第27話 鬱陶しい奴
「今の話し、詳しく聞かせてくれないかっ!?」
ハーディはラムエラとバラキエラが魔法で物理干渉出来る理屈を知りたくて仕方ない
「それ以上、私の子供達に近寄るな、変態」
アシュタローテがバッサリと拒否する
「……変態だって」
「怖いね」
「大丈夫よ、何があろうと、バラキエラは私が守ってあげる!」
「ラムエラ……」
ポッと顔を赤く染めるバラキエラ
「世間一般では、二人の方が変態であろう?」
慌てて否定するハーディは自分が正しいと信じて疑わない
「地獄って遅れてるのねぇ、
これだから田舎者は嫌だわ……」
決してワザとでは無いが、アシュタローテが煽る
「そうですよ!姉御の男気が分から無えとは」
ヴォルカノが調子に乗って軽口を叩くと、ハーディにギロリと睨まれて小さくなる
「て、てやんでえ!冥王軍なんざ姉御にかかりゃ屁でも無えやい!ねっ、姉御?」
実に潔い小物っぷりだ
「ええーー?それはちょっと……」
「黒さん、カッコ悪いよ」
ラムエラとバラキエラにダメ出しされて落ち込むヴォルカノをイフリースが慰める
弱い者には容赦しないが、強い者には滅法弱い
変わり身の速さがヴォルカノの持ち味かも知れない
それは兎も角、ラムエラとバラキエラの二人は、これまで不可能とされて来た、他人をも転移させる事が可能かも知れなかった
転移門を使わずとも、移動出来ると成ると、これ迄の軍事戦略が根底から覆る
それだけでは無い
敵将を認識さえ出来れば、拉致誘拐も暗殺も思いのままだ
兵站を考慮する必要も無いから、遠征し放題
侵略者にとっては、夢のような都合良さである
因みに、誰にも言わないだけで、ルシフェラに不可能は無かった
彼女が不変の女王で居られる理由の一つが、自分に都合悪い事も、記憶すらも全て指パッチン一つで「無かった事」に出来てしまうからだ
それ故、ルシフェラは地上の支配に興味は無かった
だが、地獄にも野心を抱く愚か者は存在する
もしも、彼等がこの知識を欲したならば、怒り狂ったアシュタローテがナニをするか分かったものでは無い
ハーディは、知識は知りたかったが、それを誰にも知らせる事が出来ない現実に悩む事になる
(もしも、魔法が物質に干渉出来るとあらば、これ迄の常識が覆る大発見だわ!
だけど、公表すれば、必ず良くない結果が引き起こされる……ああ、どうしたら良いの?)
身をくねらせ、眉間に指を当て、周りを無視したままブツブツと自分だけの世界に没頭し始めたハーディは、そもそも大前提となる子供達の知識を教えて貰えないと言う筋書きを思い付く事は無いまま、思考の海に沈み続けた
「……気持ち悪いこのヒト」
「変態よ、変態!近寄っちゃ駄目よ?」
バラキエラの正直な感想を責める事は出来ない
アシュタローテは子供達を抱き寄せ、ハーディが二人の視界に入らない様に気を使う
(あの軍監ハーディが、変態呼ばわりされる日が来るとは思わなかったわ……)
アガリアも、ハーディの意外な一面に驚いては居たが、それより今はルシフェラの元へ向かう事が大事だ
「ツマツヒメの言う通り、官舎に転移門は有ったけど……今は無いわよ?」
「何故だ?」
「アーシュがブレスで吹き飛ばしちゃったからでしょ、とんでもない威力だわ」
「お母さん凄~い!」
「さすがアーシュ母さん」
子供達は感激しているが、問題は拗れてしまった
「それにしても困ったわね、手詰まりじゃない」
「煩せえな、ヤっちまったもんは仕方無えだろ」
「それだ!」
突然、ハーディが大声をあげたので全員の視線が集まる
「どうだろう、一つ交換条件と行かないか?」
「仕方ない、ルシフェラの宮殿まで歩くとするか……」
「私達はガウに乗れるから平気だよ?」
「アシュタローテ様は、我等がお乗せして翔びましょう」
「あー、私は直接行っても良いけど……」
全員がさらっとハーディを無視している
「おいっ!私を無視するんじゃ無い?」
「なんだ、まだ居たのか変態」
「私は変態じゃ無い!いや、そうでは無くてだな……」
「さあ、先は長いんだ、とっとと移動しようか」
「ガウ、よろしくね」
「ガウッ!」
喜んで尻尾を振る巨狼にラムエラとバラキエラがよじ登る
無視され続けて業を煮やしたハーディは、待機していた冥王軍兵士から魔道機関砲を奪い取ると、空へ向けて乱射した
ヴオオオオオーーーーーーッッ!!
あまりにも高い連射速度で、銃身が焼き付くのを防ぐ為に、六本の銃身が高速回転しながらエネルギー弾を凄まじい勢いで撒き散らす
一瞬で、周囲の魔素が希薄になる
魔道機関砲を動かすのも、撃ち出されるエネルギー弾も魔素を消費するからだ
「ヒトの、話を、聞けえーーーーっ!」
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