第43話 紡がれる道


「お母さん、会いたかった!」

 いきなり目の前にラムエラが現れ、驚いたものの、しっかりと抱き締めるミカエラ


「ラムエラ、どうやって?それより怪我してない?バラキエラも無事なの?」

「大丈夫、バラキエラはアーシュ母さんと一緒」

「……そう」

 ミカエラは張り詰めていた気が一気に抜ける


「ラムエラ、いらっしゃい」

 デュアルコアに呼ばれてミカエラの後ろにまわると、デュアルコアにギュウっと抱き締められ、頭を撫でられる


「もう黙って居なくなっちゃ駄目よ?心配したんだから……」

「ご免なさいデュオ母さん」

 デュアルコアは泣きながらも、ラムエラを放そうとしない


 全く戦闘に向かないにも関わらず、地獄まで子供達を追い掛けて来てくれた

 その気持ちが嬉しくて、ラムエラも涙を流す


「ラムエラ!」

 サリエラとミカエルが飛んで来る


「下りるわよ!」

 クレセントが二人の魔力干渉を嫌って、着陸すると、ヒトの姿に戻りラムエラの頭を撫で始めた


 ズズン、バキバキペキポキッ……

 セレロンも着陸して龍人の姿に戻る

 毎回思うが、どうやって物理的に圧縮しているのか不思議で仕方ない


 ひとしきり皆に抱き締められ、頭を撫でられると、最後にセレロンが大きな胸の谷間にラムエラを埋める

「んんんーーーん、んんっ!んーーーーーっ!」

 息が出来ない様だ

 バンバンとセレロンの腰を叩くと、やっと解放される


「セレロン、ちょっとは加減を覚えてください」

 ラムエラを引き剥がしたミカエルが苦情を言うが、セレロンは良く分かっていない


「お母さん、私が皆を連れてアーシュ母さんの所へ転移するね」


「へっ?え?転移って、アンタ転移魔法なんて使えるの?」

「アガリアが言ってましたよ」

「ミカエラ、リヴァイアサンのトコロしか聞いて無いでしょ?」

 サリエラとクレセントから突っ込みが入る


「お母さんと同じ景色が見てみたくて、空の上まで行ってみたんだよ!」

 ラムエラがキラキラとした瞳で熱く語ると、ミカエラも胸が詰まり、言葉を失いラムエラを強く抱き締める


「そっか……そっかぁ、強い子に育ってくれてお母さんは嬉しいわ」

「やだなぁ、お母さんが育ててくれたんでしょ?」

 ミカエルがミカエラにすがり付いて泣き出した


 子供の成長は、親にとって格別の感動だが、この時点でラムエラがいきなりミカエラの眼前に転移して現れた事を忘れている


 ついでに暴露すると、この感動の親子の対面をこっそり覗き見しているペンティアムとルシフェラも、貰い泣きが止まらなかった


「じゃあお母さん達、集まって?アーシュ母さんの所へ転移するね!」

 ラムエラを中心に、ミカエラ、ミカエル、クレセント、デュアルコア、サリエラ、セレロンが集まり、ラムエラの肩に手を置く


 ラムエラは意識を集中し、離れた場所に居るアシュタローテとバラキエラの魔力を辿ると、先ほど別れた場所から動いていないのが分かった


「じゃあ行くよ、転移!」


 ラムエラが全員を連れてアシュタローテの元へ転移すると、アシュタローテが冥王軍偵察部隊と対峙している真っ最中だった


「随分と遅いご登場ね?待ちくたびれたわ」


 腕組みをして、不敵な笑みを浮かべるアシュタローテが、ミカエラを見ると声をかける


「あら、折角の家族旅行だもの、全員揃わないと寂しいでしょ?」

「お母さん!」

 バラキエラがミカエラに飛び付くと、ミカエラは優しく黒髪を撫でてあげる

「頑張ったわね、もう大丈夫よ?」


 数キロ離れた岩場から、こちらを窺う偵察部隊が見え隠れしている

「アギーが見えないわね?」

「地上へ行ったきり戻って来ないわ

 まっ、心配は要らないでしょ?」


「あそこでコソコソしてるのは誰?」

 クレセントは金色の瞳で相手の気配を探る


 どうやら、魔力や姿を隠蔽出来る魔族が複数居る様だ

 


 


 

 

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