第11話 「地獄丸」「極楽丸」
「これが聖剣……?」
バラキエラは自分の掌に顕現した「極楽丸」を見つめる
それは、小さなバラキエラの小さな指に合わせた一つの指輪だった
見たことも無い、不思議な記号や文字らしき物が細かくビッシリと彫り込まれ、どうやら多元的複合魔方陣を構築している様に見える
「バラキエラは魔法で戦うタイプだからね、
貴女に一番使い易い物に極楽丸自身が変化したのよ」
「……だからって、アタシのは何で木刀なの?」
ラムエラの手には、体格に合った丁度良い長さの木刀が握られていた
「ブッ!」
「くふふふ……」
「あーーーっ!笑った!
今、二人共笑ったでしょう!?酷い!」
「今のラムエラに一番使い易い物に地獄丸が変化したのよ?……木刀だけど!アハハハ!」
ペンティアムも、堪えきれずに大笑いしてしまう
「わ、私は笑って無いわよ?……くくっ」
ラムエラを気遣い、誤魔化そうとするバラキエラだが、つい小さな笑い声が漏れてしまう
「木刀なんかで、どうやって悪魔と戦えば良いのよ?まったく」
愚痴りながらも、ブンブンと素振りを繰り返して感触を確かめるラムエラは、意外とまんざらでも無さそうだ
「あら、ミカエラの卍丸も、刃引きして潰してあったのよ?」
「ええ?それで、どうやって魔王や勇者と戦ったの?」
「ん~、聖剣を信じる心かしらね?」
「信じる心……?」
「ラムエラも地獄丸と一つに成れる様になれば分かるかもね?」
「一つに……」
「そして、それは自分自身を信じる事にも繋がるのよ?貴女達は、無限の可能性に満ち溢れているわ」
ラムエラとバラキエラは、お互いに顔を見合わせる
「さあ、講釈はここまでね、後は実践あるのみ!二人共、魔力を抑えて聖剣を元に戻しておかないと、魔力切れになっちゃうわよ?」
言われて、慌てて聖剣をブレスレットに戻す二人
「二人共、お母さん達から、身体強化のやり方は指導されてる?」
「ミカエラ母さんから、一応習ってるけど……」
ラムエラは歯切れの悪い返事
「アーシュ母さんは、魔法の構築、展開にも血流や心肺機能、神経系反射速度、脳細胞の活性化と制御等が必用だと言っていたわ」
バラキエラは、アシュタローテから実践的な魔法の指導を受けているだけあって、中々的確な返事だ
本来ならば、天使である二人共、魔法適性は高い筈なのだが、ラムエラはどういう訳か魔法より身体を動かす方が得意だった
「ラムエラはミカエラから、どんな風に習ってるのかしら?良かったら聞かせて頂戴?」
「え~と、こう、フン!とやって、
バアーーーッて感じ?……良く分かんない」
「何よそれ?」
「それで理解出来たら、天才を超えてるわよ
でも、確かにあの娘はそう言うタイプだわ」
ミカエラは何時も、ヤってみたら出来ちゃったタイプで、難しい事を考えた事すら無かったかも知れない
一番、指導者に向かないタイプだ
ラムエラも、どちらかと言えば似てるのだが、流石に「フン!バアーーー!」で出来たら苦労はしないだろう
仕方無い、ここはこの子達の教師として、しっかりと指導してあげよう
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