第2話

金曜の夜。


「今週も仕事頑張ったー!」

コタツでビールを飲みながらダラダラ。


トイレに立った瞬間ふと鏡に映る自分を見て足が止まる。

「ん?」

「ん?ん?ん?」

「太った?」


その後、体重計とにらめっこ。乗るか?乗らないか?


「ビール飲んだしなぁ…水分が……」

現実を受け止める勇気がない。


よし!明日から運動しよう。少し痩せてから体重計に乗る事にしよう。



翌日


「よーし歩くぞ! 」

早朝からウォーキングの予定だったが、寝坊してお昼なった……仕方がない。


お昼ご飯はプロテイン。


プロテインを飲んで、いざ出発!


「寒いなぁー。プロテインしか飲んでない……餓死しそう……」


「商店街をぬけて……少し遠い公園まで行こう!」


この商店街とも長い付き合いだよなぁ。


あっ。喫茶店アポロ。最近行ってないなぁ。

休日は家でゴロゴロしてばかりだし。



商店街を抜け、急ぎ足で公園まで。


公園に着いた。

広い公園を一周走り、階段をダッシュで登ったり、おりたり。


「はぁ……もう1時間……もう十分だな今日は。」

帰ろう。


家まで遠いなぁ。お腹すいた。喉乾いた。


「よし……帰るぞ……」


疲れ切った私……


やっと商店街に入った。


喫茶店アポロだー。休憩したいなぁ。


「コーヒー飲みたいなぁ…」

どこまでも自分に甘い私。


「いらっしゃいませ。あら典子ちゃん久しぶり。」

「お久しぶりです。コーヒーお願いします!」


「コーヒーだけ?」


「コーヒーだけ。お願いします!」


「はいよっ!」


はぁー落ち着く……


このレトロな雰囲気。ストーブにはオレンジの火が灯る。ボロボロな椅子。鳩時計……


今日はお店空いてるなぁ。


「はい。コーヒーお待たせ。」

「ありがとう。おばちゃん。」


「典子ちゃんは、よくカレーを食べに来てくれてたね。」


それは言わないでくれーー!


そう。ここ喫茶店アポロはカレーが美味しいのだ。


「具がない!」と思ったら大間違い!

ルーの中には細かく刻んだ玉ねぎの旨みが詰まっている。

そして牛ひき肉のさり気ない旨み。

真っ赤な福神漬。


「カレー食べたいけど、今ダイエット中なんだー。」


「ダイエットなんかあんた! 女はふくよかじゃなきゃモテないのよぉ。」


「そうなの!?」


「せっかくだからカレー食べていかないね?」


「うーん……でも……いただきます!」


負けた……


「はい。カレーどうぞ。」

「久しぶり!美味しそう!」

もうダイエットなんかいいや!


はぁーこの匂い……玉ねぎが溶け込んでるサラサラ系のカレー。


変わらないなぁ。


先代おじちゃんの味をずーっと引き継いでるんだよね。

おばちゃん、ありがとう。おばちゃんに感謝。 福神漬けと一緒にルーとお米を口に運ぶ。 あぁ幸せだぁ。


ダイエットは失敗したけど、今日はいい日だ。


「典子ちゃん今日はありがとうね。」


「ん?」


「今日はあの人の命日なんよ。でもお客さん少なくてね……カレーたくさん作ってしまったわ。」


そうだったんだ……


「今日来て良かったわ。おばちゃん。美味しかった。」


「ありがとう典子ちゃん。」


「またカレー食べに来るから、いっぱい作ってよ!」


「はいよっ!」


おばちゃんの笑顔が可愛いかった。


アポロのカレーには夫婦の思い出、そして常連客の思い出が詰まっている。


今日喫茶店アポロでカレーを食べて、本当に良かったと思った。


「ご馳走様でした!」









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