第37話 罪価の輪


ミカエラ達が生存者を探していると、見たことも無い妙な物が散らかって居た

 人が載って、コントロール出来るのか、座席と握り手が複雑な筒状の物体の組み合わせにくっついている


 ハーディが開発した多脚魔導自走機関砲だが、ミカエラ達にそんな知識は無い


 どうやら、攻撃を仕掛けてきたのは、たった六人の悪魔達だったようだ


 冥王軍の揃いの軍服に身を包んだ五名が、ミカエラ達に囲まれて座らされている

 骨折した者も居たが、治癒魔法は使わず、副木を充てて応急手当を施した

 一人は、転倒した魔導砲の下敷きになり絶命していた


 腰に吊るした魔導拳銃を、武器と判断出来ないミカエラ達は、武装解除しないままだ


「何故、私達を攻撃してきたの?」

「……」

「シカトしてんじゃ無えよ」

 沸点の低いミカエラが、自分を睨む兵士を蹴り飛ばすと、さっと魔導拳銃を抜いた

 数人が一斉に拳銃を抜いたが、構える前にミカエラによって手首を切り落とされてしまう

「「「ああっ!」」」「!?」

 抜くのが遅れた一人は、抜きかけの姿勢で固まったままだ


「何?これ?」

 サリエラが落ちた魔導拳銃を拾うが、初めて見る異物を理解出来ない

 あれこれ検分していると、「バン!」と暴発してしまう「!?」銃口から発射されたエネルギー弾はミカエラに当たるが、並外れた魔力を持つミカエラは撃たれても平気だ


「ビックリしたぁ、ナニこれ?」

 至近距離で撃たれても平気なミカエラを見て、兵士達が動揺する


「……何故、撃たれても平気なの?」

「あ?こんなの屁でも無えよ」

「ミカエラ、これってもしかしたら武器なんじゃ無い?」


 クレセントが銃口を兵士に向けると、慌てて身を庇う様に動いた


 と言う事は、ひっくり返っているヘンテコな物も武器なのかも知れない

「さっきのは、コイツで攻撃したって事か?」


 サリエラが兵士達に質問するが、やはり答えない


「……お前達、両手を上げろ」

 ミカエラに言われ、右手首を失った兵士達も仕方無く両手を上げる

 シュンッ!


 一閃で、全員の両手首が落ちた

「「「ああっ!」」」


「右耳」


 ボトボトッ

 こんどは全員の右耳が落ち、鮮血が迸る


「鼻」


「ヒイイッ!」「や、止めて!」

 慌てて顔を隠す兵士達


「じゃあ、首を跳ねるか……」

「しゃ喋るから!何でも!」「命だけは!」

「殺さないで!?」


 身体を少しづつ切り刻む事で、喪失感に対する恐怖を植え付ける

 昔、ミカエラがクレセントにヤッた拷問で効果は証明済みだ


「良いか、次に私に対して舐めた態度をとったら、遠慮無く殺す、黙ってても殺す、許可無く喋っても殺す、分かったな?」


 青ざめてコクコクと頷く兵士達


 ミカエラは、両手首と右耳を失った兵士達に治療の聖魔法をかけ、治してやる

 ミカエルが、効果を底上げしたので、殆ど瞬間的に損失部位が回復した


「おお、何と……」「奇跡だ……」

 勝手に喋ったので、ミカエラが殺気を飛ばすと、思わず失禁してしまう者も居た


「ミカエラ、私が尋問しましょう」

「頼むわ、ムカ付いて殺したくなる」

 デュアルコアと交代すると、優しげな雰囲気にあからさまにホッとする兵士達


 だが、そんな甘い期待は、続くデュアルコアの言葉で覆される

「私達は、魔界の統治者ルシフェラに喧嘩を売りに来ました、代わりに貴女方が買ってくれるならお売りしますけど、良く考えてお返事を願います」


 想定外の事態に思考が追い付かず固まる兵士達


「ルシフェラが何処に居るか、教えて下さいね?」

 優しく微笑むデュアルコアの顔が、どんな悪魔より残酷に見える

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る