第78話 You're my sunshine


聖都を吹き抜ける風が冷たくなり、王城の裏山の山頂が白く雪化粧する頃、アガリアとサリエラ、デュアルコア三人が揃って出産を迎えた


 アガリアとデュアルコアが赤子に付きっきりに成る事で、ミカエラ達は街で軽食を買って来る事になる

 

「食事の支度くらい、私だって……」

 と、アシュタローテが張り切ってみたが、食材を無駄にするばかりで、ガウでさえ口にしなかった


「一時的に、料理人を雇うべきかしらね?」

「この寒空に、毎日バーベキューって訳にも、いかないわよね」


 ミカエラも料理に挑戦してみたが、食材ごと、まな板どころか調理台まで真っ二つにしてしまい、厨房出禁にされてしまった


「どうやったら、普通の包丁で、調理台が真っ二つに出来るのよ?馬鹿力」


「力任せにヤッても、無理よ?ちゃんと斬る技術が必要で……」


「脳筋って死ななきゃ治らないのかしらね……はあ」


 ミカエラとアシュタローテが他愛ない会話をしていると、クレセントとセレロンが子供達と食料を仕入れて帰って来た


「ただいまあーー!」

「お弁当買って来たよ!」「来たよ!」「来ましたの!」


「お帰りなさい!寒かったでしょ?暖炉の前にいらっしゃい!」


 ラムエラとバラキエラは一目散に駆け寄って来たが、クレセントとイクリプス、セレロンとライゼンのドラゴン一家は、薄着のままなのに余裕だ


「アンタ達、そんな薄着で寒くないの?

 見てるこっちが寒くなるんだけど?」


「ドラゴンと爬虫類を一緒にしないでよ?

 聖都の魔素なら、体内でエネルギー変換出来るから、全然寒く無いわ」


「……???」


「暖炉が服着て歩いてるようなものよ」


 クレセントの説明が理解出来なかったミカエラも、アシュタローテの解説で納得した


 言われてみれば、魔力だけの存在であるアシュタローテやミカエルも、暑さ寒さとは無縁な感じで、一年中同じ様な薄着だ


「風がかなり冷たいから、今夜あたり雪が降るかも知れないって、屋台のおじさんが言ってた!」

 

 バラキエラが鼻の頭を真っ赤にしながら教えてくれる


「まあ、それならアガリア達のストーブの薪も余分に運んでおかないとね!」

「私やる!」「僕も!」


 ラムエラが進んでお手伝いしたいと言うと、イクリプスも真似する


「じゃあラムエラとイクスにお願いするわ、

 薪小屋から八束運んでおいて貰える?」

「うん、行こっイクス!」

「はあい!」


 弟が欲しかったラムエラは、イクリプスと仲が良い

 何かと面倒を見てる


 薪を転移させる事も出来るのに、一緒に運ぶ作業を楽しんでいる


「バラキエラとライゼンには、皆の部屋の水桶を満タンにして貰えるかしら?」


「任せて、お母さん!」

「お任せくださいませなのよ!」


 バラキエラが、水桶に井戸の水を転移させる様子を、ライゼンは真似しようと頑張っているらしい


 セレロンは物理系だと思われがちだが、超質量に裏付けされた膨大な魔力に依るブレスの威力は、アシュタローテをも凌ぐ


 ペンティアムによれば、空気抵抗さえ無ければ、理論上は光速に迫る速度で飛行可能だと言う


 その血を引き継いだライゼンも、生まれながらに豊富な魔力量を誇る


 イクリプスもライゼンも、産まれて数ヶ月しか経たないにも関わらず、四歳児くらいの大きさと知能を有して居るのは、ドラゴンの特性と言うよりは、ミカエラの愛情と神気の成せる業らしい


 アガリア、サリエラ、デュアルコアの三人の子供達も、産まれて数日にも関わらず、既に一歳児程にまで成長していた


 アガリアの子グーシア

 サリエラの子エルサエラ

 デュアルコアの子ヘクサ


 ヨルムンガンデによると、やはり数ヶ月で四、五歳くらいに迄一気に成長した後は、普通に育って行くとの事


 ◆◆◆◆◆


 登場人物の名前については、特定の宗教とは無関係です

 ある宗教が、別の宗教を弾圧するとか、そういう意図ではありません

 作者が適当に、悪魔の図鑑、天使の図鑑、神話の系譜から引用してるだけですので、ご了承願います

 

 


 


 

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