第26話 竜の瞳に映るのは
会話の流れを聞いてしまったハーディは焦った
魔族が使う闇魔法の転移とは、全く異なる理屈で転移出来るとしたら、実に画期的な大発見である
しかも、魔法が物質に直接干渉出来るとしたら、ハーディが長年没頭して来た魔道兵器の開発が新たな段階へ進めるかも知れない
微々たる魔力しか持たない一兵卒が、強大な軍勢を圧倒する可能性が開けるのだ
地獄の亡者を管理する冥王軍の獄卒には、並みの悪魔以上の力が求められる
魔力の弱い悪魔には生きる権利さえ無かった冥王軍の構成を革新したのは、ハーディの開発した魔道兵器のお陰である
ちょうど、地球での戦争が剣と槍から機関銃に取って変わった様に、魔力を持たない者にも均等に力を与える事が可能と成った
地獄に空気と同じ様に当たり前に存在する豊富な魔素をエネルギー源として、魔力弾を発射出来る武器を開発した功績で、軍監に登り詰めたのがハーディである
この発明に依り、獄卒の人手不足は解消され、職場環境も大幅に改善され、ひいては地獄の生活環境までもが良い方向へ循環し出したのだ
子供達に、この世界では誰も理解すらしない物理学を教授したペンティアムの仕業が、ハーディの探求心に火を付けてしまう結果となる
「今の話は本当なのか!魔力が物質に干渉出来るのか?」
物凄い勢いで食い付いて来たハーディに、思い切り引く四人組
「ナニ?この人……」
「お母さん、恐い……」
「ハーディ様、落ち着いて下さい?」
「……やはり殺すか」
アシュタローテの物騒な一言に、慌てて魔道兵器を構え直す冥王軍
「大佐!やはりコイツ等は危険です!」
「発砲許可願います!」
正直、アシュタローテにとって、冥王軍の魔道兵器など蚊が刺した程にも感じ無いだろう
障壁を展開するまでも無く無効化出来るし、魔力の格なら子供達の方が余程、上である
ヴォルカノとイフリースにとっては脅威かも知れない
「総員、武器を下ろせ!これは命令だ」
「しかしっ!」
「地獄を更地にしたいのか?我々は戦いに来たのでは無い!調査が目的である」
「頭の回る指揮官で、命拾いしたな」
三百人程度の獄卒相手なら、ラムエラ一人でも棒切れで楽勝だった
地獄丸を一振りすれば、一瞬でカタがつく
バラキエラの暗黒のブレスも、地獄へ来る前と今とでは威力が格段に上がっている
度重なる実戦経験が、二人の実力を底上げしていた
肉体を持っている上に、聖剣を身に付けているお陰で、言ってみれば経験値乗倍増加効果が働いているのは、勿論ペンティアムの狙い通りだ
ハーディは二人の子供達の可能性に驚きと恐怖を抱く
もしも、魔法が物理干渉出来るのなら、世界の理がひっくり返る
魔道兵器の性能も桁違いに向上するだろうが、地獄の生活そのものも、大きく変革する可能性すら有る
ルシフェラとロキに、その気は無いが、地上世界を蹂躙する事すら夢では無くなる
そこまで思い至った時、ぶるりと身が震えた
「あっては成らぬ事だ……しかし……」
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