてくれたのよ、ミカエラちゃんは」
ルシフェラが説明する
「こんな男前な聖女を、周りのオンナが放っておく訳無いじゃない♪」
フムフムと頷くアズラエルとアリエルは、すっかりミカエラの虜になっていた
顔は まあ、普通だ
スタイルも、普通だ
しかも隻眼なのか眼帯をしている
性格は短気で、言葉使いも乱暴
行動も粗野で、お世辞にも品性の欠片も無い
しかも大酒喰らい
が、剣技に関しては間違いなく最強クラス
カーマエルでさえ太刀打ち出来ないだろう
言葉より先に、暴力に訴えるタイプなのは間違いないにも関わらず、どこか憎めない愛嬌が有る
暴力を行使する時には、一切の手加減も慈悲も見せない癖に、身内に対しては極端に甘い
これでもかと言うくらい、漢気に溢れているが、間違いなく聖女である
となれば、当然処女なのだろう
アズラエルもアリエルもミカエラに満点を着けざるを得なかった
(天使ってのは、どいつもこいつも皆、可笑しな奴しか居らぬのじゃ……)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます