第49話 銃爪(ヒキガネ)


ミカエラが弾き飛ばしたブレスが遥か上空で炸裂し、拡散した魔力がオーロラの様に辺りに拡がる


 それを合図にミカエラとミラクラは双方ダッシュでぶつかり合う

 ガッドドド!

 ミカエラの攻撃もミラクラの斬撃も、互いに防ぎ捌く

「はっ!」

 ミラクラの突きを躱したミカエラは、地獄丸の刀身を腕に滑らせると、ミラクラの手首を掴み捻り上げ、そのままミラクラの身体を大地に投げ付ける

 ズドン!


「はわ~、早過ぎて見えません」

 デュアルコアが本音を洩らすが、脳筋グループに属する他のメンバーは、二人の戦いから目が放せなくなっている


「ブレスのお返しよ!」

 ミカエラがミラクラの腕を掴んだまま、近距離でブレスを放つ

 ドキュ!シュポン!

 ところが、ミラクラはミカエラのブレスを飲み込んでしまう

「うっそ!?」

 流石のミカエラも目を丸くした


 その隙に距離を取ったミラクラは、吸い込んだブレスを自分の影に向かって放つ

 ミカエラの足元の影の中からブレスがミカエラを襲うが、ミカエラは拳でブレスを大地に叩き付け、相殺する

 ズズウウウンーーーー!!


 一気に半径数百キロにわたりクレーターが出来、大地がひび割れる


「一度見た攻撃は効かないわよ!」

 聖都で、バラキエラがアシュタローテに放った魔法は、ミカエラも立ち合って見ていた


「ちょっと!何してくれるのよ、あの子?」

 水鏡で観戦していたルシフェラは、慌てて指をパチンと鳴らす


 ズドドドーーーーーーオン!!

十キロ先の岩場に隠れて、此方を窺っていた冥王軍偵察部隊が吹き飛ばされ、凄まじいエネルギーが遥か上空へと立ち昇り、やがて消える


「あら、出口を間違えた?ま、事故よね」

 ルシフェラはブレなかった

 彼女の辞書に反省と言う言葉は無い


「これ、完全にロキに喧嘩売っちゃったわね」

 隣でペンティアムが呆れるが、当人は何処吹く風である

「地獄どころか、魔界が消滅しかねない危機だもの、ロキも笑って許すわよ」


 アシュタローテは終始腕組みをしたまま、冷静に二人の戦いを見ていた

 (実力は互角……とはいかないわね、やはりミカエラは手加減してる)


 既に目視で追えなくなる程のスピードで、互いに打ち合っているが、決定打は入らずにいる

 (それに、ミラクラのスタミナが長く保ってるのは、魔素をエネルギーに変換出来る様に学習したようね、本当に凄い子供達だわ……)


 アシュタローテは、今戦っているのが、地獄極楽丸ミラクラの自我では無く、二人の子供達の意思だと見抜いていた


 母親と全力で遊んでいるのだ


 ミラクラが怒涛の連続攻撃を仕掛ける

 ミカエラは、その全ての斬撃を捌き躱しながら、口元に笑みが浮かんでいた


 いきなり、とんでもない魔力の気配が頭上に出現したと思ったら、巨大なエネルギー弾がミカエラ目掛けて落ちて来る


 ミカエラは魔力弾が当たる寸前、聖剣鎧装を解除し、光の刃で巨大なエネルギー弾の魔力を消し去る


 聖剣鎧装を解いた隙を狙って、ミラクラが斬撃を繰り出すと、ミカエラも卍丸を木刀に変化させて、受けてたつ

 カカカカカカカンカンカカッ!

 互いに縦横無尽の斬撃を打ち合うが、一つとして身体には当たらない


 ガカッッ!

 額同士をくっ付ける勢いで、鍔迫り合いとなった

「中々楽しませてくれるじゃない!」

「まだまだ!」

 互いを力で押し切ろうと、踏ん張ると、足元が一段深く抉れてクレーターが出来る


 ミカエラが更に体重をかけて、押し込もうとした瞬間、ミラクラの姿が消え失せ、ミカエラはたたらを踏みつんのめった


 ミカエラの背後に転移したミラクラが、ガラ空きの背中目掛けて斬撃を振るう

 ガキッ!

 押し込んでいた卍丸を勢いそのまま、脇から背中へ回して、ミラクラの斬撃を防いだ


「背中に眼でも有るの!?」

「そういや転移出来るんだっけ?」


 ミラクラが着地して地獄丸を下ろすと、ミカエラも構えを解いた


「ああーーーー、

 まだまだお母さんには敵わないや!」

 

 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る