第82話 how to be a Girl


「師匠?此方から伺う積もりでしたのに」


「構わないわ、と言うより教皇聖下との会食から逃げて来たのよ」

 ペンティアムはそう言うと、ルシフェラの隣に腰掛ける


「ミレニアムはまだ、ラムエラを養子に欲しいって?」

「そうね、諦めて欲しいのだけど……」


「優秀な後継者なら、ウリエラが適任でしょうに」

 雑煮をすすりながらルシフェラが言う


「まあ、聖教会の看板娘だからねぇ……でもいずれは、あの子が次の教皇に担ぎ出されるだろうねぇ」

「え、そんな動きが有るの?」

「教会内部にも派閥ってのが在るからね、何もかも私の思う通りには行かないのよ」


「ウリエラが教皇……じゃあ、空いた大聖女の席は私に回って来る?」

 ミカエラの一言に、全員の箸が止まる


「な、何?そんなに変な事言った?」

 全員の視線を浴びて、ミカエラが慌てる


「ミカエラ、治療の聖魔法は使えるのよね?」

「まあ、一応……」

 度重なる死線を潜る闘いを生き抜いた中で、ミカエラ自身も成長著しい


 自然治癒力を加速させる事しか出来なかったミカエラも、今では欠損部分の復元まで可能な「治療」の奇跡が行使出切る様になっている


「しかし、大聖女を名乗るからには、死者蘇生の奇跡も求められるわ」

「うっ」

「何より、救いを求める信徒の為に、己の総てを犠牲にして二十四時間戦えますか!?」

 

「闘うのは得意分野!二十四時間だろうが飲まず食わずでヤッてヤるわよ!」


「ご免なさい、質問が悪かったわ

 信徒の悩みを聞き、心を癒し、傷や病を治し、場合によっては死者をも甦らせる

 それが大聖女に求められる資格よ」


「……そんなのもう、人間じゃ無くて神様の仕事じゃん?」

 ボソッと呟くミカエラの言葉に、ペンティアムもハッとする


 本人に自覚は無いが、ウリエラは既に半分昇神していると言って良い


 しかし、神に至っているのはミカエラも同じだ


 二人ともペンティアム自ら育てたのに、何故こうまで違ってしまうのか


 そもそも聖女のシステムは、魔王アシュタローテの封印を維持する為に、聖都を魔族や魔物から護る為ペンティアムが用意したのだ


 ラファエラ、カブリエラ、ミカエラの三名の巡業聖女を鍛え上げ、その中でもミカエラは赤子の頃から鍛え抜いた人類最強の戦士と言える


 ラファエラとガブリエラが亡くなり、戦闘職の聖女はミカエラだけとなってしまったが、今ではアシュタローテもミカエラの妻となり、バラキエラと言う子までもうけている


 ラファエラの抜けた穴埋めに、戦乙女のサリエラも造った


 いざと言う時の戦力としては、過分過ぎる程だ


 人間の国が軍隊や騎士団を寄越しても、ブレス一発で殲滅可能だ

 魔薬騒動では、帝国や東方神龍国の陰謀も働いていた様だが、ミカエラが魔王を倒した噂は、遠い他国に迄伝わり、充分な戦争抑止力として機能している


 もしも、ミカエラを政治の道具として利用するなら、人々を救う大聖女では無くて、魔神ミカエラここに在り!と喧伝すべきだろう


「……まあ、その時は相応しいポストを用意してあげるわ」


「えっ、マジで?ヤッたあ!!」

 能天気にはしゃぐミカエラを確認して、皆は食事を再開する


 ラムエラとバラキエラは餅をニューーーと伸ばして楽しんで食べ、小さな子供達は、それぞれ母親に食べさせて貰っていた


「良く噛んで食べるのよ?」

「慌てて飲み込むと、喉に詰まるから、気を付けてね?」

 見た目は四、五歳だが、産まれたばかりで初めて餅を食べる子供達を心配する母親達


「あふっ!おもひは焼きはへにはひるはへ」

「ルーシー、行儀悪いから、食べながら喋らないで?」


 これも何時ものやり取りだ


「そうだ、餅に合うと思って、東方の米酒を土産に持って来たのよ」

 そう言うと、ペンティアムは一升瓶を取り出した


 

 


 





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