3-6

*レイプ描写あり



ただ、今の俺にはその目も、優しさも全てが、うっとおしいとしか思わなかった。


「………だ」

「なに?」

「俺は、普通に生きてるお前が嫌いだ。ずっとずっと思ってた。二度と俺に近づくな」


妬み、嫉妬、羨望。

叶いもしない願い。


「なんでぇ……にーちゃんはにーちゃんだよ、行かないでよぉ!俺いい子にするから」


まだ年端も行かない子供のくせに、何を頑張って涙を堪えているんだ。

そういうのすら、イライラする。


「そういう所も嫌いなんだよ。俺を哀れんでるんだろ?」

「ちが………違うよ兄ちゃんっ!!」

「じゃあな」

「兄ちゃん!俺いい子にするから!!………!!」


これが俺と家族との、大好きだった弟との最後の会話だった。



***



最悪な夢を見た。

あの日、自分が家族を捨てた夢。

そのお陰だろうか、体はだるいし頭が重い。

おでこに手を当てると、明らかに熱があった。


(最悪…)


ご飯を食べる元気などないし、熱を測る為に動く体力もない。

誰かが私を殺してくれたら、どれ程楽だろう。

もう楽になりたい。

そんな事を考えていたら、電話が鳴った。

相手はもちろん、日野森センパイだ。

出たくなかったが、出ないと次会った時何をされるか分かったもんじゃない。


「はい……」

『今日はココな、LINE送ったから』

「あの、センパイ、今日は……」


私の声に、体調が悪いと察したのだろうが、この人には関係のない事だった。


『じゃあお前ん家行くわ』

「わ、分かりました、行く、行きますから……」


ここだけは、この家だけは、死守しなければ。

私を私だと言ってくれる場所。

先生と、そして来夢くんと過ごした、大切な場所。

ここを汚される訳にはいかない。

私は重い体をなんとか叩き起して、指定された場所へと向かった。


「おっせーぞ」

「ゲホ、すいま、せ……ッ」


向かっている途中から、咳が止まらなかった。

今は寒気もする。


「うつしたら殺すぞ」

「はい……ッ」

「えー大丈夫なのコレ」


コレ、とは私の事だ。

私は今、全裸で、公園の公衆便所に縛り付けられている。

声を出すなと言われ、猿ぐつわをされ、詰まった鼻で息をするのが精一杯だった。


「熱あるらしいからうつされんなよ、あ、でも締まりはいいぜ」

「えーやだよ俺、そんなのうつされたくない」

「じゃあ今すぐ金返せ」

「……わかったよ」

「………… ッ!ん゛ん゛~~~ッ!ふぐぅぅぅっ!」

「ほらもっとちゃんと締めて」


ぎゅううっと乳首を抓られる。


「ん゛ん゛ん゛~~っ!!」

「そうそう、そろそろ出すから受け止めてな」


今日は中々、快感に溺れられない。

いつもならもっと早く、快感へシフトチェンジ出来るのに。

今日、あんな夢を見たから?

熱があるから?

日野森センパイに家に来ると脅されたから?


(早く、終わって………)


「はー出た出た」


ずるり、と私の膣から、男のモノが抜ける。


(終わった……)


終わった事に気が抜けたのか、意識が朦朧としてくる。


(駄目だ、起きないと、また、殴られる………)


案の定、殴られる。

しかし私は意識を手放しかけていて、まともに動くことなど出来なかった。

大丈夫か、と先程まで私に挿入していた男が私に声をかけてくるが、指一本も動かせないし、声も出ない。


「何してんだとっとと起きろ!!」


苛立ちを隠せない日野森センパイは、更に私へ暴力を振るう。

しかし、それにも反応出来るわけもなく。


「………………」

「うーわかわいそ」


(ようやく、死ねる……)


遂に私は意識を手放した。



***



兄さんが救急車で病院に運ばれた、と連絡が来たのは深夜3時頃だった。

慌てて病院へ向かうと、そこにはたくさんのチューブに繋がれた兄さんの姿があった。

お医者さんの説明によると、暴力を振るわれただけでなく、レイプされた痕跡があるとの事だった。

熱もあり、栄養失調に陥っているとの事で、少しでも生存率を上げるための処置をして下さったそうだ。


「あやつは起きたか?」

「まだ…………」

「そうか………みのる、明日も仕事じゃろう。早う帰って少しでも休め」

「無理だよそんなの」

「両親も呼んでおるんじゃろう?」


鬼々さんは、兄さんと両親の仲が良くない事を知らない。

きっと兄さんは両親を呼びたくないだろうから、事が終われば連絡するつもりだ、と伝えると鬼々さんはすまん、と謝った。


「そういえば、来夢くんと連絡ついた?」

「今頃こっちに向かっておるじゃろう」


瞬間移動的なのが出来るって言ってなかったかな、と思ったが、兄さんの事と合わせて何かあったのかもしれない。


「みのる!!」


数分後、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

が、俺の目の前には小学生くらいの少年がいた。


「みのる!宝は!?無事なの!?」

「え…っと、来夢くん?」

「そうだよ!!俺!!来夢だよ!!それより宝は!?」


すると俺の背後から鬼々さんがやってきて、来夢くんの頬へ思いっきり平手打ちをした。


「痛ッ……」

「貴様はなにをしておる」

「…………」

「痛いと嘆くのは貴様ではなかろう。見ろ、あの宝の姿を。アレを見てどう思う」


アレ、と言い鬼々さんが指さしたのは、兄さんの事だと言うのは直ぐに分かった。


「宝………」


来夢くんがその場で崩れる。


「やだ、宝……やだ死なないで、宝………お願い……」

「幸い死んではおらん、そうだったな?」


鬼々さんが俺に話を振る。


「はい、栄養失調と体調不良、それと………誰かに暴行を受けたみたいで…。かなり衰弱しているみたい……」


正直言うと、来夢くんが居たのに何故こんな事になったのか、俺には分からなかった。

ただ来夢くんの反応を見る限り、兄さんとは一緒では無かったのだろう。


「最初はかなり危なかったみたいだけど、峠は超えたみたい。あとは目覚めるのを待つだけって感じかな」

「そっか……」


俺のその一言に、来夢くんはホッとしたのが分かった。

が、鬼々さんはそんな来夢くんに、納得するはずもなく。


「みのる、コレは連れて帰れ。宝の事はしばらくわしが見る」

「はあ?兄さん何言って…」

「こんなになるまで宝を放っておいた奴に、今の宝を見る資格などない、帰れ」


そう言い放って、鬼々さんのチカラで俺と来夢くんは俺の家に強制送還された。

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