第85話 comet


「何事だ、これは!」

 ペンティアムが慌ててやって来た


「師匠!」

 

「流星じゃ無いわ」

 

「むう……ウリエラの魔法障壁に当たる前に、止まったな」


 聖都の町外れ、街壁の外側にも移住者の為の居住区や商店、自警団の詰所が軒を連ねている

 街壁には、騎士団が駐屯する衛門が在り、当然だが、この深夜の時間帯は閉ざされていた


 ウリエラが展開した魔法障壁は、その街壁外の居住区にまで及び、外部からの悪意をシャットアウトしている

 瘴気や魔獣等の、人間に害を及ぼす存在は通れない


「私の権能で消せなかったわ……考えられる可能性は二つ、私より遥かに強力な魔力なのか……」

 

「或いは、悪魔の天敵がやって来たか……ね」


 ルシフェラとペンティアムの考えは一致していた


「悪魔の天敵?」

 

「天界の神々よ」


「神?アレが?六つくらい撃ち落としちゃったわよ?」

 

「は?」

 ミカエラの言葉をペンティアムは理解出来ない


「いやだって、聖都目掛けて落ちて来たら、撃ち落とすに決まってんじゃん?死にくたく無ーし」


「そうよね、ハルマゲるわよね、普通」

 ミカエラの突っ込みに、更に突っ込むルシフェラだが、何気にフラグを立ててしまっている


「まさか奴等、ラグナレクを繰り返す積もりではあるまいな?」


「ラグナレクって、神話の?」


「そうよ」


「お伽噺でしょ?」


「……昔話よ」

 ペンティアムとミカエラの会話は微妙に噛み合って無い


 ペンティアムとルシフェラにとっては、史実の当事者だったのだが、ミカエラにとって神話とは、お伽噺でしか無い


「ルシフェラ様……」

 アガリアがグーシアを抱いて、不安そうに此方を見ている


 先程の大花火で起きてしまったのか、子供達も全員母親に連れられてリビングへやって来た


「起こしちゃってご免なさい、ちょっと招かざる客が来たみたいで」


「西門の外側に、隠蔽された神気を感じるわ」


「ふん、懐かしい気配がするのじゃ

 しかし無粋な奴等よの、良い子は眠る時間じゃと云うに」

 ヨルムンガンデまで、不機嫌さを隠そうともしない

「貴女達は、子供達を連れて大聖堂のウリエラと合流してなさい?あそこなら、大抵の事は大丈夫だから」

 ペンティアムが言うが、ラムエラとバラキエラは、ここに残ると言い出した


「私はお母さんと一緒にいる」

「私も!ガウ、皆をお願いね?」

「ガウッ!」


「まあ、そう言うと思ったわ、言っても聞かないだろうから、寧ろ一緒に居た方が良いかもね」


「私も残る」

 セレロンがミカエラの側に来ると、ライゼンまで付いてきた


「お姉ちゃんは、皆をお願いね?」


「むー、……仕方ない」

「しかたないわね!」

 ライゼンが真似するのが可愛い


「でも、何か有ったら飛んで来るから!」

「頼りにしてるわ♡」

 セレロンはひとしきりミカエラを、抱き締めると、ライゼンを連れて行く


「ミカエラ……」

 クレセントが眠っているイクリプスを抱いて、不安そうにしている


「デュオとサリーは、ウリエラと結界の維持をお願い、クレス、お姉ちゃんと一緒に子供達を護って!」

「私も……!」

「イクスをお願いね」

「……」

 クレセントは残りたそうだが、ミカエラに言われて皆と一緒に移動して行った


「さあっ、神様でも何でも来てみろっての!

 卍丸の露にしてくれるわよ!」


「まあ、間違いなく狙いは私でしょうねえ♪

 待ってれば、向こうからやって来るわよ」

 ルシフェラはソファーにドカッと座ると、ワイングラスを傾ける


 現役女神のペンティアムと明けの明星ルシフェラ、神に昇神したミカエラに憑依合体したアシュタローテとミカエル、ミラクラに変身すれば、神をも滅する力を持つラムエラとバラキエラ


 地上最強の戦力が揃った

 

 ついでに何故か、首だけのヨルムンガンデも残っている

「こんな面白そうな事、見逃しては未来永劫悔やむのじゃ!」


 

 


 


 

 

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