霊界の守護者
あさぎ
第1話 高校生、羽田瞬
朝の光が窓から差し込み、
窓の外には、晴れ渡る青空が広がっており、街の喧騒もまだ早朝の静けさを保っている。瞬はその光景をぼんやりと眺めながら、日常の一コマがどこか心地よいものであることを感じていた。
「おはよう、瞬」
母の声が部屋の外から優しく響く。瞬は目を開けゆっくりと体を起こした。
「おはよう」
瞬は少しだけあくびをしながら返事をした。彼はまだ完全に目が覚めていないようで、ベッドの中でぐずぐずと身を縮めていた。
朝食の匂いが部屋に漂い、瞬はその香りに誘われるようにベッドから出ることにした。リビングに入ると、母がテーブルに用意した朝食が並んでいた。ご飯にみそ汁、焼き魚という、典型的な和風の朝食だ。瞬はそれを見て、ほっとした気持ちで食卓に着いた。
「今日はまたテストがあるんでしょう? がんばってね」
にこやかに声をかける母につられ、瞬も顔が緩む。彼は普通の高校生で、成績も悪くないが特別に優秀でもない。ただ、学校生活をこなし、友達と過ごす日常に満ち足りている。
朝食を終え、瞬は制服に身を包んで学校へ向かう準備を整えた。通学路を歩きながら、彼は今日のテストや宿題のことを考えていた。特に大きな問題もなく、普通の一日が過ぎていくのだろうと思っていた。
——しかし、その予感は、いつもとは違う何かが起こる前触れに過ぎなかった。
学校に着くと、いつものように友達と挨拶を交わし、教室へと向かった。クラスメイトたちと軽く会話を交わしながら、瞬はこれからのテストに向けた準備を心の中で再確認していた。授業が始まると、集中してノートを取り、教師の説明を聞いた。
授業が終わり、昼休みになると、瞬は友達と共に校庭で食事をしながら雑談に興じていた。会話の内容は学校のことや趣味の話題で、平凡だが楽しいひとときを過ごしていた。そんな平和な日常が、突如として壊れることになるとは、誰も予想していなかった。
昼休みが終わり、授業の合間に瞬は図書室で自習をしていた。その時、突然視界が歪み、周囲の空気がひんやりとした。彼は不安を覚えながらも、そのまま黙々と勉強を続けようとした。
しかし、その直後、突然図書室の一角に光の裂け目が現れ、異次元の空間が広がっていった。瞬は驚愕し、目を見開いた。光の裂け目からは奇妙な霊的なエネルギーが溢れ出し、まるでその場に時空が崩れているかのような感覚が広がった。
「これは……。 一体……?」
瞬は自分の目の前に広がる現象に呆然とし、どう対処していいかわからずにいた。裂け目からは、霊的な存在が現れ、形のない影がゆらめいている。彼の心臓は激しく鼓動し、冷や汗が額に浮かんだ。
その時、裂け目から現れたのは、一人の少女だった。彼女は古風な死神のような姿をしており、長い黒髪が肩から流れている。彼女は霊的な衣装をまとい、冷静な瞳で瞬を見つめていた。彼女の存在感は、まるで異次元からの使者のように強烈だった。
「羽田瞬、あなたが選ばれし者ですね」
少女は冷静に瞬の定めを告げた。
「私の名は
瞬はその言葉に耳を疑った。彼は自分が特別な存在であるという認識がまったくなかったため、ただただ驚くしかなかった。しかし、少女の真剣な表情と霊界からの異常な現象を目の前にすると、彼は次第に自分の現実を受け入れざるを得なくなった。
「霊界……? 僕が……選ばれし者?」
瞬はその言葉を繰り返し、理解しようとした。
神楽は頷き、厳かな口調で説明を続けた。「霊界には、暗黒の力を持つ『使者』が現れ、世界の均衡が崩れつつあります。あなたには、霊界の守護者としてその脅威に立ち向かう役割が与えられました」
瞬はその言葉に困惑しながらも、自分がこれからどんな運命を背負うことになるのかを考え始めた。自分の普通の生活が、これから一変することを感じながら、彼は深い決意を胸に秘めた。
「どうすれば……?」
瞬は問いかけた。
「これから霊界のことを少しずつ教えていきます」
神楽雪は微笑み、手を差し出した。
「共に、この世界を守るために」
瞬はその手を見つめながら、一歩踏み出す決意を固めた。霊界の冒険が、彼の新たな人生の始まりを告げる瞬間だった。
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