第9話 レッツラゴートゥヘル!


子供達が居ない!

 お昼ご飯の時間なのに、家中探しても、師匠の処にも、露天の駄菓子屋にも、公園にも、図書館にも、兎に角居ない


「緊急事態よーーーーーーーーっっ!!」


 ミカエラはかつて無いほど半狂乱だった

 こんなにも自分を見失うのは、守護天使のミカと、堕天使のアーシュから子供を授かったと伝えられた時以来だ


「どどどどうしよう?二人がグレちゃった?」


「落ち着いてください、ミカエラ様」

「そうよ、母親のアンタが取り乱してどうするの?」

「あの二人がグレたら、聖都が灰塵に帰すわね」

「只今、聖都露天商工会と連絡を取っています、二人の目撃情報があれば、すぐに連絡が入ります」

「悪い奴に拐われたとか……?」

「拐った奴に同情するわね」


「冗談じゃ無いわよ?

 あの子達が居ないってのに、何でアンタ達は平気で居られるの!」

「平気じゃ無いわよ!平気な訳無いでしょう?」


 アーシュが私の肩を掴み、声を荒げる


「……そう言えば、地獄への行き方を聞かれましたね?」

 アギー!そう言う大事な事はもっと早く伝えてプリーズ!


「何でまた、地獄へ行きたいなんて……まさか?」

 そう言えば、ルーシーから「若返りの霊薬」の話しを聞いた時、あの子達も居たわ!


「こうしちゃ居られない!皆!地獄へ行くわよ!

 ゴートゥヘル!!」

「ミカエラ様、使い方が違います

 それに、私の魔力では、皆様を連れて転位は出来ません」


「ああー、もうっ

 肝腎な時に師匠は居ないし!転位ってどうやるのよ?」


「如何にミカエラ様の魔力が規格外でも、こればかりは法理を掌握出来なければ、次元の壁は超えられません」

「アーシュ!?」

「私に聞かれても……」


「んもーーーーっ!どいつも、こいつも!

 分かった!次元の壁だろうが何だろうが、叩っ斬ってやるわよ!卍丸、来いっ!」

「へ?」

「え?」

「は?」


 ミカエラは聖剣を手にすると、魔力を流し光の刃を顕現させる

 

「要は、地獄への扉をイメージすりゃ良いんでしょ?地獄、地獄、地獄……ああーーーーっもうっ、行った事無いから知らないわよ!行くわよ?

 秘剣!次元烈空斬!!ハアアッッ!!」


 ズバァッッ!


 ミカエラが何も無い空間を切り付けると、果たして、亜空間の「切れ目」が発生した


「「「ええーーーーっ!?」」」「ヒュウ♪」


 ミカエラが現れた「切れ目」に飛び込もうとすると、アガリアか立ち塞がる


「邪魔しないでアギー!?」

「駄目です!入ったら死にますよ!」


「どういう事?」

「生者が地獄へ立ち入ると、たちまち魂が朽ち果て消滅してしまいます

 この中で、地獄へ行っても大丈夫なのは、悪魔の私と肉体を持たない堕天使のアシュタローテだけです」


「そんなの、気合いで何とかなるでしょ?」

 ミカエラが尚も食い下がるとアシュタローテが割って入る

「脳筋抜刀女はここで待ってなさい、私が行く」


「アーシュ!?」

「ミカエラ、あの子は私の娘でもあるのよ、

 ここは私に任せて」

 アシュタローテはミカエラに近付くと、優しく口付けを交わす


「もしかしたら、地獄へ行ってるとは限らないじゃない、戻った時、貴女が居なかったらあの子達が悲しむわ、それに……」


「それに……なによ?」


「ここは平和過ぎて、少し退屈してたのよ」


 イタズラっぽくウインクすると、アシュタローテはアガリアと共に「切れ目」に入って行った


 

 


 

 

 

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