第19話 地獄極楽丸ミラクラ推参
「二人共、早く合体しなさいよ!」
ツマツヒメが急かすけど、ラムエラもバラキエラも、どうやって合体するのか理解出来ない
「え、えーと……こう?」
ラムエラがバラキエラに近付き、抱き付いた
「お母さん達がしてるみたいな感じ?
……恥ずかしいな……」
バラキエラが赤くなりながら、ラムエラにキスしようとする
「ちょっと、何でキスしようとしてるの!」
ラムエラは恥ずかしがって、離れようとするが、今度はバラキエラが、ギュッと抱き付いて離さない
「私、ラムエラなら良いよ……?」
「何言ってるの?バラキエラ、しっかりして!」
「もっと一緒になろうよ、ラムエラ♡」
「わーーーっ!バラキエラの目付きが変!ちょっと、お母さん助けて?むっ、んう?」
とうとう、バラキエラがラムエラにキスしてしまう
アシュタローテは子供達の道徳がどうこう以前に、純粋に「合体」が気になって何も言わず、真剣に見守っていた
と、その時、バラキエラの指輪がラムエラの木刀に触れた!
刹那、二人の子供の姿は、一人の天使の姿へと変身する
「!?これは……」「へえ……」
アシュタローテもルシフェラも驚いた
ミカエラがミカエルやアシュタローテと憑依合体する時は、天使と堕天使は魔力のみの存在だから、そのまま合体出来るのだが、ラムエラもバラキエラも二人共、肉体を持つハーフ天使なので、お互いにそのままでは合体は不可能
その為ペンティアムは、二人に渡した聖剣に特殊な魔方陣を刻み、聖剣同士が触れる事によって聖剣鎧装と憑依合体が発動する様に仕組んだ
「……地獄極楽丸ミラクラ推参!さあ、死にてえ奴からかかって来な!」
「フウゥーーーーッッ!」
猫が彼女の魔力に反応して、威嚇する
「シャアアッ!」
全てのビームをミラクラ目掛けて発射するが、ミラクラは避ける事すらせずに、攻撃を無効化してみせた
圧倒的な魔力の差だ
「ふん」
ミラクラが木刀を一振りすると、数百メートル離れた猫の首が落ちる
そのまま、存在を構成する魔力が霧散して、猫は消え去った
「さて、次はどいつだ?」
木刀を肩に担いで、あからさまにアシュタローテに向かって挑発的な態度を取る
アシュタローテが母親だという認識は出来ていない様だ
(変身すると、新たな人格と交代してるのか?)
母親として、子供達に敵対したくは無いが、ミラクラと名乗る彼女の実力を試してみたくて仕方無かった
(見せて貰おうか、貴女達の実力とやらを!)
我が子との闘いを前に、アシュタローテは笑っていた
いつになく気分が高揚して仕方無い
突然、目の前のミラクラの姿が消えると、アシュタローテの背後に転位して、両腕でアシュタローテを地面に叩き着け、木刀を振りかざして襲いかかる
地上に落ちたアシュタローテは、猫の為に練っていた魔力を、エネルギー弾として迫るミラクラへと放った
ドキュン!
撃たれたエネルギー弾を木刀で弾くと、勢いそのまま、アシュタローテ目掛けて斬り付ける
(アレに斬られては不味い)
猫を斬った時の、馬鹿げた射程距離もそうだが、斬った対象の魔力を吸収する力が有る様だ
(ミカエラの光の剣と同じか……見た目通りでは無い)
すかさず避けると、横翔びに低空飛行する
ミラクラは斬撃を外され、木刀を横凪ぎに振るった
ザシャシャーーーーー!バキバキバキ……
密林が数キロ先の奥深くまで、高さ一メートル程に刈り取られる
「ひゃあっ?」
ツマツヒメ達も危うく伏せて回避した
「隠れる場所など無いぞ!」
ミラクラは獰猛な笑顔でアシュタローテを追う
(仕方無いな……少しだけ痛い思いをして貰う!)
アシュタローテは再び魔力を練ると、口から暗黒のブレスを放つ
バウッッ!!
「上等!!」
負けじとミラクラもブレスを放った
ドキューーーン!
スドドオーーーーーーン!
ブレス同士が中間でぶつかり合い、大爆発が起きた
お互いに、大密林に果てしない道を切り開く程の威力だ、凄まじい爆風にツマツヒメ達は吹き飛ばされてしまう
「きゃああ!」
巨大なキノコ雲が立ち昇ると、吹き飛ばされたツマツヒメ達がコロコロと舞い戻って来た
「きゅうう~」
完全に眼を回しているが、命に別状は無さそうだ
土埃が収まると、アシュタローテはミラクラの元へと走り、安否を気遣う
そこには、キャパシティを超えて魔力を放出した為に気絶した、二人の子供達が転がって居た
聖剣を二人に渡したのは、ペンティアムだ
恐らく、合体出来る事は話して居なかったのだろう
「それにしても、魔方陣の構築術式に綻びでも有るんじゃないの?性格悪過ぎだわ」
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