第3話 クールダウン♡

〇休憩室‐売店‐


岩盤浴ゾーンから出て、すぐそばにあるのは売店。


「すみません!天然水2つ、お願いします。はい、バーコードどうぞ!」


 美緒さんは手慣れた様に、腕に嵌めたバーコード付きのリストバンドを差し出した。店員さんはそのバーコードを読み込む。ピッという小気味のいい音がした。(SE)

 店員さんがはーい、と返事をし、冷蔵庫から2本ペットボトルを取り出してくれた。



「……この、バーコード付きリストバンド、最初に発明した人天才だよね?……耐水性もバッチリだし、何よりお財布を持ち歩かなくてもいい!盗難が起きにくい環境づくりに一役買ってると思わない?」


 俺は確かにそうだと思った。


「はい、君の分のお水。……(一口飲む)わぁ、冷たくて美味しい!」


 喉を鳴らしながら美緒さんは水を煽った。俺も、一口飲む。冷たい天然水が、日常生活で疲れて体に入ったヒビを冷やし、満たしていくようだ。


「……っぷは〜〜!生き返る〜〜!!」


 そして、俺も一口飲んで気が付いた。彼女にナチュラルに奢らせてしまっていた事に。


「………え?『奢らせてごめん?』だって?……いいよ、気にしないで。なんてったって、私の方が先輩なんだから♪」


 それでも、今日は初デート。男の俺がリードしてみせるんだと意気込んでいたのだ。


「気にしない、気にしない!こういう時くらい先輩風吹かしたいの。後輩である君は素直に奢られたまえ。」


 美緒さんにも年上としてのプライドがあるのだろう。俺がその思いを無下にするのも、彼女を傷つけるかもしれない。ならば次こそは、と心に決めたのだ。


「それより、次はどこに入ろっか?」


 美緒さんは俺の葛藤を知らずか、次に入る岩盤浴の種類を悩みだした。俺も気持ちを切り替え、お勧めの岩盤浴を提案した。


「……わぁ、いいね!岩塩の岩盤浴!さっき、チラッと見えて気になってたんだよね♪ピンク色ですごくキレイだったから。」


「じゃ、岩塩浴にレッツゴー♪」

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