「見られている」。得体の知れないものの視線を感じれば、怖いですよね。
「見られている」。親密な人の視線を感じれば、優しさを受け取りますよね。
「見られている」。そして、今のあなたを見ているものは、何? どっち?
視線。物理的には何も働きかけていないものの、人間の目をのぞき込み心を捉えて離さないもの。「観察者効果」は量子力学だけでなく心理学においても(当然、量子力学とは違う事象を指して)正式に使われる言葉です。見られることにより、人は影響を受けずにはいられません。
本作の主人公は見られています。正体が分かっていたものが、次第に正体が分からないものに移行して。しかし気づいてみると予想より良い結末にたどり着いて逆に驚いたりして。では、見ていたものは何だったのか。それは分からないまま……
白とも黒ともつかない、視線の淡い意味合い。その、少しだけ暗いトーンが「怖そうで怖くない少し怖い」の口上通りなのです。