第5話 オロポとアクリ~まるで月と太陽~


〇休憩室‐売店‐


 美緒さんが売店のカウンターで何かを注文している。

(いらっしゃいませ、少々お待ちください、等かすかに店員の声)


 俺は休憩所の椅子に座って、カウンター付近で待つ美緒さんを眺めていた。

 あっという間に商品ができたようで、美緒さんが商品を受け取る。


「はーい!ありがとうございます!」


 美緒さんが手に持ったジョッキには、並々と注がれた液体。(氷の揺れる音SE)


「はい、どうぞ♪ねぇ、君はこれ飲んだことある?」


 黄色い炭酸の液体。(SE:炭酸が弾けるシュワシュワ音)記憶を辿る。ポスターで見たことがあるような。


「これはねー……オロポっていうの!」


 成程、これが例の……。知っていたが飲んだ事はない。首を横に振った。


 「ふふん、聞いて驚く事勿れ。……な・ん・と……。オロナミンCとポカリスエットのミックスドリンクなのだ♪」


 成程、頭文字をとってオロポ。考えたものである。


「汗をかくとビタミンCやミネラルも一緒に出て行っちゃうから、栄養補給にピッタリ!この甘さと炭酸が……!(ゴクゴクと喉を鳴らして飲む)ぷはぁー!うまーい!!身体に染み渡るぅー♪……君も飲んでみてよ♪」


 豪快だな、と思いつつ俺も口をつける。成程、美味い。オロナミンCの爽やかな甘さがポカリスエットと合う。


「オロポも良いけど、これと似ているのがアクリ。……問題!アクリは、何と何を混ぜたものだと思う?制限時間は5秒!」


 美緒さんは俺の前に手を突き出し、指をカウントに合わせて一本ずつ折っていく。


「5…4…3…2…1……。正解は~……。アクエリアスとリアルゴールドでした!」


 くそ、予想できた。答えられなくてちょっと悔しい。


「お店によって置いているドリンクが違うんだよね。なんでだろ?でも私、どっちも好きだから絶対頼んじゃう。」


 おそらく、施設ごとに商品を卸している飲料メーカーが違うからだろうと俺はぼんやり思った。


「岩盤浴、凄くよかったね。堪能した〜〜。……そろそろ……次、行っちゃう?って言っても、サウナは女湯と男湯、それぞれにあるからしばらくお別れだね。」


 俺は、待って欲しいと伝えた。


「え?お別れしなくても良い?どういう事?」


 俺は秘密裏に進めていた計画を話した。


「えぇっ!?サウナ付き家族風呂を予約しているの!?」


 美緒さんが恥ずかしがって、拒否されるかもと思ったから直前まで黙っていたのだ。


「おかしいと思ってた!スーパー温泉に水着を持ってきて欲しいだなんて。」

 

 美緒さんはある事実に気付き、俺に確かめる。


「つまり……その……。君と混浴……って事だよね?」


 そう。混浴。美緒さんなら今更キャンセルするのは勿体無いと言うだろうし、それに、家族風呂に入ってみたいという欲望に抗えないと踏んでいた。


「も〜〜〜〜〜……しょうがないなぁ。」


 計画通りである。


「じゃあ……水着、着てくるから。家族風呂で集合ね……?」



 俺達はお互いに照れながら、相手の水着姿を想像しそれぞれの更衣室へと向かった。

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