第83話 RESPECT the POWER OF LOVE


ペンティアムが持ち込んだ米酒は、ラファエラの故郷である神龍国の特産品だ


 酒造りの為の特別な米を醸造して、上品な味わいと、香り豊かな酒を造り出す


 蔵元によって個性が豊かで、冷やして良し、温めて燗酒にして良しの、一年中通して楽しめる酒だ


「やった!師匠、流石です♡」


「うむ、ミカエラへの土産と言えば、これしか思い付かなくてね」


 一升瓶を受け取ったミカエラは早速、封を切るとグラスに透明な酒を注ぐ


 とたんに、フルーティな香りが漂い、期待感に堪えられなくなったミカエラは一息に、グラスの酒を飲み干す

 見た目より強い酒精が喉を焼き、豊潤で贅沢な香りが鼻から抜ける


「かあーっ、旨い!!」


「そんな一気に飲む酒じゃ無いわよ?」

 言いながらペンティアムが取り出したのは、掌サイズの朱塗りの盃だった


 聖女引退後にラファエラが経営していた居酒屋では、この米酒を楽しむ為に、盃や枡を始め様々な酒器が用意されていて、料理に合わせて色々な呑み方が在るのだと気付かされたものである


「う~ん……この酒は神気が籠ってるわね?」

 一口飲んだルシフェラが呟く


「神龍国では、酒造りは神職が執り行うらしくてね、神への捧げ物として酒を仕込むから、神事の一部だそうよ」


「この神気には覚えが有るのじゃ、ナーガの神気に間違い無かろう」


「ナーガ?」


「うむ、妾より遥かに若いが、神龍国で神となって久しい龍神なのじゃ

 今は名前が変わっておるやも知れぬが、ツマツヒメならば知っておるのでは無いかの?」

 ヨルムンガンデの言葉にツマツヒメが答える

 

「杜氏の神様でしたらマツオヒメ様では無いかと……」


「神龍国は、武士と呼ばれる戦闘民族が支配する島国での、年中互いに殺し合いを続ける頭のイカれた連中よ」


「何ソレ?行ってみたい!」

「迂闊な事教えてんじゃ無えよ、糞頭

 また子供達が真に受けるだろうが!」

 独りリーサルウエポンのミカエラが、ワクワクした顔で喜ぶと、アシュタローテが「余計な事を言うな」と嗜めた


 ふと横を見ると、ラムエラもバラキエラも眼がキラキラと輝いている


「言っておくけど、駄目よアンタ達!」

「ちえっ」「はあ~い」

 アシュタローテは、すかさず釘を刺しておく


 ミラクラに変身すれば、無敵だと勘違いしてムチャをしかねない

 それを見越して、ルシフェラはミラクラの記憶を残したまま呪いを解いたのだ


 呪いで理性が破壊されていたとは言え、ミカエラの右目を奪い、セレロンを殺してしまった記憶は、嫌でも子供達に自重を促す


「まあ、あそこは太陽神アマテラスを崇める邪教徒の国だから、交流も無いしねぇ」

 ルシフェラは何か言いたそうな顔で、ペンティアムを横目で見ながら、米酒をクイっと飲む


「ツマっちって、神龍国の神様だったんでしょ?なんで魔界でルーシーのお世話なんてしてたの?」


「地獄に国境は無いのよ」

 ミカエラの疑問にルシフェラが答えた


「ふーん……え?じゃあ、ツマっちって一度死んでるの?」

「魔界で暮らしてるのは、魔族や悪魔だけじゃ無いわよ?堕天使や闇堕ちした神々や、その眷属も居るわね」


「そんなの居たっけ?」

 

「アンタは会った奴、片っ端から皆殺しにしてたから分かって無いのよ」

 

「やあねえ、照れるわ」

 

「褒めて無いから」


 などと言ってるが、アシュタローテこそが地獄を壊滅に追い込んだ張本人だ

 しかも退屈しのぎに、ちょっと遊んでみた程度である


「貴女達の戦力って、ホントに規格外よねぇ」

 ルシフェラが他人事の様にぼやくが、責任の半分は彼女にもある


「何言ってるのよ、愛よ、愛!」

 


 


 

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