第3話

 何とか、波野空港に着いたのは午前十時過ぎだった。


 私と雄介、怜に祐也さんは各々が空港の入口を通る。チケットを受付口で見せてから、手続きを済ませた。その後、預け入れ荷物の重量を測り、自身でシール用紙を出すために機械の操作をする。それらを済ませて私は雄介と二人で、スーツケースを預けた。次は乗り場に向かう。

 エスカレーターを上がり、チケットや用紙を機械に読み込ませる。確か、手荷物検査もあるんだったか。検査場らしき場所にたどり着く。

 割と、夏休みだからかお客さんが多い。列ができていたが、結構早めに私達の番が来た。とりあえず、着ていたカーディガンや帽子を脱いだ。それや手荷物を預けたら、金属探知機で検査だった。


「はい、こちらのゲートを通ってください!」

 

 私は頷いて、探知機付きのゲートをくぐる。何にも音は出ない。クリアできたらしい。そうして、手荷物検査も滞りなく済ませる事ができた。雄介も同じような感じらしい。飛行機乗り場に向かうのだった。


 しばらくして、祐也さんや怜がやって来た。二人も何とか、検査をクリアできたようだ。


「……はあ、あたしの荷物ね。重量がギリギリだったよ」


「そうだったんだ」


「職員さんに、「もうちょっと、荷物を入れるのは考えた方が良いですよ」って。厳しく言われたよ」


 私は落ち込む怜の肩を軽く叩く。祐也さんや雄介は苦笑いをしている。こうして、飛行機乗り場でしばらくは過ごした。


 午前十時半過ぎに、乗り場のゲートが開かれた。

 私はチケットなどを持ち、皆で列に並ぶ。機械にかざしてから、帽子を歩きつつも被る。カーディガンも既に羽織っていた。手荷物を肩からさげ、雄介や怜、祐也さんと四人で通路を通った。飛行機の入口から、客席の方に入る。チケットを見ながら、自身の座席を探す。


「あ、ここだね」


「ああ、俺は隣だな」


 私が先に窓側の座席に腰掛けた。手荷物は前の座席の下に置く。雄介や怜達も同じようにする。隣に雄介、通路を挟んだ向こうの座席には怜、祐也さんがいた。私はシートベルトを締めると手荷物のバッグに入っていたスマホの電源を切る。

 オフにしてから、再びバッグに戻す。皆も同じくだが。

 こうして、またしばらくは窓の景色を見たり、喋ったりして時間を潰した。


 飛行機の入口が閉ざされ、座席がある中でアナウンスが掛かる。最初はキャビンアテンダントの女性が、次は機長さんらしき男性の声だ。


『……皆様、快適な空の旅を過ごしてください』


 そう、締めくくってアナウンスは終わった。途端に、飛行機が動き出す。地響きやガーッと飛行場を回る音がする。

 その後、加速を付けるために飛行場は前方に凄いスピードで走り始めた。体に重圧がかなり、掛かる。飛行場を離れた瞬間、一時的に浮遊感を感じた。ふわりとした不思議な感覚だが。


『只今、離陸しました』


 また、アナウンスが掛かり、やっと飛行機が上空を飛んでいるのが分かった。窓から外を見たら、青い空に白い雲がどこまでも続く風景が広がっている。昔の前世である木綿乃ゆうのでも、見られなかったものだ。しばらく、見入っていた。


 スマホが触れないから、怜や祐也さんは退屈そうにしている。雄介は普通にしているが。


「なあ、夕凪」


「何?雄介さん」


「石垣島に着いたら、ホテルではなく。民宿に泊まるからな」


「分かった、怜や祐也さんはどうするの?」


「そうだな、二人には近くのホテルで泊まってもらうようには伝えといたが」


 私は頷いた。雄介が言うには、二人には民宿に近い安めのホテルに滞在してもらうらしい。まあ、それが妥当か。


「とりあえず、一日目は俺と夕凪で聞き込み、怜や祐也君とは別行動だ。二人にも別ルートで聞き込みをやってもらう手筈だな」


「成程、それで二人にも来てもらったのね」


「そう、怜もアレらが見えるしな。祐也君も俺や夕凪程ではないが、見えると言っていたし」


 雄介が言って、やっと私も納得ができた。何故、怜はいいとしても祐也さんが一緒なのか?疑問が解けた。再度、頷く。私は瞼を閉じたのだった。


 まだ、飛行機は飛んでいる。瞼を開けると雄介はうたた寝をしていた。怜や祐也さんもだ。波野空港から、石垣空港までは片道で五時間くらいは掛かるとか。私は黙って静かに、窓から景色を眺めた。やはり、雲や空が続く。けど、下に目を向けた。海の青に陸地の緑や茶色が視界に入る。また、小さいけど自動車や建物もあった。面白くなって見入る。いつまでも飽きない。まあ、私自身は飛行機に乗るのがこれで四回目だが。やはり、いつ見ても慣れない。が、これが楽しいから、秘かに乗るのが苦痛にはならなかった。石垣空港に着くまでは静かに、過ごしたのだった。

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