第68話 果てしなき夢の彼方に


「ん~ふっふっふ~ん♪」

 ニマニマと笑いながら、小さな袋に卵をしまうと、紐で首からかけて胸元に押し込むクレセント


「大事な卵を、産んだ事にも気付かないなんて、そんなに気持ち良かった?」

 耳元でミカエラがイタズラっぽく囁くと、真っ赤になるクレセント


「でも、誤って潰したりしなくて良かったわね、今はクレスと私の二人だけだものね♡」

「んもう、意地悪……」

 クレセントが顔を向けると、優しく口付けを交わすミカエラは、そのままお腹を指でなぞり、ショートパンツの中へと手を滑らせる


「んんっ、駄目ぇ♡」

「ここから卵を産んだのかしら?どんな感じだった?」

「……あん……分かんない……って言うか、駄目!ホントに!」

 クレセントは慌てて身を離すと、卵の入った胸元を庇う


「ミカエラ!当分、夜の相手は出来ないからねっ!私、この子を温めなくちゃいけないから!」

 そう宣言すると、クレセントは自室に飛び込み、扉に鍵をかけてしまった


「ありゃ、ちょっとからかい過ぎたかな?」

「ちょっと処じゃ無えだろ、悪趣味だよ」

「そうですよ?クレスの気持ちも考えてあげてください?」


 いつの間にか、後ろにアシュタローテとミカエルが居る

 どうも一部始終を見られていた様だ


「ええー、だって最近はアギーもサリーもデュオも相手してくれないし、クレスを一晩中愛してあげるのが、唯一の楽しみなのにぃ」


 アシュタローテがミカエラの前に回ると、ドン!と廊下の壁に手を着いて真っ直ぐ眼を見詰めてくる

「色情狂かよテメーは?

 それとも、アタシとミカだけじゃ不満だって言うのか?」

 

 壁ドンで迫るイケメンなアシュタローテの圧力に、思わずたじろぐミカエラ


「そうですよ?今夜からは、私達だけで楽しみましょ!」

 ミカエルの瞳が♡になっている


「そ、そうね」

 守護天使の容姿と性格は、主人に影響を受ける


 つまる処、自覚の有無に関わらずミカエラは色欲が強いのかも知れない

 肉欲に負けたアシュタローテと言い、多感な時期の子供達が、色々なイケナイ事に興味を持つのも当然と言える


 ミカエラは、「お揃いね」と、ペンティアムに貰った革の眼帯をポリポリと掻く


 自室に閉じ籠ったクレセントは、ベッドに飛び乗ると、袋から黄金の卵を取り出して眺める


「ん~ふっふっふっ!

 私の卵!ミカエラと私の子供!!」


 正直、いつの間に産んだのか自覚が無い

 でも、この黄金の卵は、きっと自分の卵だと確信していた


「今日からしっかりお世話するからねぇ♡」

 キュッと優しく抱き締めると、ハタと気付く


 暖めるって、どうすれば良いのだろう?

 取り敢えず抱くのは当然として、一体、何時まで抱いていれば良いのだろう?


 セレロンは、爆乳の谷間にずっと卵を挟んだままだが、自慢じゃ無いが貧乳ペッタンコのクレセントに、同じ芸当は出来ない


 クレセントは悩んだ挙げ句、分からない事は聞くに限ると思い立ち、部屋の扉をそっと開け、ミカエラが居ない事を確認すると厨房へ走った


「うん?どうやって、卵を暖めるかじゃと?」

 

 かまどの火加減を魔力で調整していたヨルムンガンデに問い返されると、厨房に居たアガリアとデュアルコアとツマツヒメが、クレセントに殺到する


「えっ、ナニナニ?遂にクレスも卵を産めたの?」

「おめでとうございます!」

「ねっ、見せて見せて!」


 クレセントが袋から小さな黄金の卵を取り出すと、全員から「「おお~!」」と感嘆が漏れる


「これがクレスの卵なのね……」

「綺麗……」

「神々しいですね……」

「美味しそうじゃの」


 約一名、的外れな感想が聞こえたが、四人から拳骨を食らったのは言うまでも無い


「でも私、セレロンみたいに胸の谷間に挟むなんて出来ないし……」


「そうねえ、ずっと抱き続けるってのもねえ?」


「いっそ、口の中に入れちゃうとか?」


「それじゃ、ご飯も食べられませんよ?」


「なんじゃ、簡単なのじゃ」


 ヨルムンガンデが、さも当然の如く言い放つ


「己の胎内なかに戻して暖めれば良かろう

 これ程安全な場所は他に無いのじゃ!」


 アガリア達三人が「は?」とヨルムンガンデを振り返るが、クレセントは

「そっか!そうだね!ありがとう!!」

 と、満面の笑みで厨房を出て行った


 

 


 

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