第8話
午後七時前に何とか、身支度などは済ませた。
雄介が歯磨きなどをしている最中、私はメイクをしていたが。普段、大体十分くらいで済ませている。今回、旅行中ではあるから、より手早くした。まず、お化粧水はパッティングしたから。BBクリームを手に取り、塗り込む。ザザッとしたら、ピューラーでまつ毛をカールさせた。アイブロウやアイライナーで目元を強調する。
次に、マスカラなどをまつ毛に塗り込んだ。チーク、口紅、グロスと進めた。最後にフェイスパウダーをはたき、一応は完了した。洗顔後に淡い藍色の半袖のワンピースを着ている。だから、なるべくメイクも派手にはしないように気をつけたが。髪も肩まで伸ばしているから、ヘアゴムで簡単に纏める。つばが少し広めの帽子を被り、とりあえずはOKかなと思う。
「……終わったぞー」
「あ、雄介さん。私も身支度はできたよ」
「そっか、俺も洗顔や着替えは済ませた。髪もな」
「分かった、朝ご飯を食べに行こうよ」
「そうだな、民宿に近い所にコンビニがあるらしい。何か、適当に買ってくるよ。夕凪は部屋にいてくれ」
「うーん、分かった。待ってるね」
私が頷くと、雄介は小さなバッグを持つ。財布やスマホなどを入れて、部屋を出て行く。コンビニに向かうのだった。
二十分もしない内に彼は戻って来た。片手にはレジ袋がある。中に、菓子パンやペットボトルのコーヒー、おにぎりなどが入っているようだ。
「戻ったぞー」
「あ、お帰り。もしかして、私の分もある?」
「あるぞ、夕凪の分のお茶とおにぎりならな。パンの方が良いか?」
「……うーん、おにぎりで良いよ。雄介さんはパンの方が良いんでしょ?」
「悪いな、けど。昼飯は夕凪の好きなものを買って来るよ」
私は頷く。雄介はテーブルにレジ袋を置いた。
「んじゃ、食べやすいように梅干しと昆布の佃煮にしといたからさ。お茶はほうじ茶な」
「ありがとう、梅干しと昆布のおにぎりはこっちでも売ってるんだね」
「ああ、普通に売っていたぞ。さ、食べよう」
雄介は早速、コーヒークリーム入りの菓子パンを出す。封を開け、齧り付く。私もレジ袋の中から、おにぎりを出した。包装してあるフィルムから、中身を取り出す。
「いただきます」
まず、梅干しから食べる。朝から、おにぎりはちょっと良い目では見られないが。私は朝食を和風でとる事が多い。前世である
梅干しは本州で食べるのより、ちょっと甘味が強いような気がした。それでも、ほうじ茶で流し込む。昆布のおにぎりも同様だ。
「ごちそうさま」
「うん、朝飯は俺も終わった。昼飯はまた、コンビニで買うかな」
「そうしよ、お昼は石垣島の名産のを食べたいし」
「分かった、じゃあ。調査に行こう」
また、頷く。民宿を出たのだった。
昨日と同じように、御嶽に向かう。けど、先に雄介の遠縁らしい宮野さん宅に行った。雄介は通りがかったある地元のご老人に宮野さん宅の道順を尋ねる。
「……あの、
「ん?あんた、見ない顔さね」
「はい、本州の方から来ました」
「ふーん、宮野さんの家に行きたいんか。ぞうーぞ」
「ん?あの?」
「あー、意味分からんか。「行くぞ」って言ったんさあ」
ご老人は呆れ気味に言った。雄介と私は困惑しながらも、付いて行った。
しばらく、歩いたら。ご老人は一件の平屋建てらしきお宅の門前で立ち止まる。
「ここが宮野さん家さね」
「ありがとうございます、えっと。こっちで言ったら、みいふぁいゆーかな?」
「……ちょっとは知っていたか」
ご老人は呟いた。そのまま、無言で行ってしまう。インターホンがあったので私が押してみた。
少し経ってから、玄関口らしき引き戸を開けて中から、初老らしき男性が出て来る。
「お、雄坊さね!」
「はい、久しぶりです。宮野のおじさん」
「大きくなったさね、もう幾つになった?」
「二十歳は過ぎましたよ」
「お〜、そうかあ。雄坊と会うのは十年ぶりだ!そりゃあ、大きくもなるな!」
ひとしきり、再会を喜び合う宮野さんらしき男性と雄介に嬉しくなった。
「……ん?それはそうと、雄坊。隣にいる女の子は誰さ?」
「あ、おじさんとは初対面でしたね。俺の彼女で名前を日野枝 夕凪さん。今、大学二年なんです」
「ほう、雄坊の彼女さんか。初めまして、わんが雄坊の親戚で宮野守と言います。よろしくな!」
はっきりと名乗った宮野さんはニカッと笑う。
「はい、よろしくお願いします」
「うん、礼儀正しい子さね。まあ、暑いし。中に入ってくれ」
「ありがとうございます、じゃあ。お邪魔します」
「お邪魔します」
二人で言って、宮野さんのお宅に入らせてもらう。台所らしき部屋には奥様や娘さんがいた。雄介と私は会釈をする。二人も同じようにしてくれたのだった。
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