第3話

会社の休憩時間。


「はーい! 召し上がれ。」


煎餅の差し入れを持ってきた。人気店だ。


「典子、ご馳走様! 」


「みんな好きな味選んでねー。」


塩味...醤油味...次々とみんな手に取る。


カレー味...なぜ余る...?


「カレー味多めだよー。余ってるよー。」


「なんでカレー味多めなの? 煎餅って言ったら、やっぱり王道の醤油味か塩味でしょ。」


「王道ばかりの人生じゃ、つまらないじゃない! 冒険しようよ~みんな! 」


「いやー俺カレーは好きなんだけど、カレー味の物は苦手なんだよなぁ。」


「それ分かる! 」


「いやいや分からない! せっかくだからカレー味でしょ! 」


みんな楽しそうに、わいわい休憩時間を過ごして

た。


気になるのは佐々木君だ…


一人席を外してどこかに行ってしまった。


みんな気にしてる。


佐々木君は失恋したのだ。その事は社内で知らない者は居ない。


受け付けの桜井さんと営業の山田先輩が婚約したのだ。

まさに美男美女。



はぁ……佐々木君立ち直れるといいな。


どこに行ったのかな? 佐々木君を探した。


喫煙所に居た。


「佐々木君。選んで! 」


私は煎餅の箱を差し出した。


佐々木は迷わずカレー味を取った。


「佐々木君! 君センスある! 」


「え? センス? 」


佐々木の顔に笑顔が戻った。


「みんな醤油味と塩味ばかり選ぶんだよー。」


「あぁ。普通って失敗しないから。」


「失敗したっていい! 普通ゃなくていいじゃない!


「ですかねっ。」


「俺が失恋したって、みんな知ってるんですね。」


「あぁ...佐々木君 分かりやすいから。素直でさ。だからこそ、みんな心配してるのよ。」


「そっか。分かりやすいんだ俺。」


「でも俺、王道じゃないですよ。」



「俺が好きだったの桜井さんじゃないですよ。」


「え?」


「山田先輩です。」


「そうだったの?ごめん。私勘違いしてた。」


笑う佐々木君。


「なんで笑うの?」


「普通もっとびっくりするでしょ!」


「そう? 」


「さすが王道をいかない典子さん。」


「何それ。まぁ良い男なんて星の数ほど居るわよ!」


「ですね。あっ俺カレー味の物好きですよ。」


「さすが佐々木君だ! 」


好きな物、苦手なものは人によって多々ある。

それは私達が思っている以上だ。


佐々木君の笑顔がカレー味の煎餅をより一層美味しく感じさせてくれた。


今日もご馳走様でした!




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