第50話 気分次第で攻めないで


「ああーーーー、

 まだまだお母さんには敵わないや!」


 ミラクラが変身を解いて、ラムエラとバラキエラの二人が現れる


「ま、当然ね♡」

 ドヤ顔で答えるミカエラに、アガリアがタオルを差し出す

 子供達にはデュアルコアがタオルで汗を拭いてあげている


「ミカエラ相手にあそこまで戦うなんて、ヤるじゃない!」

「聖剣鎧装って反則よねぇ、つくづく」

「その意気や良し!」

 クレセントとサリエラが二人を褒めるが、セレロンだけ、少しピントがズレていた


「どう?二人の実力は?」

 アシュタローテがミカエラにワインを渡して聞く

 因みに、ひび割れたクレーターの中で、テーブルセットの周りだけは、魔法障壁に守られて無事に済んでいる


「中々濃厚な体験をした様ね、

 地上に居た頃とは比べ物にならないわ」

「私も手合わせしたけど、暗黒のブレスを相殺された時は驚いたわ

 もっとも、その後は魔力切れでダウンしてたけど」

 飲み干したグラスに、アガリアがワインを注ぎ足す

「このワインと同じ……地獄の魔素をエネルギーに変換して、補充出来る様になったのよ」


「私とアーシュの娘だもの♡」

「私とミカエラの娘でもありますよ♡」

 ミカエルがミカエラから離れてドヤ顔する


「あら、焼き餅?」

 くっついて来たミカエルに口付けをする


「ラムエラとバラキエラ、どちらが優れているとかじゃ無いわ、二人共可愛い私の娘達」

 ミカエラはワインをグッとひと息に呷る

 

「あのミラクラって娘もね♡」



 水鏡でミカエラ達の様子を観ていたのは、ルシフェラとペンティアムだけでは無い


 地獄の支配者ロキもまた、偵察部隊の報告を受けて、ミカエラとミラクラの戦いを見ていた


 見てしまった


 (あんな魔人、どうすりゃ良いってんだ?

 とてもじゃねえが、魔導兵器ごときでは歯が立たねえぞ?)

 獄卒の人手不足を解消する為に、天才ハーディ大佐が開発した魔導兵器を導入する事で、強力な魔力を持たない魔族でも、兵士として運用可能になったが、アシュタローテやミカエラ、ミラクラの様な規格外の存在に対処出来る訳では無かった


「そりゃ、ハーディの奴も日和る訳だな」


 とは言え、謀反をお咎め無しで放免して居ては、統率が取れなくなる


 かといって、流石のロキも、一人でミカエラ達に立ち向かえるとは思わなかった


「こうなりゃ仕方無え、背に腹は代えられん」

 ロキは炎神闘エンシェントドラゴンを召還して、ミカエラ達に当てる決心をする



「あらヤだ」

 水鏡でミカエラ達を(鑑賞)していたルシフェラが、寒気を感じる


「ロキの奴、神龍を召還する積もりだわ?」

「フム……、果たして言うことを聞くかしらね?」


 炎神闘エンシェントドラゴンとロキとでは、僅かにロキの方が神格が低い

 ギリギリ召還出来たとしても、言うことを聞いてくれるかどうかは正直、難しい


「う~ん……いざとなったら、私が直接出るしか無いかしら?」

「貴女が直接ロキと敵対するのは、ちょっと勘弁して欲しいわ」


 ルシフェラの「リセット機能」は何でも有りな反則級のチート能力だが、冥界限定ながらロキにも「煉獄の支配者」と言う権能が在る


 もしも、この二人が直接対決したら、地獄の存在が否定され、崩壊する可能性があった


 もともとルシフェラは、自分さえ楽しめれば他人に興味は無い性格だし、ロキも荒っぽい事は大好きだが、ルシフェラと事を構えないだけの分別は持っている


「まあでも、あの子なら神だろうが悪魔だろうが負けないでしょうけど」


 

 


 

 

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