第12話 初めての実戦
「……と言う様な理由で、単に肉体のみを強くしても、意味が無い処か、下手すると脳細胞や神経系がパンクして死んでしまうのよ、理解出来た?」
おおよそ十分程のペンティアムに依る身体強化の講義は、実に分かり易く、バラキエラなどは新たな可能性を見出だしていた
一方、肝心のラムエラは目を閉じ、寝てしまっている
「ちょっと、ラムエラ?ちゃんと聞いてたの?」
パチッと目を開けるラムエラ
「何となく分かったかも!」
「……今、寝てたでしょ?」
「見てて、行くよ!」
そう言うと、ラムエラは地を蹴り、数十メートルの高さに在る奇岩を垂直に駆け昇ると、地獄丸を顕現させて天頂部に在った直径五メートル程の大岩を一刀両断して見せ、飛び降りて戻って来た
「ほら!木刀で、岩も斬れる様になった!」
ドヤ顔が止まらないラムエラ
「凄い……斬る瞬間だけ、木刀に魔力の刀身を纏わせて、遥かに大きな物を斬ってる」
魔力の流れが見えるバラキエラが呆れる
人の話しを聞いて居ない様で、実はちゃんと理解してるらしい
話を聞く耳を持っている時点で、ある意味ミカエラよりも遥かに優秀なのかも知れない
「呆れるわね……末恐ろしいとは良く言ったものだわ」
ペンティアムは、改めて二人と目線を揃えて喋り出す
「良い?これからは、常に軽くで良いから身体強化をし続けなさい?そうしたら潜在的な魔力量も増えて行くわ」
「「はあい!」」
「良い子ね、じゃあ私はこれで帰るから、後は頑張ってね!」
「「ええっ!?」」
突然、子供達を置き去りにして自分は帰ると言い出すペンティアムに、二人は焦る
「ちょ、ちょっと先生?」
「私達、これからどうすれば……?」
「元々、自分達で来る積もりだったのだから、後は自分達で考えて行動しなさい?
私が手伝ってあげるのは、ココ迄ね、じゃあね!」
と、言い残し、ペンティアムは転位して消えてしまう
「……どうしよう……どうしよう、どうしよう?」
と不安そうにバラキエラ
「まっ、成る様に成るわよ?」
と楽天的にラムエラ
「私が付いてるんだから……ううん、私達二人なんだから、大丈夫よ!」
「でも、これからどうするの?」
「取り敢えず、何処かへ向かえば、何処かに着くんじゃない?……ん?」
「そんな無責任な……あら?」
二人同時に自分達を取り囲む気配に気付いた
足音を忍ばせ、気配を消して近付いていたそれは、体長五メートルを超える大きな狼の魔物の群れだった
「どうして、こう言う場面で出てくるのって、狼なのかしらね?定番なの?センス疑うわぁ」
ラムエラが能天気な感想を溢す
「……どうしよう、ラムエラ?」
バラキエラは明らかに動揺していた
「地獄丸、出番よ!」
「あっ、ご、極楽丸?」
二人はそれぞれの聖剣を呼び出し、装備する
狼の群れは全部で八頭だろうか
ぐるりと周りを取り囲み、円を描く様に動いている
「先生が居なくなった途端に出てくるなんて、私達舐められてるわよ?」
「狼さ~ん、私、美味しく無いですよ?きっと……」
「逆に喰ってやるわよ!先手必勝!!」
ラムエラが地獄丸を手に、飛び掛かろうとした時、乾いた大地を割り割き現れた巨大な口が、二頭の狼を一口に飲み込んだ
「ギャウン!」ズドドド!
「ゲッ、何?コイツ!」
「でっかいミミズ?嫌ーーーーっ虫嫌い!」
巨大ミミズは次々と地中から現れ、狼達を貪り喰ってゆく
「ガッガウ!」「キャイン!」ドドドド!
と、二人の足元が崩れたと思ったら、歯がミッチリと生えた巨大な口が飛び出て来た
すかさず空へ飛び上がり避けたが、勢いの付いたミミズの巨体は数十メートルほど飛び上がり続け、ドスン!と地面に落ちる
「落ちても潰れ無いって事は、意外と身が詰まってるのね」
ラムエラは急降下すると、地獄丸に魔力を纏わせてミミズを切り刻む
「ギョエエエエーーーーーーーッッ!!」
「嫌ーーーーっ!このミミズ、鳴いたあ!」
完全にパニックに陥ったバラキエラが、百個近い魔力弾を四方八方に向けて乱射し始めた
ドキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュン!
「わっ、馬鹿?危ないってば!ちゃんと狙いなさいよ?」
「虫嫌い虫嫌い虫嫌い虫嫌い虫嫌い虫嫌い虫嫌い虫嫌い虫嫌いーーーーー!」
特大の魔力弾を頭上に抱えると、地上目掛けて降り落とす
「みんなっ、居なくなれーーーーーーっっ!」
ズドガーーーーーーーン!!
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