第57話 君に薔薇薔薇......という感じ


「そのまま押さえてて!」

 爆風が収まる前に、サリエラが飛び込み、首に神剣を叩きつけようとするが、魔剣で阻まれる

 ギャリンッ!


「案外しぶといわね」

「魔剣が無くとも、あ奴は生き意地汚ないのじゃ」

 随分な言われようだ


 ドカッ!


 ロキがセレロンの股間を蹴り上げ、逃れようとするが、超質量のセレロンはビクともしない

「何だテメー?馬鹿力の上に、糞重てえな!?」


「私のブレスを食らって、生きてるお前も信じられない」

「そりゃどーも」


「生きている」と言って良いのだろうか?

 暗黒のブレスをマトモに食らったロキの頭部は、肉も骨もバラバラに砕け散った筈なのに、凄まじい速度で回復している


 ミカエラは「勇者インテ」の超回復スキルを思い出し、嫌な気分になる

「厄介な野郎だな、面倒臭え」

「四肢をバラバラに封印するのが確実かの」


 ミカエラが、自分がヤるしか無いかと動こうとすると

「あの魔剣、壊しちゃったら駄目?」

 ミラクラがヨルムンガンデに聞いた


「……レーヴァテインは魔剣じゃからの、例え壊しても再度呼び出せば元通りじゃが……魔法攻撃は効かぬぞよ?」


「あの魔剣は炎の力でしょ?なら、先ずは無力化するね」


 そう言うと、ミラクラはレーヴァテインをじっと見詰めて、魔力を展開する

「これ小童、魔法は効かぬと言うたであろう?」


 すると、炎の力を宿し、真っ赤に輝いていた魔剣の色が失われ、青く冷たい印象に変わる


「セレロンおばさん。離れて」

 言われてセレロンがロキから距離を取ると

 カッッ!!っと眩い閃光が迸った次の瞬間、魔剣を中心に小さな太陽が出現した


 しかし、それは即座に収縮し、眩しく輝く白い点になったと思ったら、最後は真っ黒い点に変わり消えた


 後に残されたのは、焼け爛れ、身体の半分が丸く失われたロキの姿

 何故か回復出来ないで居る


 アシュタローテは内心、驚愕した

 ミカエラは何が起きたのか理解出来ていない


 ヨルムンガンデが唸る

「むう……何をやらかしたのかは解らぬが、アレを食ろうては流石の妾も無事では済まぬの」

 首だけにされた時点で、無事では無い


「何をしたの?」

 アシュタローテの意思がミカエラの口から問いかける


「先ずは魔剣の運動エネルギーをゼロにして凍結したんだ、その後固定した原子核をほんの少しだけぶつけ合わせて、解放されたエネルギーを連鎖させてみたの、そのままだと、限り無く膨張し続けちゃうから、エネルギーを反転させて内側ヘ向けて凝縮させたら、何処かに消えちゃった」


 核分裂反応と、反転術式に依る閉鎖型マイクロブラックホールの理屈を丁寧に説明されるが、誰にも理解出来なかった


 ただ、アシュタローテだけは、数十年前に聖光の大賢者と呼ばれたペンティアムが、同じ方法で自分を封印したのを覚えていた


 誰も反応出来ないのを見たミラクラは言い方を変えてみる

「要は、小さな太陽を作って、消したって事……かな?」


「凄いじゃない?ミリー!♡」

 いきなりミカエラが抱き付いてきた


「え?ミ、ミリー?」

「ミラクラだからミリー♪何よ、気に入らない?」

「そんな訳じゃ無いけど……」

 赤くなって照れながら、ミカエラが皆にあだ名を付けるのが好きなのだと思い出す


「おーい、コイツまだ生きてるわよ」

 ロキを確認しに行ったサリエラが言う


 ロキは身体の右半分以上が、球形に失われ、断面はガラス状になったまま再生出来ないで居た

 

 残った身体も焼け爛れ、頭部は左目と口元の一部だけが、辛うじて残る有り様だった

 咄嗟に顔を背けたのだろうが、脳も心臓も消失している状態だ

 

 実体が有るなら、死んでいても不思議では無いが、残った左腕と左脚がモゾモゾと動いているのが、なんとも気色悪かった


「介錯要るか?」

 ミカエラが聞いてやると、ボロボロのロキが返事をする

 

「……クソったれめ」

 

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