第6話 若返りの霊薬
「そへはれ、わははえひのひょーやくがはふのほ?」
毎度の事ながら、何故か我が家でモーニングワインを飲んでいるルシフェラが、口いっぱいにエビのサンドイッチを頬張りながら、何かを伝えようとしているが、さっぱり分からなかった
「ルーシー、子供達の手前、お行儀悪いから、喋るか食べるかどっちかにして」
「はふ、ほめんなさい」
すかさずアギーがルーシーの口元を拭う
「だからね?
若返りの霊薬が有るのよ!コレが!」
何ですって!?
此の世に生を受けて以来、間違いなくナンバーワンの衝撃だわ!
ミカとアーシュに子供が出来たって聞いた時より驚いたわよ!
「どうなさったのですか?ミカエラ様」
アギーが不思議そうに聞いて来るけど、九年前から容姿の変わらないアンタ達悪魔には絶対理解出来ないでしょ?
良く考えなさいよ、あなた達!
結婚して九年が経って、クレスもアーシュもアギーも見た目はあの時のままなのよ?
デュオとサリーは歳相応のティーンエイジャーだし、何で私だけがアラサーの影に怯えてるって、おかしいと思わないの!?
「いや、ミカエラは人間なんだし、それが普通だろ?」
アーシュ、身も蓋もない事言わない!
そんな事言ったら、師匠はどうなのよ?
もう、半世紀以上、あのままよ?
「あのヒト、ホントに人間?」
「そう言う意味では、ミカエラも半分以上、人間辞めてるじゃん」
失礼ねクレス?私は人間よ!
だから、目尻の小皺に悩んでるのよ!
「普通の人間は、地平線まで更地に変える様なブレスを口から吐いたりしませんよ?」
サリー、アレは事故なのよ
良いわね?
「あのブレスが、地面に撃たれてたら、この星無くなってたわよ?」
ルーシー、ここに来てこのタイミングでそれを言うか
教皇聖下が聞いたら気絶しそうな内容だわよ
そんな事より若返りの霊薬よ!
何処に在るの?
「ん~どうしよっかなぁ~?
一応ホラ、自然の摂理に反する行為だしい」
存在そのものが摂理に反してる癖に、勿体ぶらないで教えなさいよ!
「やっぱり辞~めたっ、じゃあね
サンドイッチ美味しかったわ、ありがとう♡」
と、言い残してルーシーはパッと消えた
思わせ振りな事言うだけ言って、逃げやがったあのアマ!
ちょっと、アギー!ルーシー何処に行ったのよ?
「パンデモニウムにお帰りになられたのでは?」
パンデモニウムって、アレよね?
地獄に在るとかいうルーシーの宮殿でしょ
行ってやろうじゃない!
「……落ち着いて下さい、ミカエラ様
生者が立ち入る事は不可能ですよ?」
そんなもの、気合いで何とかするわよ!
「ホントに脳ミソ筋肉で出来てるんじゃ無えだろうな?気合いで何とかなる訳無えだろ」
アーシュには分からないわよ
良い?毎朝毎日、鏡を見る度に胸が締め付けられるのよ?お肌の張りが、髪の毛の潤いが減ってゆくのを実感するの!
永遠に見た目が変わらないアンタ達は良いわよね?ブラシに残る白髪の恐怖は分からないわ!
私のサラサラの銀髪とプルプルのお肌を返しなさいよ!
「まあまあ、銀髪に多少白髪が混じっても、目立たないわよ?」
ガシッとクレスの顔を両手で挟んで、覗き込む
「……な、なに?」
昔から思ってたけど、アンタって本当にデリカシーに欠けるわよ?
クレセントの金色の瞳に吸い込まれそうになる
……やだ、ジッと見てたらキスしたくなってきた
チュッ
「!?」
一瞬、驚いた顔したけど、すぐに蕩けた顔に変わる
いつもながらチョロいわ、この娘
「朝っぱらから、子供達の教育に悪い事しないで下さい」
あ、デュオが妬いてる
「な、何言ってるんですかんうっ?んん……」
可愛いからデュオにもキスしてあげよう
あ、自分から腕を回して来た♡
四歳で私付きになり、ずっと使えてくれたこの娘も、今はもう十九歳
お肌ピチピチ髪の毛サラサラで羨ま憎たらしいわねコンチキショー
「ず、ずるい!私だって!」
サリーが横からデュオを押し退けて口付けして来た
この娘も、肉体を持つ戦乙女だから、十八歳くらいの見た目に成長して、近頃は毎晩の抱き心地も良くなってきた♡
ちょっぴり舌を絡ませてあげよう
「んッ!んん……」
「はい、そこまでー」
今度はアギーが横入りしてキスしてきた
いきなり抱き付いてディープキスしてくる
アガリアは悪魔だからなのか、キスが上手だ
彼女にキスされると、背筋がゾクゾクして腰がくだけそうになる
今度は私からも、腕を回して抱き寄せると、太股に自分の股間を押し付けてグリグリして来た
鼻息が荒い
夕べ、あれだけ愛し合ったのに、発情してしまったらしいわね
「アンタ達、朝っぱらから何やってんのよ?
子供達が見てるわよ」
アーシュがアギーと私を引き離すと、ため息を吐く
何よ、ひとりだけクールぶって
アンタだって、肉欲に負けて私と結婚したんじゃない
「に、肉欲とはなんだ!」
気持ち良すぎて、戻って来た癖に♡
毎晩、憑依合体して皆とは比べ物にならない快感を貪ってるのは、何処の誰?
そんな、教育に悪影響を与えそうな爛れた夫婦間のやり取りを、少し離れたテーブルから二人の子供達は微笑ましく見ていた
「母さん達、今日も仲が良いね」
大きなエビサンドにかぶり付きながらラムエラが言う
「そうね、後でミカ母さんが知ったら、嫉妬するわよ」
葡萄ジュースを上品に飲みながらバラキエラが応える
「……そんな事より」
「そうね、面白い事聞いちゃった♪」
ふたりは顔を見合わせると、母親譲りの悪い笑みを浮かべた
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