第3話 使者との遭遇

 霊界の学び舎から一歩外に出ると、瞬は再び広大な霊界の風景に目を奪われた。紫色に染まる空、奇妙な光を放つ植物、そして霊的な建造物が遠くに浮かぶ景色は、現実世界とは異なる神秘的な雰囲気を漂わせていた。しかし、その美しさとは裏腹に、瞬の心の中には不安と緊張が渦巻いていた。


「今日、最初の実戦訓練を行います」


 神楽雪は冷静な表情で言った。


「私たちは、霊界に現れた使者に対応する訓練を始める必要があります」


瞬はその言葉に驚きと共に覚悟を決めた。


「使者って、どんな存在なんですか?」

「使者は霊界の秩序を乱す存在で、強力な霊的な力を持っています」


 雪は説明を続けた。


「彼らは霊界のエネルギーを吸収し、霊的な世界に混乱をもたらそうとしています。あなたには、その脅威に立ち向かう役割があります」


 その言葉に、瞬は少しだけ緊張を感じながらも、真剣な眼差しを向けた。


「どうやって戦えばいいのか、まだよく分からないんですが……」

「まずは、基本的な防御と攻撃のテクニックを学ぶことから始めましょう」


 雪は優しく微笑みながら言った。


「心配しないで。私がサポートしますから」


 瞬は雪の言葉に励まされ、彼女の後を追って霊界の訓練場へと向かった。訓練場は、霊的なエネルギーが渦巻く広大な空間で、様々な障害物や訓練用のターゲットが配置されていた。雪はその場所で瞬に対して基本的なテクニックを教え始めた。


「まずは、霊的な力を使って防御する方法から学びます」


 雪は手を広げ、霊的なバリアを形成した。


「このバリアを使って、攻撃を防ぐことができます」


 瞬はその方法を見ながら、自分でも試してみることにした。彼は集中し、手を前に出すと、霊的な力を感じ取ろうとした。しかし、最初はうまくいかず、バリアがうまく形成されない。雪は優しく指導しながら、瞬に正しい方法を伝えた。


「力を集中させることが大切です」


雪は穏やかな声でアドバイスした。


「自分の内なる霊的なエネルギーを感じ取ることで、バリアを形成できます」


 瞬は再度試みると、少しずつ霊的なバリアが形成され始めた。彼の手のひらに、微弱な光の膜が現れ、敵の攻撃を防ぐ準備が整った。瞬はその感覚に感動しながらも、まだまだ練習が必要だと感じた。


「次に、攻撃のテクニックを学びます」


雪は次のステップを示しながら言った。


「霊的なエネルギーを集めて、攻撃を行う方法です」


 雪は手を振り上げ、霊的なエネルギーを集めて強力な光線を放った。光線は空中で爆発し、訓練用のターゲットを粉々にする。その威力に、瞬は驚愕した。彼もそのテクニックを身につけるべく、一生懸命に練習を重ねた。


 その日の訓練が終わり、夕暮れが近づいてくると、雪は瞬に対して次の指示を出した。


「今日はこれで終わりです。夜には、霊界に現れるかもしれない使者に備える必要があります」


 瞬は訓練を終えた後の達成感と共に、自分がこれから直面するであろう試練に対する不安を抱えていた。その時、突然、霊界の空が暗くなり、異常な気配が漂い始めた。瞬はその変化に気づき、胸が高鳴った。


「雪さん、何か変な感じがします……」


瞬は不安そうに言った。


「それは……。 使者が現れる兆候かもしれません」


雪は厳しい表情で答えた。


「すぐに行きましょう」


 雪と瞬は急いでその気配の元へと向かうと、霊界の中に暗い影が広がり始めていた。空の色が濃い紫に変わり、霊的なエネルギーが乱れていた。その中心には、異形の存在が浮かんでいた。それが使者だった。


「使者が現れました」


 雪は身に着けていた小道具に向かって言った。恐らくこの世界での通信機器か何かだろう。そして瞬にキッと目くばせし、覚悟のほどを確認する。緊張しながらも、決意を固めた。


 雪は瞬に対して、守護のポーズを取るよう指示した。瞬は深呼吸をし、自分の霊的なエネルギーを集中させた。使者は、その強大な力で周囲の霊的なエネルギーを吸収し、暗黒の力を放っていた。瞬はその存在に対抗するために、自らの力を振り絞り、霊的なバリアを展開した。


 使者が攻撃を仕掛けると、その暗黒のエネルギーがバリアに衝突し、強烈な衝撃が瞬を襲った。瞬は必死にバリアを維持し、反撃のチャンスを伺った。雪はその間に、霊的な光線を放って敵の攻撃を防ぎ、瞬に対してサポートを行った。


「集中して! 敵の動きを見極めるのが大事です!」


 雪の声が響く。

 瞬はその言葉に従い、敵の動きを冷静に見守った。闇の使者は再び攻撃を仕掛けてきたが、瞬はその攻撃をかわし、反撃の機会を見つけた。彼は霊的なエネルギーを集めて、強力な光線を放った。光線は闇の使者に命中し、その存在を一時的に後退させることができた。


 戦闘が続く中で、瞬は次第に自分の力をコントロールする感覚を掴み始めた。彼の攻撃がより正確になり、バリアの防御力も向上していった。しかし使者も強力な攻撃を続け、戦況は依然として厳しかった。


「瞬、もう少しで勝機が見えてくるはずです!」


 雪は気合いを入れた声で言った。


「あなたの力を信じています!」


 瞬はその言葉に励まされ、最後の力を振り絞って攻撃を続けた。闇の使者は次第に疲れを見せ始め、その力が弱まってきた。瞬はこのチャンスを逃さず、全力で攻撃を加えた。


 ついに使者が倒れ、霊界の空が再び明るくなり始めた。瞬は戦いの後の安堵とともに、雪に向かって息をついた。


「やった……。 これで……」

「よく頑張りました、瞬」


 雪は優しく微笑んで言った。


「これが初めての戦闘で、あなたがこれから経験することになる数多くの試練のうちの一つです。これからも、共に戦っていきましょう」


 瞬はその言葉に感謝しながら、霊界の平和を守るための決意を新たにした。彼の冒険は、まだ始まったばかりであることを実感しながら、彼はこれからの試練に立ち向かう覚悟を固めた。

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