第13話 初めての眷属
空高く立ち昇った、巨大なキノコ雲が消えて夕空に星が瞬く頃、焚き火で巨大ミミズの肉を焼きながら、ラムエラがバラキエラを呼ぶ
「そろそろ美味しく焼けたんじゃ、ないかな~?バラキエラ~、良い加減こっちへおいでよ?」
「絶ーーーっ対嫌!ラムエラも虫なんて食べたら絶交だからね!?」
「虫じゃ無いよ、ミミズだよ?」
「言わないで!」
バラキエラは焚き火に背を向けて五メートル程離れたまま、近付こうとしない
ラムエラは火加減を調整しながら、肉汁の垂れる肉の塊にかぶり付く
「ウマッ!?何これ、美味しい!」
分厚い皮を取り除いた白身の肉は、まるで上質な鶏肉の様だった
思わず、二口、三口と食べ進めてしまう
「バラキエラ~、すっごい美味しいよ?」
言われなくとも、先ほどから実に美味しそうな匂いが辺りに漂い、空腹感を刺激してきていた
「グキュルルル~~~!」
「ほらあ、我慢して無いで、一緒に食べようよ?」
「いっ、今のは私じゃ無いから!?」
「えっ?」
じゃあ誰?と、驚いて見渡すと、焚き火の反対側で引っくり返っていた、生き残りの狼の魔物がバツが悪そうに涎を垂らしてラムエラを見つめて居た
お腹を空に向けているのは、恐らく犬族共通の「服従」の姿勢では無いのか?
目が合うと、サッと反らした
しかし、肉を食べ始めると、視線が肉に吸い寄せられていた
「……なに?お肉欲しいの?」
ガバッと跳ね起きて、お座りのポーズで待機する白い狼
試しに、肉を持った手を左右に振ると、狼の顔も左右に揺れる
「何してるの?」
バラキエラも様子が気になって、隣に来た
「この子、お腹が空いてるみたい」
「そりゃ、私達を食べようとしてたからね」
「でも、今は可愛いよ?ほら!」
ラムエラは肉を片手に白い狼の前に近付いた
狼はジッとラムエラの眼を見つめている
「お手!」
サッ!と狼がお手をする
「可愛いーーー♡良し、取って来ーい!」
ラムエラが食べかけの肉を遠くへ放ると、狼は一目散にダッシュして、肉を咥えて食べずに戻って来た
ラムエラの前に肉を置いて、褒めて欲しそうに尻尾を振って居る
思わず頭を撫でてやり
「食べて良いよ!」と言ってやると、ガツガツと食べ始めた
「餌付けしたの?私、知らないよ?責任取りなさいよ?」
「もうっ、バラキエラは細かいなあ」
その夜は、二人と一匹でくっついて寝た
大きな狼の毛は温かく、気持ち良く眠る事が出来た
翌朝、日の出と共に起きると、狼はまだタップリ残ってた肉を、二人はペンティアムが用意してくれていた乾燥野菜のスープを食べて、出発する事にした
「あ~あ、デュオ母さんの手料理が食べたいなぁ」
「それは同感ね、美味しいご飯がどれだけ有り難いか、改めて身に染みたわ」
簡単な自炊調理道具や夜営道具をコンパクトに纏めると、小さなバッグに詰め込んで分担して背負う
すると、白い狼が頭を低くして、しきりに顔を舐めてきた
「ははっ、くすぐったい♡」
「もしかして、背中に乗れって言いたいんじゃ、ないかな?」
「え?乗せてくれるの?」
「ワフッ!」
体長五メートルは超える狼だ、二人の子供達が乗っても、全然余裕が有った
二人を乗せた狼は、風を切り荒野を走り始める
時速にすると、百二十キロ/h位だろうか
二人が翔ぶより、遥かに速いスピードで、岩だらけの荒れた大地を進む
「いいーーーやっほぉおう!」
「凄い!速ーーーーい!」
やがて、太陽が頭の真上辺りにさしかかる頃、高い崖の上から望む大森林が現れた
一面の濃い緑の中に、一本の真っ直ぐな道らしき物が見える
その道は、不自然な程、ただ真っ直ぐに地平線の彼方まで続いている様に見えた
「ねえ、アレって道だよね?」
「行って見よう!」
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