山の友達

前編 【出会い】

 最近、思い出したことがある。


 母の田舎は京都の亀岡市というずっと山奥にある古屋で、よく夏休みに遊びに行きました。その家の裏には程よい山があり、その所有は母の長男である叔父さんが持っている山でした。幼い私はカブトムシを取りに行ったり、叔父が趣味で植えた程度の山菜や何か謎の果物を取ったりして貰った記憶が薄っすらとあります。


 現代の様にスマホやゲームなんてのはなかった時代なので、一週間も住めば子供にとっては大自然にも慣れて来て極端に暇を潰す様になるものです。


 大人たちはみんな談笑してたり、居なかったり。恐らく今を思えばお墓参りだとか色々と大人の事情をこなしていたんだと思いますが、子供には分かりません。何度か一緒にお墓参りに行った記憶はありますが、子供の足ではキツイ坂道や危険な道も多く、毎回は連れて行ってはくれなくて、よく私と誰か一人か二人ぐらいの大人と居残っていました。


 残る人も、叔母さん方の女性が多く家事をこなしたりと忙しくしていて、叔父さんらはきっと仕事など行っていたんだと思う。仕方なく私は犬のタローの所へ行ったり、家の周りを散歩したりと探索するしかなく、それも二、三日で飽きてしまう。


 母の実家の裏には山へと続く土手道が真ん中に一本。その先は漠然と立ちはだかる山へと道が続く。左右には大きな田んぼが二区画並び、カブトエビやオタマジャクシを良く一人で眺めていた。


 行ってはいけないと言われていたのですが、山へと続く道を少し行ってみた。今思えば危険な行為だと思う。野性の動物は子供にとって、鹿ですら危険だからだ。あの大きな角に突進されれば一溜りもありません。

 しかし、そんなことは気にも及びもしなかった私は、TVゲームの勇者を気取り、能天気に適度な棒を振り回しながら山の麓まで来ました。


 背後に小さな田園を背負ったその時、目の前には大人の背丈程度の小山があり、その頂上にはいつのまにか私と同じ年ぐらいの男の子に出会いました。名前は・・・聞いていません。

 お互いにびっくりした様子で一秒ほど間が生まれましたが、お互いに右手を振って子供の挨拶を交わし、それだけで意気投合しました。

 今となってはその無鉄砲さが羨ましい場合がありますね。

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