第48話 とても不幸な朝がきた
「それはそうと、あの娘達の純潔は大丈夫でしょうね?アーシュ?」
「へっ、純潔?あ、当たり前じゃ、ない!」
何故か狼狽えるアシュタローテ
「ふーーーーん……ま、良いわ
帰ってからゆっくり話し合いましょう?」
何故か顔を赤らめるアシュタローテ
「で?憑依合体が出来るんでしょ?それも見たいわね」
パアッと顔付きが明るくなる子供達二人
「うん!」
「見てて?お母さん!」
ラムエラとバラキエラが互いに向かい合うと、手を取り抱き合う
「するよ?バラキエラ」
「うん、来てラムエラ」
ラムエラは少し背伸びをして、バラキエラの唇に自分の唇を重ねる
「ちょっ、ちょっと?ナニしてるの貴女達?」
事情を知らないミカエラは大慌てだ
デュアルコアとミカエルは赤面し、サリエラとクレセントはフムフムと頷き、セレロンは「ほうほう」と納得している
「あーー、ゴメン、言うの忘れてたわ」
アシュタローテが申し訳なさそうに続ける
「貴女達、合体するのにキスは関係ないわよ?」
「ええっ?」
「ラムエラ、もっと……」
ラムエラは驚いてアシュタローテを見るが、出来上がってしまったバラキエラに顔を引き戻され再び口付けを始めてしまう
「ん、んんう……」
「はい、そこまで」
アシュタローテが無理矢理引き離す
「あ~んラムエラァ」
バラキエラは名残惜しげにラムエラの、手を握って離さない
「八歳でサカッてんじゃ無いわよ、まったく……」
十五歳で成人し、結婚するのが普通のこの世界でも、少し早熟だと云えるが、母親達の奔放な夜の生活を知ってる二人には、何故駄目なのか分からない
「前回、合体した時に見てたけど、変身の切っ掛けは聖剣よ」
「「地獄(極楽)丸が?」」
「バラキエラ、指輪を嵌めた手で、ラムエラの木刀に触れてみて?」
「「?」」
半信半疑で言われた通りに、やってみると二人の姿が聖剣に吸い込まれる様に歪み、一瞬でミラクラが顕現する
「地獄極楽丸ミラクラ見参!さあ、死にてえ奴からかかって来な!!」
二人に代わって現れたのは、身長百五十センチほどの少女
髪色は銀髪と黒髪が混ざり合い、右目と左目も赤と青のオッドアイ
背中の天使の翼も、白と黒の両方が生えていた
何より、爆発的な神気と暴力的なまでの魔力が周囲を圧倒する
身長に合わせて延びた木刀を肩に担ぎ、啖呵をきるミラクラは、初見のミカエラと視線を合わせると、獰猛な笑みを浮かべる
「面白いのが出てきたわね♡」
ミカエラと相対したミラクラは、値踏みする様な視線を投げつつ、ゆっくりとミカエラの周りを回る
アシュタローテは、前回と違い子供達が主導権を取れていない事に疑問を持ったが、ミラクラが暴走した事態に備え、秘かに魔力を練り魔法障壁を展開させていた
「へえ、……聖剣鎧装まで出来てるじゃない♡
こりゃ、こっちも気合い入れないと失礼よね!卍丸、行くよ!」
ミカエラが卍丸を聖剣鎧装すると、ミラクラが木刀で斬りかかる
ガシッッ!
大上段からの斬り下ろしを、片手で受けると、反対側の腕でカウンターパンチをミラクラの顔面に叩き込む
バキッ!
もろにパンチを食らうが、ミラクラは構わずミカエラの腕を掴んで引き寄せると、勢いを付けた頭突きを食らわすが、頭突きを読んでいたミカエラはカウンター気味に頭突きを返す
ドコン!
両者、のけ反って一旦距離を取るが、間を置かずにミカエラがラッシュをかける
しかし、ミラクラは全てを木刀で捌ききると、殆どゼロ距離でブレスを放った
バウッッ!!バシュン!
目の前で、予備動作も無く放たれたブレスを、ミカエラは片手で弾く
脇構えから放たれた逆袈裟斬りを、鼻先数ミリで避けたミカエラは、守護天使のミカエルを呼ぶ
「ミカ!」「はい!」
ミカエラがミカエルと憑依合体すると、背中に天使の翼が煌めく
「暖まって来たわ!アゲて行くわよ!!」
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