第55話 可愛い女と呼ばないで


「そう言えば、コイツ首だけで何故死なねえんだ?」


「妾の本体は冥界の地下深くで、眠り続けておるからの、これは妾の精神体でしか無いのじゃ」


「性格悪いから封印されたんだろ?」

「ギクッ!そ、そんな事は無いのじゃ?

 我、神で在るぞよ?」


「魔界の伝承では、冥王ロキに唆されて天界に喧嘩売って負けたって事になってるけど……」

 アガリアが解説する


「やっぱり封印されてんじゃ無えか、カッコ付けてんじゃ無えよトカゲの分際で」

「神をつかまえてトカゲとは不埒千万!

 貴様、万死に値するぞよ?」


「頭だけしか無え癖に、イキってんじゃ無えよ

 悔しかったら、熱線のブレスでも吐いてみたら?」

「ぐぬぬ……身体が消えてしまったので、流石に魔力が足りぬのじゃ」

 どうやら神の権能を発揮するにも、魔力が必要らしい


「そもそも、そんな封印ボッチが何故私達を襲って来たのよ?」

「……眠ってたら、いつの間にかロキに召還されて居ったのじゃ」


「ロキって、そんなに強いの?」

「神格はヨルムンガンデ様の方が遥かに上の筈ですが、とりあえずロキ様は冥界のトップに君臨されてます」


「トップねえ……ルーシーと、どっちが上?」

「ルシフェラ様は魔界全体の統率者ですから、比較になりませんっ!」

 アガリアが全力で推して来る


「それ聞いて安心したわ、私もルーシーに勝てるイメージ無いもの」



「うしっ!ミカエラちゃん可愛い!大好きっ!

 アガリアもたっぷり祝福してあげるっ♡」

 水鏡で様子を観て居たルシフェラは、思わずガッツポーズで喜んだ


「悦んでて良いの?ヨルムンガンデが倒されちゃったわよ?」

「本体は無事だから、大丈夫でしょ?

 ロキも、流石に諦めるんじゃ無いかしら?」

 

「思ったより、諦めが悪いみたいよ?あの娘」


 ペンティアムが言う通り、水鏡の中には、荒野に立ちはだかるロキの姿があった


「噂の主があちらに……」

 アガリアが指し示す方向に、やたらと豊かな胸部を強調したデザインの軍服を着た悪魔が立っている


「……悪魔って、どうして、どいつもこいつも巨乳ばっかりなのかしらね、私に喧嘩売ってるの?買うわよ!」


「どっちかと言うと、貴様達が喧嘩売りに来てると思うのじゃが?」

「いきなり攻撃して来た奴に、言われたく無いわね」


 軍服の悪魔がミカエラ達の元までやって来て、口を開く

「俺はロキ、冥王にして冥王軍指揮官だ

 貴様達の代表と話しをさせろ」


「口の利き方を知らねえ田舎のヤンキーかよ、テメーは?」


「貴様、名は?」

「私はミカエラ、この子達の母親よ!」


「ロキよ、油断するで無いぞ!こ奴の強さは本物なのじゃ!」

 首だけのヨルムンガンデが強がりを言っても、説得力に欠けるが


「まさかヨルムンガンデがヤられるとはな、俺様なんぞじゃ、太刀打ち出来ねえのは判ってる積もりだ、争う気は無えよ」


「ロキ!貴様さては、ずっと観ておったな?

 何故、妾の窮地に助けなんだ!」


「ざけんじゃ無えよ、テメーが勝てねえ相手に、どうしろってんだ?最初に化け物だって言ったろ?油断したテメーが悪い」


 口は悪いが、ロキの言い分は真っ当だ


「先ずは、うちのハーディ達が迷惑かけた事を詫びさせて貰おう、済まなかった」

 深々と頭を下げるロキ


 しかし、クレセントもサリエラも油断せず、臨戦態勢だ


「言いてえ事は分からんでも無えが、アタマの台詞にしちゃ、腑抜け過ぎるんじゃ無えか?」

 ミカエラは三信合体のまま、腕組みをしてロキをねめ回す

 地獄の支配者に対して、一歩も引かない


 と言うより、地獄の都合など、ミカエラの知った事では無い


「テメーが寄越したこの糞トカゲのせいで、身内が殺られてんだ、キッチリ落とし前着けて貰わなけりゃ、腹の虫が収まら無え!」

「ハーディを身内と言うのか?」


「アイツは、全てを捨てて、私を頼って来てたんだ、見捨てるってのは私の仁義に反するね」

 アシュタローテの意識が、自然と口をついて出てくる


「分からんな……ハーディ程の天才が、何故俺様を裏切ったのか、それが理解出来ねえ」


「ふん、テメーの器が小さ過ぎるのを棚上げして、好き勝手ほざいてんじゃ無えよ

 本物の天才ってのは、この子達の事だ!

 覚えときな!」

 

 ミカエラがミラクラの肩を抱き寄せ、熱弁を奮うと、ミラクラは少し照れて赤面する

 


 

 

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