第84話 NEVER END


正月の夜は聖都に雪が降った


「幻想的よね、魔都に雪は降らないから新鮮だわ」


「いつまでコッチに居座ってんのよ、地獄を放っておいて本当に大丈夫なの?」


「ロキもベルゼも居るから大丈夫だって♪

 知ってる?トップの仕事って、いかに優秀な人材を使いこなすか、なのよ?」


「ロキに同情するわ……」

 ペンティアムが大聖堂に戻った後も居座り、ちゃっかり夕食の寄せ鍋まで食べたルシフェラである


 やがて食事の後片付けが終わると、母親達は子供達を寝かし付けに子供部屋へ消えて行く


 東方支部教会へ出張していたサリエラも、エルサエラの元に戻っている

「また後でね♡」


 大晦日と正月の夜には、毎年徹夜で愛を確かめ合うのが恒例となっていた


 ペンティアムが持ち込んだ米酒の一升瓶を飲み干した二人は、神気ワインを片手に語らう


「本当はね、貴女と話したかったのよ」


「へっ?私?」

 思わぬルシフェラの言葉に、間抜けな返事をしてしまう


「子供達も無事に産まれて、ようやく若返りの霊薬を使う時が来たけど、その後は大司教に肉体年齢を固定して貰うんでしょ?」


「ああ~、まあそうね」


「ミカエラは神の仲間入りを果たしたけれど、デュオとサリーは違うわ、彼女達は自分の子供が年老いて行くのを見る事になる……本当にそれで良いの?」


「……ルーシー?酔っ払った?」


 しかし、言われてみればデュアルコアは正真正銘の人間だ

 だとしたら、当然その子供のヘクサも普通の人間だ


 サリエラはペンティアムの造ったヴァルキュリアだが、肉体を持つ為に歳をとる

 その子供のエルサエラも同じだろう


 始めてサリエラと会った時は、今のラムエラ達と同じ十歳だった

 いずれ、エルサエラの方が先に年老う事に成るのだろう


 サキュバスのアガリアは、自前の権能で肉体年齢を自由に変えられるらしい

 今は無理だが、いずれは娘のグーシアも出来る様に成るのかも知れない


「……う~ん、じゃあ子供達も適当な段階で年齢を固定してあげたら?」


「貴女って本当に適当ねぇ?

 そしたら、あの子達、子供が出来なくなるかも知れないわよ?」


「やあね、流石に自分の子供に手は出さないわよ?」

 思い切り勘違いしていた


 ルシフェラは、何とリアクションすれば良いのか分からなくなり、言葉に詰まる


「……はあ、貴女が男だったら歴史に残る「王」の器なのにねぇ」


「ナニそれ?王様なんて面倒臭いの嫌よ?」


「言ったでしょ?トップの役目は人を巧く使う事だって」

 ルシフェラは一つため息を吐くと、窓の外の景色に視線を移した


 しんしんと雪が降り積もる聖都の夜空は、所々雲の切れ間から星が見える


 その時、夜空に幾つかの流星が光った

「流星雨ってヤツかしら、珍しいわね!」


 初めて観るルシフェラは興奮している


 が、光の束はどんどん大きくなっている

「……え?ちょっと、コッチに落ちて来てない?アレ!」

「ウソ!マジ?」


 流星は見る間に大きくなり、明らかに聖都目掛けて落ちていた


「ミカ!アーシュ!緊急事態!!」

 呼び掛けに応じ召還されたミカエルとアシュタローテがミカエラに憑依合体すると、ミカエラは大きく息を吸って魔力を溜め込み凝縮して、窓から飛び出した


 ズバオオオオーーーーーーッッ!!

 聖なる光のブレスと暗黒のブレスを混ぜ合わせた凶悪なまでのエネルギーが、落下中の流星目掛けて放たれた


 ドドドドォォーーーーン!!

 

 ブレスの直撃に依り、幾つかの流星は破壊され、夜空に巨大な花火となり散るが、三つの流星はそのまま直進を続ける


「ヤる事が派手ねぇ」

 ルシフェラが指を鳴らして、残る流星を消そうとした


 パチン!

「え?ウソ、何で消えないの!」


 その時、聖都全体を包む様に、オーロラの光が覆う

 大聖女ウリエラの、魔法障壁による結界が発動された


 三つの流星は、障壁の手前で止まるとゆっくりと大地に降りる


 

 


 


 

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