第6話 これからの願い

試験から少し経ち、リフィアと入学する日程まで待っていた。

大体の準備は済ませているので魔法の練習やこれからの進路などを考えていた。

今は、リフィアの寮生活のためにも日常生活の家事などを教えている生活が続いている。

そんな時、洗濯をしていると、不意にリフィアが足をソワソワさせているのが見えた。

(そういえば、リフィアの足ってあんまり自由に戻せていないよな)

リフィアにかけている人の足に変化させている魔法は足が水に濡れたら元に戻る性質をしているので、お風呂に入ると元に戻る。

しかし、お風呂といってもヒレを自由に使えるような広さはない。

そんな生活でストレスを溜め込まないのだろうか?

「なあ、リフィア」

「はい?なんでしょう、さっきから私の足ちらっと見ていましたけど、ソワソワしているのがおかしかったですか?」

「いや、うちに来た時からあんまり足を元に戻していないなって思ってさ、大丈夫かなって」

そういうと少し申し訳なさそうに目を逸らした。

「はい、人の足には慣れましたけど、自分のヒレもよかったなって思う時もありますよ」

そう言ってリフィアは自分の足を撫でる。

「それもそうだよな」

魔法学校に入学するとバレないように人の目を気にしてさらに足を元に戻しにくくなってしまう。

それでリフィアのストレスを溜めさせるのもよくない。

「なら、今から時間あるし海に向かわないか?そこで入学前に思いっきり泳がない?」

そう持ちかけると、リフィアの青い目がパァーッと明るくなった。

「良いんですか!ありがとうございます!」

「なら、洗濯物を終わらせてから行こうか」

「はい!」

残っていた洗濯物を片付け、僕らは準備をして初めに出会った海へと向かった。


海に着くと意外にも移動に時間が掛かり空が赤く染まり始めていた。

「久しぶりですね、ここに来るのも」

そう言いながら、リフィアは水に足をつける

するとバシャンと言う音と共に海の中に倒れ込んだ。

「リフィア!大丈夫か?」

心配して駆け寄るがリフィアは久しぶりにヒレに戻ってやっぱり開放感があるようだ。

来る時まで来ていた服も脱ぎ、初めて会った時の姿に戻った。


「じゃあ、泳ぎましょう、セント!」

そう言ってひと足先に海に潜る。

「トゥレイ」《水中遊泳》

僕も魔法をかけ、すぐにその後を追う。

すると、珊瑚の周りなどをヒレを自由に動かし、白銀の髪をたなびかせながら優雅に泳いでいた。

その姿はとても自由で美しい物に思えた。

「セント!着いてきて!」

僕がやっとのことで追いつくと、手を握られ少し深いところに案内される。

少し、暗くなってくると、目の前にはキラキラと光る岩場が現れた。

それはいつも見ている星空のように輝いているように見える。

「リフィアこれは?」

「これは、光水貝っていうんだ。

この子達は海の中にある魔力を食べて水を綺麗にしているの。

この子達がいるから水はこんなに綺麗に保たれているんだよ」

そう言いながら、一匹の貝を手に取るとリフィアは手をかざした。

すると、貝はさらに光を強めあたりを照らした。

周りには普段は絶対に見れないような海の中の美しい景色が広がっている。

僕がその綺麗さに言葉を失っていると

リフィアは語りかける。

「私たちはこの海が好き、でも、最近は人も多くなっているから、ここ人に知られてしまったら仲間は離れなくちゃいけないの、だから私が安全な種族なだけだってことを証明したいの!」

その言葉を話す時の瞳は海の青よりも輝きを持っているように思えた。

(リフィアはこんな壮大なことを叶えようと努力してる、僕には何ができるんだ)

輝いているリフィアを見て何も目標を持たないまま学校に入った自分を少し下に見てしまう。

水面に上がると空は黒くなっており星が輝いていた。

「綺麗、、」

リフィアは星空を、みてため息を漏らしていた。

「なあ、リフィアこれから、君にとって理不尽なことだって起こるかもしれない、それでも少しでも、僕は助けになれれば良いと思ってる

だから、これからもよろしく、、」

そう告げると、リフィアは少し驚いたような、面白かったのか、なんとも言えない表情になっていた。

「なんか、告白みたいでしたね、急でしたし」

「ごめんな、タイミングも悪いし。こんな言葉しか思いつかなくて」

「いえいえ、そもそも、私のために付き合って貰っているんですから、お願いをしないといけないのは私の方です、じゃあ私からも」

そういうと、リフィアは僕の手を包み込むように握ると軽く唇に触れさせた。

「これから、あなたに幸福が訪れますように

そして、私の願いを一緒に追ってくれてありがとう、セント」

リフィアは顔をあげてニコッと微笑んでくれる。

そう言われるだけで心が軽くなった気がした。

(さっきはリフィアの目標を手助けすると考えていたが、一緒に叶えるか、、そんな考え方も良いな)

時が少し止まったように感じたが、星空は動き続けている。

僕らの未来もこんなふうに輝いて動き続けると良いな。

そんな願いも込めながら僕はリフィアの手の中で強く握った。




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