第80話 a walk in park
「んあ……いけね、眠っちまった」
ミカエラが目を覚ますと、相変わらずミカエルが寄り添い、飽きもせず上から顔を覗き込んで居た
「良く眠ってましたね♡」
「ラムエラ達は?」
「中天まで頑張ると、張り切ってますよ」
ミカエラが起きようと思うと、周りを一緒になって寝てしまった子供達に囲まれて、身動き取れない事に気付く
ライゼン、イクリプス、グーシア、ヘクサ、エルサエラの五人の子供達と、クレセントとセレロンまでが一緒に寝ている
男性経験すら無いのに、気付けば七人の子持ちになってしまった
「デュオとアギーは?」
「お昼ご飯の支度を始めましたわ、もうじき中天ですから」
どうやら四時間以上眠っていた様だ
「ああー、しまったなあ
午前中に師匠のトコにも顔を出しておかないと!」
「ウリエルから念話が有って、午後からで構わないから、ゆっくり休ませてあげて下さいと、言付かってますよ♡」
中央本部教会大聖堂では、大聖女ウリエラをはじめ、大司教ペンティアム、さらには教皇ミレニアム聖下までが揃って信徒に祝福を授けるとあって、もの凄い人出となっている
しかも、ウリエラは参拝者一人一人に声をかけ、直接祝福するので大人気だ
その分、時間もかかり、例年五日ほどは文字通り寝食を忘れて祭壇に立ち続ける
疲労も睡魔も、自身に聖魔法をかけてまで克服し、空腹は精神力で我慢した
全ては「人々に救いを与えたい」と言う並み外れた信仰心の成せる業だった
当然ながら、そんなウリエラ個人も神気が満ちており、神格を有して居たが、ペンティアムがこっそりとセーブをかけていて、祝福による奇跡は(この世界では)常識的な範囲で収まっている
「今年も、無事に新年を迎える事が出来たな」
教皇ミレニアムが隣に立つペンティアムに声をかける
「それもこれも、聖女達の活躍のお陰かと」
「うむ、ラムエラもバラキエラも、民衆の人気も高く、今日もミカエラに代わり祝福の儀を任されて居るそうではないか?」
正月早々、何時もの養子話しを蒸し返しそうな雰囲気に、ペンティアムは話題を逸らす
「あの子達は、あくまでミカエラの娘ですから、私からは何とも致しかねます
それより、ウリエラの成長ぶりには眼を見張る思いです」
大聖女と成ったウリエラの元へは、遠く他国からも礼拝者が絶えず、その美貌と才能を聞き及んだ他国の貴族、王族からは求婚の話がひっきりなしだが、「聖女である」と言う理由で、全て門前払いしていた
そんなウリエラも二十四歳に成った訳だが、彼女自身、己の総てを女神様に捧げる覚悟で日々を過ごしており、「生涯純潔」は当然として、ミカエラに対する憧れから発展した秘めたる想いも、「お姉さま」と自ら発する事で抑え込んでいる
いくら隠しても、ペンティアムには竜眼と同じ様な、真理を見透す魔願が在る為、全てお見通しなのだが、そこはペンティアムも知らぬ振りを通している
ミカエラの婚姻騒動ではルシフェラに振り回されっ放しだが、流石に姉弟子、妹弟子同士で恋愛感情に発展されても困る
(それにしても、ミカエラは皆に好かれるわね)
性格は男勝りで短気で粗暴な上、決して「美人」と言う訳でも無い
幼い頃から聖魔法と武術の鍛練に明け暮れ、五歳を過ぎた頃には既に街の外ヘ出て、ミカエルに護られながら魔物狩りに明け暮れていた
大司教の秘蔵っ子として、聖女を目指して居た筈が、かなり殺伐とした青春を送っていたと言える
男には縁が無いが、男より「男らしい」強さに、皆惹かれるのかも知れない
(思ったより、男前に成っちゃったけど、育て方を間違えたのかしら?)
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