第34話 大地からの使者


魔物の姿も見ないままに、荒野を進むミカエラ一行


 時々、サリエラとセレロンが先行して、高台から付近を偵察するが、気配すら感じない

 それでもサリエラは油断無く、鋭い視線で警戒を続ける


「サリー、そんなに張り詰めてたら疲れちゃうわよ?」

「……ミカエラ、出来るだけ岩盤の上を歩いた方が良いわ」

「どうして?」

「魔物の痕跡が、あまりにも無さ過ぎる……

 強力な捕食者が居る可能性が高いわ」


「捕食者……?」

 突然、クレセントの足下が崩れたと思ったら、一瞬で巨大な口に呑み込まれてしまう


「クレス!?」

 地面から巨大なミミズが次々と湧き上がって来た

 クレセントを呑み込んだ巨大ミミズは、そのまま地面に潜り込もうとして、内側から爆散する

「あーーーーー!気持ち悪ーーーい!」

「クレス、大丈夫?」

 黄金のドラゴン姿のクレセントは粘液とミミズの肉塊でドロドロだ


 セレロンが飛べないデュオを抱えて待避してくれた

「卍丸、来い!」

 聖剣を召還すると、ミカと憑依合体して翔びながらミミズを細切れに切り裂いて行く

 ズバババババ!


 ミミズは地中から飛び上がって空中の獲物にも襲いかかって来るが、近付く端から切り刻む

「ええい、キリが無い!」


 卍丸に魔力を流し、ブーメランの形状に変化させると、巨大ミミズの群れ目掛けて投げつける

 スパパパパーーーン!


 十匹位纏めて分断したが、切られた部位から再生し始めた!

「気色悪!」

「ミカエラ、下がって!聖域展開、神雷!!」

 ドドオーーーーン!!


 サリーが雷撃を放つと、目に見える範囲全部のミミズに命中するが、地中にアースされているのかあまり効果が無い様だ


 それとも、地獄だから聖魔法の効き目が弱いのかも知れない


「デュオちゃん、目を閉じて耳を塞いで居てくれる?」「は?はいっ!」

 一番高い所まで待避していたセレロンが、全黒眼になると口から暗黒のブレスを吐き出した

 ズバウッッ!!


 黒い閃光が巨大ミミズの群れごと、大地を抉り大爆発を起こす

 ドドオーーーーン!!

 巨大なキノコ雲が立ち昇り、地面には直径三キロメートル位のクレーターが出来、中心部付近はドロドロに溶解していた


「お姉ちゃん、ナイス!」

「もっと褒めて♡」


 しかし、これがアガリアから聞いた巨大ミミズだとしたら、子供達もコレと闘って勝ったと言う事だ

「やるわね、あの子達」


「大司教も居なくて、子供達だけで良く勝てたわね」

「流石、ミカエラの子供達ね」


「狩りも良いけど、子供達の無事を確認するのが先よ、クレス、お姉ちゃん、悪いけど皆を乗せてくれない?」

「勿論よ」

「頼ってくれて嬉しいわ」


 クレセントは二十メートルの黄金龍の姿に、

 セレロンは五十メートル程の多角形ながら先鋭的な、ちょうどセンチネルのZ+ハミングバードを漆黒の機体にした様なスラスタードラゴンに変形する


 クレセントは魔力で浮遊するが、セレロンは魔力を放出する事で物理的に飛行するので、風の抵抗を受けてしまうから少し流線型なのだ


 ミカエラとデュアルコアがクレセントに乗り、ミカエルとサリエラがセレロンに乗る事になる


 ミカエルは兎も角、サリエラは肉体が有るから風圧で吹き飛ばされないか心配だが

「地上付近をゆっくり翔ぶんでしょ?大丈夫よ」

「お姉ちゃん、分かってる?

 弾道飛行しちゃだめだからね?」


「だあ~いジョブ!お姉ちゃんに任せなさい!」

 前にも聞いたわ、その台詞


 クレセントが音も無くふわりと宙に浮かぶ


 キイイイイイイーーーーーー!

 セレロンが吸い込んだ魔力を胎内で圧縮して、両翼と後部のスラスターから排出し始める

 ゴオオオオオーーーーッ!


 轟音と粉塵を撒き散らしながら、垂直に離陸すると、高度五百メートル程で両翼を水平に戻して水平飛行へシフトする


「じゃ、アッチへ向けてレッツゴー!」

 ドヒューーーーン!と、いきなり音速を超えて飛び出す二人


 クレセントに乗るミカエラとデュアルコアは、風圧も無く平気だが、セレロンに乗るサリエラは身体強化を維持していなければ、間違いなく振り落とされていた


 クレセントもセレロンも実体の有るドラゴンだが、クレセントは周囲に魔法障壁を展開しているので、風の抵抗も轟音とも無縁だ


 対して、セレロンは飛行原理が物理的なので、飛行機雲を引きながら飛ぶ事になる


 もしも冥王軍がSAM(地対空ミサイル)を持って居たら撃墜される可能性も有る

 まあ、流石にレーダーは無いだろうが


 と、遥か前方の密林の中から幾筋ものエネルギー弾が、此方へ向けて放たれた


 


 


 

 


 


 



 

 

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