第42話 今、出来ることを
「アーシュ母さん、魔力の感知ってどうやるの?」
食事が終わり、ガウにもたれて休憩しているとラムエラが聞いてくる
アシュタローテの場合、特に意識しなくても周りの魔力を感じているので、何と返事をしたものかと考えていると
「地獄は魔力が満ち溢れて居るだろう?これは、亡者の魂がそれだけ多いって事なんだよ」
ハーディが口出ししてきた
「やっぱり魔力って魂なの?」
「そうとも言えるし、そうで無いとも言える」
「ナニそれ、分かんない」
「聖都は魔力に満ちてるでしょう?あれは、大司教が、人々の信仰心を集めて魔力へと変換してるって聞いたわ」
アシュタローテが封印されて居た時の話を聞かせる
「それに、神界では魂は神気に変換されるそうよ」
「そう言えば、君の木刀は凄まじい神気が充ちてるわね」
言われてラムエラは顕現させたままの地獄丸を見る
最初は、顕現させたままだと魔力切れを起こすとペンティアムに忠告されていたが、今は何とも無い
「おそらく、地獄で戦い続ける内に魔力が底上げされているのだと思うわ」
「ほんと?アーシュ母さん」
「バラキエラはどう?魔力が見える様に成ったりしない?」
バラキエラはかなり以前から魔力の流れや構成を知覚する事は出来ていたが、まだ魔力そのものを「視る」までには至っていない
また、遠く離れた相手の魔力を特定出来なかった
「転移門は予め指定した地点同士を行き来出来る仕組みだから、魔力を感知したりする必要も無いのよねえ」
すると、黙って魔物肉を頬張っていたツマツヒメが手を挙げる
「あの……魔力を特定するのは、生まれつきの先天的な特性ですから……」
「え?じゃあ私には無理って事?」
「良い加減な事言うと殺すわよ!」
アシュタローテが睨み付ける
「ヒッ!そんな事言われても……」
「この娘が言ってる事も嘘じゃ無いわ、
魔族の中でも転移魔法が使える者が少ない理由よ」
そうまで言われると、アシュタローテも自身が転移出来ない理由に納得するしか無くなる
言われてみれば、ミカエラも転移魔法は使えなかった
しかし、アシュタローテもミカエラも、周りの魔力を感知出来るし、互いの存在を感じとれる
それに、子供達は見える範囲で、対象を認識出来れば何でも転移させる事が可能だ
魔族が使う転移魔法とは理屈が違うのだろう
何時もは天才的なヒラメキで結果を導き出すラムエラも、今回は悩んでいた
「亜空間……亜空間……の向こう側?あっ!」
「どうしたの、ラムエラ?」
「お母さんの魔力が分かる!」
突然、ミカエラの魔力を感知出来たと喜ぶラムエラにバラキエラが食い付く
「ほんと?どうやったの!」
「亜空間を歪めて転移するじゃない、亜空間の向こう側が見えないか試してみたら、お母さんが判った気がする!」
ラムエラの説明にハーディが首を傾げる
「亜空間を歪める……?亜空間を経由するの間違いじゃ無くて?」
「行けるんじゃ無いかな……?うん、行けそう」
バラキエラもラムエラの説明で理解出来たらしい
「亜空間を三次元の時空で捉えようとしても無意味だけど、転移には亜空間の先を把握する必要が有るでしょ?だったら、転移したい先の情報さえ把握出きれば転移は出来る訳で、亜空間の先の情報を感知するには時空間の配列関係を無視してしまえば良いのよ!ハーディさん、分かります?」
興奮するバラキエラの説明はハーディにはチンプンカンプンだった
「もう良い、私、行くね!」
フッ、とラムエラの姿が消える
その頃、クレセントとセレロンに分乗して飛行中だったミカエラの目の前に、ラムエラは転移した
「お母さん!」
「わあっ!びっくりした!?ラムエラ?」
「会いたかった!!」
ラムエラは驚く母の胸に飛び込む
ミカエラは、そんなラムエラを強く抱き締める
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます