第22話 魔女の花嫁


「じゃあ、するよ?」

「……うん」


 ラムエラもバラキエラも、真っ赤に照れながら向かい合い顔を寄せる

 お互いに眼を瞑ったまま顔を近付けたので、鼻と鼻がぶつかってしまう


「あ、ご、ごめん!」

「ううん、私こそご免なさい……」


 実に初々しいのだが、端から見ていたアシュタローテとアガリアは、もどかしくて仕方無かった


「じゃあ、目を開けてするから……」

「な、なんか照れ臭いから、私は目を閉じてても良い?」

「……分かった、するよ?」

「うん」ドキドキドキドキ……


 ラムエラはバラキエラの顔をしっかり見ながら顔を近付ける

 バラキエラは目を閉じ、ラムエラの口付けを待っている

 メチャクチャ恥ずかしい!

 でも、バラキエラは可愛い妹だ

 望まれて拒む理由は無い!

 (ええい!女は度胸ってお母さんも言ってた!)


 キスしたら合体出来るのよ!

 イクしか無いじゃないの?

 あれ?イクって夜中に良くお母さん達が叫んでるけど、こう言う事なんだ

 そうか、お母さん達も恥ずかしいんだ


 ラムエラは勝手に勘違いしながら、バラキエラに優しく唇を重ねる


「んっ、んう!」

 キスされたバラキエラが抱き付いてくる

 バクバクバクバク!心臓が破裂しそうだ?


 バラキエラの背中に腕を回して、優しく抱き返す

「!」

 バラキエラが反応して、抱き締める力が増す


 舌が入って来た

 (ええーーー!ど、どうしよう?)

 と、狼狽えながらも、自然と舌を絡め返す

 お互いに舌をねぶり合い、抱き締める腕に力が入る



「……合体しないわね」

「そうね……良いの?この二人……」

 黙って見ていたアシュタローテとアガリアも、何か違うんじゃないかと思いはじめた


「あ、あのっ!」

 黙って見ていたツマツヒメが挙手する


「前回変身した時も、間違いなくキスしてましたので、もしかして興奮の度合いが影響するのかも ……?」


「……」

 顔を見合わせる母親二人

 他人から言われると気恥ずかしいが、思い当たる節も多かった


「そっ、そうなのかしらね?」

「もう少し様子を見ましょう?」


 アシュタローテもアガリアも、合体の切っ掛けが聖剣である事は知らない

 赤面しながらも、見守るしか無い


「ん……んんっ♡」

 とうとうバラキエラがラムエラを押し倒す

「んーーーーーっ?」

 長い口付けの後、やっとバラキエラが顔を離す

 まだドキドキが止まらない


「ラムエラ……大好き♡」

 そう言うと、ラムエラの首筋にキスしてきた

「ちょっ、ちょっとバラキエラ?なに、ん、ううん!?ダメえ……くすぐったい」


「はい、そこまでよ、アンタ達?」

 流石にアシュタローテが止めに入った


 あの時は、一瞬で変身した筈だ

 どう考えてもおかしい

 もしかしたら、キスは合体には関係ないのではないか?


「お母さん?どうしたの……」

 ラムエラがボーーッとしながらアシュタローテに聞く


「この先は、貴女達にはまだ早いわ」


 バラキエラも半分放心状態で、茹でタコみたいに真っ赤になっている


「どうも、キスと合体は関係無さそうね」

 アガリアが二人を落ち着かせようと、頭を撫でる


「……もう一つ、何か見落としてるとしたら、聖剣かしら?」

「聖剣?どうして子供達が?」

 

「どうもペンティアムが、子供達に押し付けたみたいなのよ」

 はあ、とため息を吐きながら、バラキエラのブレスレットに触れる


 (凄い神気を感じる……籠められた魔力は、通常は圧縮されてるのね)


 何故ペンティアムが聖剣を持って居たのか、何処から手に入れたのか、謎は多いが「ペンティアムだから」の一言で済ませられる程度には、あの人外大司教の正体に薄々気付いては居た


 (そりゃミカエラも、あの女に直々に鍛えられりゃ、人類最強にも成るわよね……はぁ、一体どれだけの加護を与えてるんだか)


「貴女達、今度は聖剣を顕現させてみなさい」

「お母さん?」

「聖剣を顕現させてキスするの?」


「取り敢えず、キスから離れてね?

 合体、変身出来たら、好きなだけキスでも何でもして良いから!」

「何でも!?」

「って、ナニするの?」


「い、色々あるのよ!大人の世界は奥が深いのっ!」

「そうかー頑張ろう、バラキエラ!」

「うん!私、キスから先に進みたい!」


 アガリアがアシュタローテの肩を叩く

「責任、取りなさいよ……?」


 

 

 

 


 


 

 


 


 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る