第2話 霊界の者、神楽雪との出会い

 瞬は目の前に広がる異次元の裂け目に圧倒されながらも、神楽雪の言葉に耳を傾けていた。彼の周囲では、空気が揺らめき、霊的なエネルギーが漂っている。雪の冷静な態度とは対照的に、瞬の心臓は激しく鼓動し、手足が震えていた。


「この光景が現実だとは信じられないけれど、君が言うように霊界が危機に瀕しているのなら……」

 瞬は言葉を詰まらせながらも、恐る恐る問いかけた。


「一体どうすればいいの?」


 神楽雪は微笑み、静かに手を差し出した。その手には、まるで霊的なオーラが漂っているようで、瞬にとっては神聖な輝きを放っているように見えた。


「これから霊界のことを教えます」


 雪は優しく言った。


「まずは、霊界へと案内しますから、ついてきてください。」


 瞬は雪の手を見つめ、その温かさを感じながら少し躊躇したが、結局その手を取ることに決めた。雪の手は意外にも柔らかく、彼の手を優しく包み込んでいた。瞬はその手に引かれるようにして、光の裂け目を通り抜けた。


 通り抜けると、瞬はまるで異次元の風景に足を踏み入れたような感覚に襲われた。彼の目の前には、広大な霊界が広がっていた。霊界は、空が深い紫色に染まり、地面には不思議な光を放つ植物が生い茂っている世界だった。遠くには霊的な建造物や神殿のようなものも見え、現実とはまったく異なる風景が広がっていた。


「これが……。 霊界?」


 瞬は驚きの声を漏らしながら、周囲の景色を見渡した。ここは現実世界とはまったく異なる、神秘的で幻想的な場所だった。


 雪は微笑んで答えた。


 「霊界は、我々が生きる世界の背後に存在する、霊的な存在や魂たちが住まう場所です。ここには、物質世界と霊的世界が交わる重要な場所がいくつもあります」


 雪の説明を受けながら、瞬は霊界の不思議な雰囲気に圧倒されつつも、彼女の言葉に耳を傾けた。雪が歩き出すと、瞬はその後を追いながら、霊界の様々な景色を見て回った。


「ここには、霊的な存在が多く住んでいます」


 雪は説明を続けた。


「霊界には、守護者たちや霊的な生物、そして魂が集まる場所があります。私たちは、この霊界の秩序を保つために働いています」


 雪の言葉に、瞬は興味を持ちながらも混乱していた。霊界に関する情報は初めて聞くものであり、彼の頭の中にはまだ整理できない事柄が多かった。突然、自分が霊界の守護者として選ばれたことが、どれほど大きな意味を持つのかを理解するには、まだ時間がかかりそうだった。


「それで、僕にはどんな役割があるの?」


 雪は立ち止まり、瞬に向かって真剣な眼差しを向けた。


「あなたには、霊界の秩序を守るための使命があります。具体的には、霊界に現れた脅威、『使者』に立ち向かう役割です。彼らは霊界の平和を脅かし、力を乱す存在です」


 瞬はその言葉に深い衝撃を受けた。「『使者』。一体どんな存在なの?」


「『使者』は、霊界のバランスを崩し、混乱をもたらす暗黒の力を持った者たちです。彼らの目的は、霊界を支配し、我々の世界を破壊することです。あなたの力を借りて、この脅威に立ち向かわなければなりません」


 雪の説明を聞きながら、瞬は自分の役割の重大さに気づき始めた。霊界の平和を守るという責任は、彼にとってこれまで経験したことのない重いものであったが、彼は決意を固めた。


「わかった。僕にできる限りのことをするよ」


 瞬は目を見開き、力強く答えた。


「でも、どうやってその力を使えばいいのか、全く分からないんだ」


「その点については、これから少しずつ教えていきます」


 雪は安心させるように微笑んだ。


「まずは、霊界での基本的な知識と、あなたが持っている霊的な力について学ぶ必要があります」


 その後、雪は瞬に霊界の基本的なルールや、霊的な力の使い方について説明をするべく、霊界の中心部にある巨大な図書館に向かった。


 雪は大きな書架が並ぶ空間を指さした。


「この場所では、霊界の過去や、守護者たちがどのように平和を守ってきたのかを学ぶことができます。」


 瞬はその図書館の広大さに圧倒されながらも、資料を手に取って読み始めた。霊界の歴史やその法則、さらには守護者としての心得など、多くの情報が彼を待っていた。雪の指導の下、瞬は霊界の奥深い秘密と、自分がこれから直面するであろう課題に対する理解を深めていった。


 その日は長い一日となり、瞬は疲れ果てたが、同時に新たな使命に対する覚悟を固めることができた。霊界の守護者としての役割がどれほど重要で、どれほど難しいものであるかを理解しながら、彼はこれからの試練に立ち向かう準備を整えた。


「あなたの力を信じています。」


瞬はその言葉を胸に刻みながら、霊界の守護者としての新しい人生を迎える決意を新たにした。彼の冒険は、まだ始まったばかりだった。

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