第2話

 翌日、私は大学の長い夏休みを使い、月華様や雄介、嵐月様に遠縁の親戚のれいさん、さらに彼氏であるらしい祐也さんとで旅行に行った。


 私は悪霊退治やバイトを頑張り、お金をせっせと貯めてきたが。もちろん、雄介や怜さん、祐也さんもだ。ちなみに、私と祐也さんは他人だが。雄介と怜さんは再従兄弟はとこ同士になる。まあ、嵐月様と月華様も兄妹ではあるが。

 合計して、六名で最寄り駅に向かう。行き先は沖縄県にある石垣島だ。最寄り駅の新幹線に乗り、空港を目指す。

 日程は六泊七日だ。おおよそ、一週間は滞在する事になっていた。


「……ねえ、夕凪ちゃん」


「何?怜さん」


「あたしの事は呼び捨てで構わないよ」


 私は苦笑いしながら、頷いた。


「分かった、同い年ではあるからね。じゃあ、怜」


「なあに?」


「私の事も呼び捨てにして構わないからね。それより、荷物を持とうか?」


「あ、いいよ。私でも何とか持てるからさ」


「……けど、そんなに大きなスーツケースだと。持ち歩くの、大変じゃないかな?」


 そう、怜さんもとい、怜は大きくて重たそうな青のスーツケースにボストンバッグ、ショルダーバッグとかなりの荷物量で来ていた。彼氏の祐也さんも呆れたような心配そうな表情だ。


「ごめん、俺からもだいぶ言ったんだけどな」


「私は気にしてないよ、けど。飛行機に乗せてもらえるかな」


「うん、夕凪や祐也君の言う通りだ。怜、お前な。持ってき過ぎなんだよ」


「……いーじゃない、あたしにしたらさ。夕凪が困らないか、心配でもあったの」


「……言ってる事は一人前なんだがな、夕凪を盾に使うな。それの中身、ほとんどお前の服とかお菓子だろ!」


 雄介がぴしりと言ったら、怜は気まずそうに黙った。ちなみに、まだ新幹線は来ていない。

 私達は駅にあるホームの六番乗り場にいた。私や祐也さん、龍の姿の嵐月様達は苦笑いする。


「全く、昔からさ。怜は旅行に行くたびにお菓子を大量に持って行くから、ご両親がすげえ心配してたんだぞ。お腹を壊さないか、他の人達に迷惑を掛けやしないかってな」


「そんな、昔の話をされても……」


「いいか、今回は大目に見てやる。けど、二度目はないからな!」


 雄介が言うと、怜は押し黙った。同時にホームにアナウンスや音楽が流れる。


『六番乗り場に、新幹線が到着します。黄色い線より、外には出ないでください』


 女性の声で案内があり、次に音楽が鳴った。私や怜、雄介に祐也さんは黄色い線の中にまで下がった。

 しばらくして、新幹線が到着する。私達がいた乗り場の辺りにも、出入り口の扉が開く。急いで私と怜、祐也さん達も乗り込んだ。荷物が多いから、一苦労ではあるが。何とか、入り込むと。ブザー音が鳴り、扉が閉まった。出発したのだった。


 波野はの空港までは片道で二時間程だが。飛行機に間に合うかなと、心配ではあった。


「……夕凪、沖縄県に行く目的は分かってるよな?」


「うん、御嶽うたきの近辺で女性の幽霊の目撃情報の真偽を確かめに行くんだよね」


「そうだ、調査期間は一週間。僅かな間しかいられないから、そのつもりでいてくれよ」


「はい」


「よし、今回行くのは石垣島でも有名なミノサ御嶽だ。けど、石垣島では御嶽への出入りは基本的に禁止されている。地元の方の許可が必要なんだ」


 そう、新幹線の座席にて雄介が説明した。私や怜、祐也さんは黙り込む。


「……まあ、今回は俺の親父が地元の方にアポイントメントを取ってくれてな。何でも、親父のいとこさんが石垣島に住んでいるらしい。そのツテのおかげで特別に入らせてもらえる事になった」


「ふうん、雄兄ちゃんのツテね。本当に大丈夫なの?」


「な、お前はすぐそう言うよな。ちゃんとしたツテだぞ」


 また、雄介と怜が喧嘩しだした。私は苦笑いしながら、諌めるのだった。


 やっと、波野空港の最寄り駅に着く。新幹線を降りて速歩きでバス停に向かう。結局、途中で怜が音を上げた。仕方なく、雄介と祐也さんがスーツケースとボストンバッグを手分けして持ってくれる。二人は「何が入ってるんだよ?!」とツッコミながらもバス停へと行った。私と怜も付いて行く。

 ちなみに、私は普通に小さめのスーツケースにショルダーバッグだけだが。

 何とか、丁度良くバスが来た。私達四人は乗り込む。波野空港を目指したのだった。

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