白花(はくか)の巫女と銀月の龍
入江 涼子
第1話
私が龍の
現在、私は大学二年で。月華様も初めて会った時より、大人びている。彼女と出会ったのはまだ、高三の時だ。季節は真夏の八月。月華様は当時、悪霊退治の先輩で後に彼氏になる光村雄介や兄で同じく龍の嵐月様と一緒にいた。
雄介は二十歳くらいで嵐月様は二十代後半、月華様も十五歳くらいだったろうか。雄介は嵐月様と相対し、苦戦していた。月華様が間に入り、嵐月様と戦おうとした際に。私は助太刀した。嵐月様の穢れを払い、呪いも解いた。何とか、彼は正気を取り戻して事なきを得る。
そこから、私は雄介達と一緒に行動するようになった。
私は初めて会った時の雄介の年齢になっている。また、真夏の八月に月華様のお父様の優月様が祭られた五和神社にて、悪霊退治をしていた。
「……夕凪さん、今です!」
「はい、かの者を清め給う、払い給う!」
月華様が双剣で若い女の悪霊に斬りかかる。彼女が隙を作ってくれたので、私は印を切った。同時に、祝詞を唱える。肩からさげたショルダーバッグから、お札を取り出す。左手の人差し指と中指で挟み込み、右手の指でお札の力を弾き飛ばした。
『キャアアー!!』
「くっ、やっぱり。しぶといな!」
「油断してはダメですよ!」
悪霊が悲鳴を上げる中、私は手間取ってしまう。月華様の鋭いげきが飛んだ。
「……やっぱり、夕凪だけだと危なっかしいな」
「だな、雄介」
刀身が透けた太刀を手に、一人の涼しげな美青年が現れる。金の艷やかな髪に透明感がある琥珀の瞳が美しい美男も一緒だ。
「雄介さん、嵐月様!?」
「よう、夕凪。俺達も一緒にやるぞ!嵐月!!」
「ああ、月華に夕凪さん。手伝わせてもらうぞ!」
私が声を上げると、美青年もとい、雄介と美男こと嵐月様が武器を手に悪霊へと駆け寄った。
「日の神、アステラス神に乞い願う。かの者を払い給う!」
『な?!』
雄介が祝詞を唱えると太刀の刀身が金色にまばゆく輝く。それで、悪霊の喉元に斬りつけた。そこから、ちょっとずつ女の悪霊は透明になる。
『……あ、嫌!!消えるのは嫌よ!!』
「観念しな、お姉さん。あんた、かなりの人々に呪いを掛けただろ」
『……』
「さ、安らかに眠ってくれ」
女の悪霊な瞼を閉じて静かに消え去る。辺りには、真っ白な光や淡い青の燐光が満ちた。
『あたし、生まれ変わりたい』
「成仏したらできるよ、一旦はさようならだな」
雄介が言うと、燐光は消えた。静けさが帰って来たのだった。
「夕凪、月華ちゃんとだけで悪霊退治はやめとけって言わなかったか?」
「……言われたけど」
「せめて、お姉さんの八重子さんと一緒に行けとも言ったよな」
「言われました、はい」
「……なーんで、月華ちゃんも注意しないかな?!夕凪が無茶するの、分かってたはずだろ!」
現在、絶賛お説教中だ。私が雄介にだが。彼はかなり、心配性で過保護だ。私も月華様と二人だけで悪霊退治はできるんだけど。まあ、両親や姉からも退治をする時は雄介と一緒にするようには厳重に注意はされていた。
「分かった、私が悪かったよ。ごめんって」
「本当に、反省してんのか?」
「してるよ」
「なら、いいんだがな」
「今後はちゃんと、気をつけます」
私がはっきり言うと、雄介は右側の肩に手を置く。大きな温かい手だ。
「夕凪、今のお前は髪も長いし。服装も女らしくなったからさ、男の悪霊とかに目をつけられやすい。だから、余計に心配なんだよ」
「……そうだったね」
「じゃあ、帰るとすっか。送ってくよ」
私は頷いた。お説教は終わり、雄介は優しく笑う。仲良く手を繋ぎながら、家路を急いだ。
帰宅すると、両親や姉が出迎えた。
「おかえり、夕凪に月華様」
「ただいま!」
「こんばんは」
「あ、雄介さん。ありがとうございます、送ってきてくれたのね!」
「はい、夕凪さんを五和神社で見かけましたから」
雄介が私を一瞥してから、言った。両親は微笑ましげに見る。
「雄介さん、夕凪を送ってくれた事には礼を言うよ。けど、変な事はしていないだろうな?」
「していませんよ、じゃあ。帰ります」
「う、うん。また、明日だね!バイバイ、雄介さん!」
「バイバイ、夕凪」
手を振り合った。雄介さんは玄関の引き戸を閉めて帰って行く。しばらくは見送ったのだった。
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