第46話 気絶するほど悩ましい


オオヤツヒメが消えると、ミカエラは椅子に深くもたれ、アガリアに注いで貰ったワインを口にする


「あーーーーーーっっ、胸糞悪い!!一体、何なの、この娘?」

「アギーの後輩らしいわよ」

 荒れるミカエラに普通に話しかけられるのは、アシュタローテしか居ない


「で、何で妹を殺そうとするのよ?訳分かんない!アギー。お代わり!」

 ミカエラは一気にワインを呷ると、アガリアにお代わりを要求する


「あの娘は承認欲求が強いのよ、可愛らしくて優秀な妹と、常に比較され続けてきたから」

 

「ふん、そんなのテメーで解決すべき問題じゃない!だからって妹を殺そうだなんて、どれだけ身勝手なのよ?」

 アガリアの説明を聞き、グラスのワインを、また一気飲みしたミカエラが続ける

「子供達の前じゃ無かったら、私が殺してたわ」


 セレロンがミカエラの背中から抱き付く

「お姉ちゃんは、ミカエラを責めたりしないからね?」

 姉が妹を殺そうとした事実に、ショックを受けた様だ


「冥王軍ってのは、あんなイカレばっかりなの?だったら遠慮は要らないわよね!」

「ううむ……魔族は基本的に、己の欲望に忠実だからね、私も、他人の事言えない自覚は有るわ」

 ハーディが言い訳するが、ミカエラの気は収まらない


「でも、言われてみれば、アギーもアーシュも、自分の欲望に忠実だから、私と結婚したのよね」

 アシュタローテが、そっとミカエラの手に自分の手を重ねる


「ルーシーを見れば分かるでしょ?

 アレはもう、欲望のままにヤりたい放題じゃない」

「アッハハハ!確かにね、ルーシーが魔界を統治してりゃ、魔族がそうなるのも当然だわ!」

 散々な言われ様だが、自業自得である


「それはそうと、ルーシーの家って、この先に在るんでしょ?どうして、こんな所で油売ってんのよ?」

「そこの変態大佐を、大司教に弟子入りさせる約束したんだけど、地上へ連れ出す前に落とし前を着けないとならなくてね」


 アシュタローテはハーディに関する経緯をミカエラに説明する

 

「うーん、師匠が魔族を弟子入りさせるかしらね?しかも変態って……どうなの?」

「弟子入りを認めるかどうかは、大司教の自由だわ、約束は会わせるだけだもの?後は本人の情熱次第ね」

 クスクスと笑いながら語るアシュタローテは、意外とハーディの事が気に入っていた


地位も人生も名声も全てを捨てて、新たな知識を求める貪欲さは嫌いでは無い


「でも、話を聞く限りじゃ、アーシュが実行犯よね?」

「一件目は事故よ、事故

 二件目は炎竜の仕業よ?私は手を出して無いわよ……お前達!」

 アシュタローテの呼び掛けで、ヴォルカノとイフリースの炎竜コンビが召還される


「およ?」

「あっ、主様どうされましたか?」


「冥王軍の建物を燃やし尽くしたのは貴女達よね?」

「はい!久し振りにスカッとしました!」

 曇りの無い笑顔でイフリースが答える


「ほらね?」


 バラキエラがミカエラの袖を引っ張り、そっと耳打ちする


「あのね、ヤらせたのはお母さんだよ?」

「だと思ったわ、ありがとうねバラキエラ♡」

 ミカエラがバラキエラの頬にキスすると、照れて赤くなるのが可愛い♡


 すると、反対側からラムエラが袖を引いてきた

「お母さん、私も!」

 ミカエラはニッコリ微笑むと。ラムエラの頬にもキスをする


「あのね、私達キスすると変身するんだよ!」

「アーシュ母さんが、キスから先を教えてくれるって!」


「……アーシュ、子供達にナニ教えてくれてるのかしら?」

「ま、まあ、いずれは誰もが知る事よ?

 そんな事より、この子達、憑依合体出来るのよ!凄く無い?」


「え、憑依合体?嘘!マジ?」

 

 

 


 


 

 

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