4-2
「ん…………」
少しずつ、目を開ける。
久しく開けていなかった目には、刺激の強すぎる光と見覚えのない天井を見つめる。
(本当に生きている……)
しかし、体は痛みが激しく、首ひとつ動かせない様だった。
「ようやく目覚めたか」
頭上から聞き覚えのある声が聞こえた。
(この声…鬼々さん……?なぜ彼が)
「まあ一週間も眠っておったんじゃ、声も出ないであろう。そうじゃ、宝が目覚めたらこのなーすこーる?とやらを使えと言われておったな」
そう言って、鬼々さんがナースコールを押し、看護師さんを呼ぶ。
『先生!館山さんが……!』
看護師さんが慌てて担当医を呼びに走った。
「宝が起きたなら後は任せるぞ」
「宝」
私の頬を誰かが触る。
この手の感触を、声を、私は知っている。
その声の主は私の顔を覗き見る。
「おはよう、宝」
ぼろぼろと涙を流す彼は、私がずっとずっと会いたかった、彼だった。
「よかった、よかった……!すぐ先生来るからね、待っててね」
その言葉の後、すぐに担当医の先生が来られて、私は一ヶ月半ほど治療とリハビリのために入院する事を告げられた。
その間鬼々さんやみのるも私を見舞いに来てくれた。
みのるに関しては、退院したらお説教だと宣言され、少し嫌な気持ちにもなったが、致し方ないと半ば諦める事にした。
そして意外にも草間先生まで来てくれた。
「意外とは失礼ですね」
「すいません、来夢くんが連絡を?」
「そうですよ、話を聞いた時は驚きましたが」
この言い方、恐らく何があったかを理解しているような感じだった。
「全く、低級悪魔とはいえ、やる事が大胆すぎるんですよ貴方は」
「ご存知、だったんですね」
「知らないとでもお思いで?」
さすが草間先生。
この人には敵わないな、と改めて思わされた。
「貴方の事を助けたのは私なんですよ?感謝して欲しいくらいだ。チッ、あの吸血鬼何も言ってないのか」
草間先生はため息をつく。
「それは…ありがとうございます」
「先に言っておきますが、貴方は誰も殺してはいませんよ、死にかけでしたけどね」
あの晩、私は確かにあの場に居た何人か、特に日野森センパイを半殺しにしていたらしい。
ただ私自身も体力が持たず、殺すまでは至って居なかったとの事だった。
「特にその日野森とかいう男には、かなりキツめに言っておきましたからね。まあもう貴方に近寄る事はないでしょうが」
「そうでしたか…」
「貴方から接触しても構いませんが、私はもう助けませんよ」
お金を積んでくれるのなら別ですが、と一言付け加えられる。
「ありがとうございます、草間先生。でも私がなんとかしないと。自分の過去は自分でケリをつけます」
「そう言うと思いましたよ。動くのは体が万全になってからにしてくださいね」
私のベッドの上に一枚の封筒が置かれる。
「これは今現在の彼の居場所です。どうやらご自宅にはお戻りになってないようですが。まあ後はお任せしますよ、お体お大事に」
草間先生は私の部屋を後にした。
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